異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育成しています ~

柑橘ゆすら

空気ヒロイン



 ミ~ンミンミンミンミ~ン。

 異世界アーテルハイドは相も変わらず夏真っ盛りであった。
 庭の木に止まったセミたちが嫌がらせのように合唱中である。 

 俺はというと何時ものように、風通りが良好な屋敷の縁側の部分で死んだように倒れていた。


「あちぃ……」


 あまりの暑さに俺がゴロンと寝返りした直後であった。


「どわあああぁぁぁ! なんじゃこりゃー!?」


 柔らかい。
 どこか見覚えのある2つの球体が俺の前に転がっていた。


「も~! なんなのよ~! うるさいわね~!」


 寝惚け眼をこすりながらもアフロディーテは起き上がる。


「お、お前は……なんちゅー恰好しているんだよ……」


 だらしのない奴だと思っていたが、まさかこれほどまでとは……。

 どういうわけかアフロディーテは海に行った時に買った水着をそのまま着用していた。


「うふ~ん。どうよ~! 家の中でもアタシの水着姿を見れて嬉しいでしょ?」

「……は、はぁ? お前のおっぱいなんてこちとら見飽きているっつーの!」


 ムキになって反論してしまったが、もちろん俺の言葉は嘘である。

 喩えるならそれは毎日食べている白米のようなもので、美少女のおっぱいに関しては、飽きるという概念が存在しないのである。


「むむっ~。アタシ、思うんだけど! 最近、ソータの中のアタシの扱いがどんどん雑になっていない!?」


 アフロディーテは大きな胸を張って不満をぶちまける。


「いやいや。そんなこと……」


 あるのか?
 たしかに異世界に召喚された当初のことを考えると、アフロディーテの存在感は薄くなっている気がしないでもない。

 唯一のアイデンティティであった『おっぱいキャラ』までロストに奪われ気味である。


「なんだかソータと2人で過ごす時間も減っている気がするわ! 話の中心にアタシがいないというか……」


 アフロディーテの主張も分からないでもない。

 キャロライナには魔族の仲間がいるし、シエルにはリックさんのような仕事関係の知り合いがいる。

 ぼっちのアフロディーテが話題の中心から外れてしまうのは必然のことであった。


「ドンマイ! 生きていればきっと……良いことあるって!」


 俺は肩にポンと手を置いて、アフロディーテに憐憫の眼差しに向ける。

 もしも俺のいるこの世界が物語の中だとしたら、アフロディーテは『空気ヒロイン』とか言われてネット上で叩かれていそうだな(笑)。

 実際、出落ちだけの一発ネタと思われそうなポジションにいることは否めない。


「う~! なによなによ! アタシだってねぇ!」

「痛いっ。痛いって!」


 励ましの言葉を送ったことが、逆にまずかったのだろうか?
 顔を赤くしたアフロディーテは、ポカポカと俺の背中を叩いてくる。


「ソータ! 命令よ! 明日は1日、アタシとデートしなさい!」 

「どうしてそうなる!?」

「うっさい! 今度の今度こそソータにアタシの魅力を叩き込んであげるからっ! 覚悟しなさいよっ!」

「…………」


 仕方ない。
 本人もこう言っていることだし今日は、久しぶりにアフロディーテに構ってやることにするか。

 ちょうど道具屋の主人から『珍しいアイテムが手に入った』という手紙が届いたところだったんだよな。

 2人で外に出かければアフロディーテの不満も少しは和らぐことだろう。

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コメント

  • ノベルバユーザー247881

    空気ヒロインかェ.....

    0
  • 真砂土

    空気ヒロインww

    0
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