転生しました。本業は、メイドです。
ー3ー
「そういえばお嬢様、今度の国王主催のパーティーに来ていく為のドレスが完成致しましたよ。」
さすが貴族令嬢、パーティの度にドレスを新調している。しかも全てオーダーメイド。
「ほんほ?もぐもぐ。ひまっほいへーはほへきふかはー!もぐもぐもぐ。」
しまっといて、後で着るから。ですね、了解致しましたお嬢様。
「お嬢様。声をかけたタイミングが悪かった事は認めますが、お口の中に何もなくなってからお話下さい。」
口にシフォンケーキを頬張る姿はまるでリスかハムスター。可愛すぎる。
「ゴクンっ、だーいじょうぶ!メルの前だけだから!」
んんんっ!この特別感の破壊力!攻略対象だったらイチコロだ。。わたしもイチコロですが。。
「ゴホンっ、でもお気をつけ下さいね。パーティーには一緒には行けませんからね。」
そう、小さいお茶会や小さいパーティなら気づかれないようにコッソリついていって護衛できるが、今回は国王主催の大規模なパーティーなので無理だ。
優秀な国家騎士団、国家魔術師がうじゃうじゃ
↓
国家魔術師が結界張ってる(感知型)
↓
私が城に侵入する
↓
なんか変な奴入ってきたな(感知される)
↓
絶対捕獲される
↓
あれ?コイツ、グランベール家の傷物メイドぢゃね?
↓
お嬢様に隠密行動がバレる
グランベール家にも迷惑かかる
↓
お嬢様に嫌われる
城への不法侵入処罰される
お嬢様と離れ離れ
もう死ぬしかないぢゃない
END
堂々とついて行ければいいのだが、この姿では無理だ。
この時代にもカラコンがあればなんとかなるかもしれないのに。
「……ねぇ!メルってば!」
「あ、すみませんお嬢様!どう致しましたか?」
いけないいけない、お嬢様の前で考え事をしてしまった。
「も~、だからね、一緒にパーティー行こうよって言ったの!お父様だってメルも一緒に連れてっていいって!」
「お嬢様、わたしはこの姿で行く事は出来ません。隻眼で目付きの悪いメイドなんて連れていったらグランベール家の品位に関わります。」
只でさえ乙女ゲームで苛められやすくなっているのだ、グランベール家が中傷されるのは確実だろう。
「メルが眼帯なのは怪我してるんだもんしょうがないぢゃん!目付きは悪くないもん!いつもニコニコしてるぢゃん!」
お嬢様には右目は酷い怪我で視力が無いと伝えている。まぁ、赤い瞳を見せた所でお嬢様だったら軽蔑なんてしないだろうが記憶が戻る前にそう伝えてしまっているのでとりあえずはこのままにしておこうと思っている。
あと、目付きの悪さ対策で常にニコニコ微笑んでいたのだが、効果があったらしい。良かった。
「お嬢様やグランベール家の皆さんが大丈夫でも周りが大丈夫ではない事もあるのです。ここでは常に一緒にいますから、我慢して下さい。お嬢様が出掛けている間に仕事も済ませておきますから、帰ってきたら一緒に本を読みましょう。」
「むぅ………わかった。。ぢゃあ、今日も夜に読んでくれる?」
「特別にいいですよ。お休みになるまで読んで差し上げますね。」
「やった!ありがとう!」
本当にお嬢様はいい子だ。。元々ヒロインはいい子だけど、うちのお嬢様はさらにいい子な気がする。これが親バカってやつか。。
もっと幼い頃はよく読んであげていたが、大きくなって読み書きができるようになってから自分で読ませるようにと旦那様に言われたので私が読んで差し上げることは少なくなってしまった。
なので、ご褒美の1つとしてたまに読んであげる事にした。
お嬢様のモチベーションも上がるし、わたしも嬉しいし一石二鳥だ!
「お嬢様、午後はダンスのレッスンです。今度のパーティーは王族の皆様にお嬢様の美しさと素晴らしさをアピールする絶好チャンスですよ!」
そう、チャンスだ。
今度の国王主催のパーティーは攻略対象の一人である第一皇太子殿下とヒロインが出会うイベントがあるのだ。
お嬢様には申し訳ないが、わたしはお嬢様と第一皇太子殿下をくっつけたい。
攻略対象は何人もいるが、皇太子殿下が一番トゥルーエンドだと思う。
イケメンだし生活にも困らない!
王妃の責務は大変かもしれないがお嬢様なら問題ないはず。
一番ダメなのは魔王とのトゥルーエンドだ。トゥルーエンドではあるが、完全に二人の世界になってしまって家族との縁が切れてしまう。何より私との縁が切れてしまう。まぁ、ゲームではその前に私は死んでしまって存在しないのだが。。
「メルは、私が上手に出来たら嬉しい??」
「はい、もちろんです。」
「ぢゃあ、がんばる。」
はぁぁぁぁぁ、可愛らしいお嬢様。王子様もイチコロ間違いなしだわ。絶対に落として見せますよふふふふふ。
「メル、なんか悪い顔になってる。」
「ふぇ!?そうですか?そんな!気のせいですよ!さ!ダンスのレッスンに…………!?」
「メル?」
「いえ、なんでもありません。さぁ、先生がもうすぐお越しになります。参りましょう。」
「?…うん。」
何か感じた気がしたんだけど気のせいか?殺気ではないし、他のメイドか執事の視線かな。
そんな事よりお嬢様が皇太子殿下と上手く行くことを想定してトレーニングを増やさなければ!!
ライバルの令嬢達からお嬢様を守らないとだし!
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