異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育成しています ~

柑橘ゆすら

VS 魔王3


 俺とヒュンケルの命がけのバトルは続いた。
 条件が整うまでの時間を1秒でも稼ぎたい俺は、手を変え、品を変えて、ヒュンケルを翻弄する。

 だがしかし。

 超強力な物理攻撃、魔法攻撃を有するヒュンケルは、次々に俺のモンスターを葬っていく。


「どうした? 逃げないのか?」


 質問を受けるが、返事はしない。
 というよりも今の状態では返事をすることが出来ないのである。


 ピチピチッ。

 ピチピチッ。ピチピチッ。


 ああ。
 俺は今、まな板の上の鯉の気持ちが初めて分かったような気がするよ。

 絶体絶命の状況に置かれた俺はそこでステータスを確認。

 カゼハヤ・ソータ

 職業  魔物使い
 レベル 1
 生命力 10
 筋力値 10
 魔力値 10
 精神力 5

 加護
 絶対支配 

 スキル
 水属性魔法(初級) カプセルボール 鑑定眼 魔物配合 コンタクト 精神操作 スキルレンタル 変身

 使役 
 アフロディーテ
 キャロライナ・バートン
 シエル・オーテルロッド
 ユウコ
 ロスト・トリザルティ
 レミス・リトルフォールド
 ルーミル・フォンネル
 スパイフィッシュ

 最後に俺が精神操作で肉体を借りた魔物は、スパイフィッシュであった。

 自分の体を透明に変えることの出来る特性も、地上では発動できずに何の役も立たない。

 無様に地面を跳ねることしか出来ない――正真正銘の最弱の魔物であった。


「誇りに思うがいい。ここまでボクの攻撃を凌いできたことだけは褒めてやろう……」


 クソッ! 準備の方は結局、整わなかったか。

 ヒュンケルの掌が俺の体を目掛けて飛んでくる。

 俺の悪運もここで尽きたか……。
 生に対する執着を捨てて、諦めて目を閉じようとしたその時だった。


(――準備は整ったわよ。ソータ)


 求めて続けていた最後のピースがピタリと縁にハマる。

 最後の最後のところで首の皮が一枚繋がった。

 ここまで命を繋いでくれた魔物たちに感謝だな。


「なんだ……と……!?」


 ヒュンケルが目を見開いて驚くのも無理はない。

 何故ならば――。
 防御魔法を使ってヒュンケルの攻撃を防いだのは、今の今まで無能と呼ばれて、周りからバカにされてきた女神さまの姿だったのである。


「貴様……! 神族か……!」


 攻撃の手を止めて体勢を整えたヒュンケルは困惑した表情を浮かべていた。


「ありえない……! 仮に神族であったとしても地上でボクの攻撃を受け止めることなど出来ないはず
だ……!」


 そうだろうな。
 アフロディーテたち神族は強力過ぎるステータスの反動か、地上に降りると大幅な弱体化を余儀なくされている。

 普通に考えれば、この地上に魔王の攻撃を受けきれる生物は存在していないのである。


「ま、まさか……!」


 何かに気付いたヒュンケルはパチンと指を鳴らす。

 すると、どうだろう。
 これまで謎に包まれていた玉座の間の異空間は、魔王城の外の景色を映し始める。

 そこにあったのは、一面の雲の世界。

 雲の上に様々な建物が並んだメルヘンチックな空間だった。


「て、天界……だと……!」


 事前に魔王城の『操縦室』を制圧しておいたのは、今この瞬間を見越してのことだったのである。

 操縦室に送り込んでおいたシエルには、『俺が玉座の間に入った瞬間、可能な限りで魔王城の高度を上げて欲しい』という指示を送っていた。

 高度を上げるタイミングが早すぎると敵に作戦がバレる可能性が上がるし、遅すぎると最後の戦いに間に合わなくなるかもしれない。

 この作戦が成功するかは本当に賭けであった。


「クッ……! だからどうしたというのだ! ボクはまだ負けてはいない!」


 ヒュンケルの言葉は正論である。
 ここまで準備を整えても状況は未だに五分と五分だろう。

 力を取り戻したアフロディーテのステータスを確認してみる。


 アフロディーテ
 レベル 3620
 生命力 29778
 筋力値 19822
 魔力値 68810 
 精神力 38240

 スキル
 UNKNOWN


 やっぱりな。
 アフロディーテ(天界VER)のステータスを確認したのは1度きりだったが、こんな感じの数値だったとは記憶していた。

 ステータスの合計値こそアフロディーテが上回っているものの、戦闘における最重要指標である筋力値は大きくヒュンケルが勝っており、勝負の行方はどちらに転ぶか分からない状況であった。


「も~。ソータったら、不安な表情しているでしょ?」


 な、何故バレたし!?
 無残にも魚になった俺の表情を読み取るとは……お前はエスパーかよ!?


「そんな顔しないでいいのよ! 今度こそアタシのとっておき、見せてあげるから!」


 んん? 今度こそ?
 コイツは一体何を言っているのだろう?

 俺がアフロディーテの本気の魔法を見たことなんて過去に一度もなかったはずだぞ?


「哀れなる子羊よ。美の女神アフロディーテの名の元に神の裁きを受けよ!」 


 そこでアフロディーテが口にした呪文は何処か聞き覚えのあるものだった。

 こ、この魔法はもしかして……!
 初めて異世界に召喚された時の草原で使っていたやつかよ!

 あの時の……ゴブリン相手に不発に終わった魔法は伏線だった!?


「ゴットブレス!」


 アヅロディーテが高らかに叫んだ直後だった。
 一筋の光が《玉座の間》の天井を突き破り、ヒュンケルの体に降り注ぐ。


「バ、バカな……! ボクは魔王だぞ……! この世界で最強なんだ……! 誰にも負けはしないんだ……!」


 強気な言葉を紡ぐヒュンケルであったが、その表情は苦痛に歪んでいた。

 光はやがて威力を増して、ヒュンケルの体を焼き尽くす。


「こ、こんなところでえええええええええええええええええええええええ!」


 アフロディーテSUGEEEEEEE! 
 流石は森羅万象を灰燼に変えるゴッドブレス!

 まさかあの序盤でゴブリン相手に使おうとした魔法が魔王を一撃で打ち破る威力のものだったとは思わなかったぜ。

 それにしても俺の正体って本当に魔王? なんだよな。

 ラスボスとの最終決戦にもかかわらず、ピチピチと跳ねているだけで何の見せ場もなかったような気がするぜ……。

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コメント

  • アニメ好き

    この作品もなろうで読んでました!
    最近読んでなかったけどまさかノベルバで見つける事になるとは思いませんでした
    また久しぶりに読もうかと思います!!

    0
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