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初めてのダンジョン

 ダンジョンと聞いた人は、狭くて暗い迷路を思い起こすとおもう。
当然俺もそんな感じを予想していたのだが…………

「ここは広いんだなぁ……」

 俺たちが入り口から中に入った数秒後、パッと明かりがつきあたりが明るく見渡せるようになった。
見た感じどこかの大聖堂のようなその外観は、とてもダンジョンという言葉にはふさわしくない気がするが、ここは確かに始まりの塔というダンジョンだ。
何故なら…………

「オートマッピングを開始します………………現在は始まりの塔の一階入り口で、始まりの間と言うそうですよ、マスター

「そのようだな。俺の眼にもそう出てるよ」

 横に立つライトが使っているマッピング機能(マッピングできる魔法)にも書かれているようだし、なにより俺の眼鑑定でも同じ内容が右上の方に表示されている。

「とりあえず進むか。この塔は全部で10階層あったはずたよな? まずは階段を探さなきゃな」

「はい、マスター。……私がガイドしますので、ついてきてください」

「わかった」

「まずはこの広間を抜けましょう。正面に見える扉からのみ出られるみたいです。走りますか?」

「いや、ゆっくりいこ「敵性反応です、マスター!! 戦闘準備をっ!!」まじか!?」

ライトの声が響くと、目の前の何もない空間に黒いモヤモヤが現れ、中から敵らしきモンスターたちが歩み出てくる。

「鳥タイプが三体にイノシシタイプが五体、猿のようなやつが八体か……」

「いきなりこの数は大変じゃありませんかっ!? 私が手伝っても良いですよね?」

「いや、鑑定結果を見るにただの雑魚だから、必要無いだろ」

 鑑定結果は、鳥が「グリーンイーグル」でイノシシが「ロックボア」に猿が「グリーンモンキー」で、レベルはそれぞれ100から110。
距離が離れているし、魔法を使えば楽勝だろう。

「ってことで、ファイアボール×20、ウインドカッター×20」

俺はファイアボールとウインドカッターを20ずつ自分の両側に浮かべる。

一斉射出フルバースト!!」

続いて浮かべたファイアボールとウインドカッターをすべて敵に向かい発射する。

ドドドドドーーーーン!!!!

これにより合成魔法の発動条件が満たされ、大爆発が起きた。

「敵性反応すべて消失ロスト。大勝利ですね、マスター?」

「当然だな。というかむしろ、20はやり過ぎだった気がする。今度から調節しなきゃだな」

「確かに、10くらいで十分だったように思います。ダンジョン内ではセーフティースペース以外では回復できないのですから、節約するべきですね」

「そうだな、以後気をつけよう」

「ではマスター? 先に進みましょう」

「そうだな」

もうモンスターが出現する気配はしないので、正面の扉から先に進むことにした。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「あれは……エレベーターですかね? 手前にセーフティースペースが見えますよっ。マスター、休憩にしましょう」

「やっとセーフティースペースか……」

 現在俺たちは五階層まで進んできた。
どうやら上の階層につながるエレベーターの前の広間が、セーフティースペースになっているようだ。
俺たちはここで休憩をとる事にした。

「しっかし……思ったよりも敵が弱いな。しかも離れた位置に出現するから、魔法一発で終わってしまう」

「そうですね、マスターが強いというのも理由の一つだと思いますが、下階層はこんなものだと思うのですよ」

「そういうもんかね?」

「それよりマスター、私のことを鑑定していただけますか? この間たくさんレベルが上がったので、自分の能力の把握が完全では無いのですよ。お願いできないでしょうか?」

「そういえばそうだな。俺も知りたいから構わないよ。少し待ってくれ…………よしっ。ライトのステータスはこんな感じだ」

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
ライト・ハザード:レベル820
HP:120000/120000
MP:50000/50000
力 :9500
魔力:8800
体力:9200
精神:9000
運 :300
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

「きれいな数値だな……んで、やっぱ力が一番強いのか」

「はい、マスター。私はパワータイプですから当然ですね」

「ってか、まだ始まりの塔だってのにこのステータスは……俺よりチートじゃねぇか」

「チート……ですか?」

「あぁ。……だってそうだろ? この始まりの塔で出てきたモンスターのレベルは、せいぜい120が最高だったんだぜ? 820とか、700も上なんだから、じゅうぶんチートと言えるだろう?」

「すみませんマスター、私が聞いたのはチートという言葉の意味です。どういう意味なのですか……?」

「あぁ、そっちか。……チートってのは、簡単に言うとズルみたいだってことだ。この階層に分不相応なレベルと力……いくら正当な手段で手に入れた力とはいえ、じゅうぶんに反則級と言えるだろ?」

「それは……たしかにそうですね。ですが、マスターもそのレベルにしてはじゅうぶんにチートだと思いますよ?」

「そうなのか?」

「はい。……いくらレベルがこの始まりの塔のモンスターたちより少し高いからと言って、あんな簡単に魔法で敵を倒すことなんてできないですよ?」

「そういうもんか?」

「まぁマスターは半神なので、ステータスが高いのは当然と言えるのですが……」

「強い分には良いんじゃないか? 弱くて倒せないよりはずっとましだ。ってか、簡単に倒せるのは楽で良い気がするんだが?」

「それはそうなのですが……」

「何か問題が?」

「あまりにも敵を倒すのに苦労しないでいると、自らより強い相手と戦った時に負ける可能性が高まります。マスターが負ける姿は想像できませんが、ここのボスはあきらかに今のマスターよりも格上なのは確かです。そんな相手と戦った時に、折れてしまわないか私は心配なのです……」

「あぁ……確かにな。俺が戦った今までで一番強い敵と言えば、この間のオークーガーボスだが……あいつとの戦闘も、結局は遠距離から撃ちまくっただけだしなぁ……」

「それでも! 私はマスターは負けないと信じています」

「はははっ、ありがとう」

真剣な目で見つめてくるライトの頭をなでる。

「けど、今はチートなお前がいるだろ? 俺がピンチになったらちゃんと助けてくれよ?」

「はいっ! マスター!!」

「んじゃそろそろ行こうか?」

「そうですね。行きましょう」

「んじゃ、上ボタンを押してっと」

ピンポーン

「きたみたいだな。んじゃ、先に乗るぜ?」

俺は開いた扉の中に入る。

ガチャンッ!!

「んなっ!?」

マスター!!」

次の瞬間扉が閉まり、俺一人だけが乗ったエレベータが上へと向かう。

「くそっ! どういうことなんだ? これはっ!!」

 あのエレベーターは一人用だったということだろうか?
だが、そのわりにはまわりに階段などは見当たらなかった。
これだとパーティーで挑戦できないと思うのだが……
先ほどの広間に来るまでの道のりは一本道だったし、どうなっているのだろうか?

ブーンブーンブーンブーンブーン、チーン

考えているうちに最上階についたらしく、わけがわからないまま扉が開く。

「うわっ!!」

次の瞬間、俺はエレベーターの外に放り出される。

「いてて……どこなんだここ……は?」

まわりはとても広く、イメージで言うなら闘技場コロッセオが近いと思う。

「グウォォォォォ!!!!!」

そんなフィールドの先、俺の目の前には、あきらかにこの塔のボスらしき存在が唸り声をあげて立っていた。

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