少女寿命

こむぎ子

初恋処女(前編)

愛されたいのです。ただそれだけが存在意義なのです。


先に、家庭を説明した方が良かったかもしれませんね。
まぁ、在り来りな家庭でした。
世間一般で云う所の"家庭崩壊"を前提として話せば。
脂肪の塊と燃えるゴミの塊が合わさって生まれた産業廃棄物。それが私、と思っています。
立派な、健やかな豚でした。父は。母の体を腫らせるのと娘の足を広げさせる事に関しては尊敬モノです。
謙虚な、お淑やかな屑でした。母は。他の男に媚を売るのと娘を捨てる事に関しては拍手喝采モノです。
まぁそんな遺伝子を継いじまったのが私です。
グレることはありません。流されるだけです。

一応これでも高校生です。死にきれずに素敵に肥え育ちました。周りから干渉されることはなく、周りに助けを求めることもなく、ただ図書室で本のページを捲るのが私の日課になっています。
そんな風に乙女の青春(いえ、私にはそんなものありませんでしたね。)を潰していた所、貴方に出会ったのです。
素朴な人でした。大人しい人でした。照れると耳を赤くして頬を軽く掻くのが特徴でした。
図書委員の人でした。毎週水曜日の放課後が仕事らしく、必ずいる私に興味を持ったとかなんとか。
私自身として、ただ応答はする機械じみた人形だという意識で会話に応じました。
彼の話は…なんといえばいいのでしょうか。私の拙い言葉では表現出来ないほど、暖かいものでした。煌めいていました。周りに光が飛んでいるような、しかし目も心も痛くない、綺麗な人でした。
それから彼は図書委員でない時も図書室に通ってくれるようになりました。
私自身、意図的に人を嫌っていて避けている訳では無いので拒否する理由もありませんでした。
彼の目は私とは異なるようで、見える全てが彼の中でろ過されているようでした。
こんなこと、いえ、文学少女(仮)として許して欲しいのですが、心に一輪の桃色の花が咲いた。そんな気持ちが芽生えました。私は初めて、恋を知ったのです。

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