異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育成しています ~
レア進化
「ふ~ん。それで結局、そのユウコっていうレイスは逃がしてあげることにしたのね」
「ああ。ギルドから報酬は受け取れないだろうけど問題は解決できたことだし良かったんじゃないかな」
帰り道。
俺は今回の事件の顛末について、アフロディーテ&シエルに説明をしていた。
「ところでキャロライナさん。そのユウコっていうレイスとはどういう関係だったんスか?」
「…………」
ナイスだ! シエル!
ズバリ俺が聞きたかった質問をダイレクトにしてくれた。
実際にあの現場を目撃した身としては尋ねにくいものがあったからな。
「ご主人さまには話ましたが、ユウコとは昔の職場の同僚だったのですよ。その職場で私はメイドとして働き、ユウコは末端の雑用員として仕事をこなしていました」
「ふ~ん。魔族っていうからどんなもんかって思っていたけど……そのユウコって子も大したことなかったのね。
メイドに使われる雑用員って……下級魔族の中でも下の下のポジションなんじゃないかしら」
「…………」
いやいや!
お前は見てないから知らないかもしれないが、ユウコのステータスはアフロディーテの言う下級魔族のものとは思えなかった。
ユウコが弱いわけではない。
そのキャロライナの昔の職場っていうのが、常軌を逸した超人揃いだったのだろうな。
~~~~~~~~~~~~
街に戻った後はお待ちかねの配合タイムである。
俺は魔物配合の実験場として目をつけている街外れにある林の中を訪れていた。
システムメッセージ
(ベースとなる魔物を選んで下さい)
アフロディーテ
キャロライナ・バートン
シエル・オーテルロッド
ワーウルフ
ゴブリンナイト
→ウルフ
ライトマッシュ
マッドマッシュ
アダマイトゴーレム
ヒトダマ
今回の主役となる魔物は、狼の姿をしたモンスターのウルフである。
ウルフをベースにヒトダマを配合することで、新しいモンスターを生み出すことが出来るのは事前に検証済みであった。
さっそく俺は合成元となる2体のモンスターを召喚すると、スキルを使って配合を試みることにした。
システムメッセージ
(下記の魔物に進化が可能です。合成しますか?)
→ はい
いいえ
キツネビ
図鑑NO 420
種族 魔獣族
等級 D
レベル 1
生命力 35
筋力値 15
魔力値 100
精神力 55
スキル
火属性魔法(初級) 闇属性魔法(初級)
進化条件
ウルフ×ヒトダマ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
魔獣族の下位種族となるモンスター。
魔獣族の中では珍しく魔法攻撃を得意とする。
年齢を重ねる毎に尻尾の本数が増加していく。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
今回のウルフの進化先となるのはキツネビというモンスターであった。
ステータスも全体的に上昇しているし使えるスキルの種類も増えている。
これは合成しない理由がない!
「……ポチっとな」
俺がシステムメッセージの『はい』ボタンを押した次の瞬間。
目の前にいたウルフとヒトダマの体は青白い光に包まれる。
その直後。
光の中から現れたのは赤い毛並を持ったキツネのモンスターであった。
「コンッ! コ~ンッ!」
な、なんだよ。
この可愛い生き物は……。
進化前のウルフがどちらかというと『格好いい系』の外見をしていたのに比べて、キツネビは『可愛い系』のド真ん中であった。
「キツネビですか。これは良いモンスターを手に入れましたね」
「そうなのか?」
「はい。キツネビは下位種族の魔物の中では珍しく2属性の魔法を使うことが出来るので魔族たちの間でも使い魔として人気のモンスターになっています」
「おおー」
やはりウルフから進化させたのは正解だったのだろうか。
キャロライナからもお墨付きをもらってしまった。
「うおおおおおおお! 可愛いッス! モフモフッス~!」
新しく出現したモンスターの姿を見てテンションが上がったのは、どうやら俺だけではなかったらしい。
やっぱり女の子って可愛い生物が好きなんだな。
キツネビのことを見つめるシエルの眼差しは、大好きな鉱石を見ているかのようであった。
「ソータさん! この子のお世話は自分に任せて欲しいッス! こんな可愛い子がいるなら自分……何時間でもボールの中で待機できますよ!」
「分かった。そういうことならこいつらの世話はシエルに頼むことにするよ」
どこぞの女神さまとは違ってシエルになら安心して任せられるだろう。
キツネビを抱きしめるシエルの姿は微笑ましい感じだった。
「ディー? 体調でも悪いのか? さっきから妙に口数が少ないみたいだけど」
「だ、だってぇ……。気に入らないのよ。世界で1番プリティでキュートなのはアフロディーテちゃんなのに……」
お前……動物と張り合ってどうするんだよ……。
流石は美の女神。
容姿に対するプライド(?)も半端ないということだろうか。
「さて。残る3匹も配合していくか」
キツネビの素材となるウルフとヒトダマはそれぞれ3匹ずつ残っている。
この調子で配合していけば4匹のキツネビが手に入ることになるな。
システムメッセージ
(レア進化が発生しました)
俺が4匹目のキツネビを作ろうとした時――その事件は起きた。
突如としてシステムメッセージに見慣れない文字が表示される。
青白い光から現れたのはキツネビではなく……ふわふわの体毛に包まれた熊のような体格をしたモンスターであった。
ケダマロ
図鑑NO 438
種族 魔獣族
等級 C
レベル 1
生命力 185
筋力値 75
魔力値 60
精神力 35
スキル
なし
進化条件
ウルフ×ヒトダマ(5パーセントの確率でレア進化)
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
魔獣族の中位種族となるモンスター。
森の賢者と言われており滅多に人前には姿を現さない。
その体毛は最高級の素材として取引されている。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
「モフォ……モフォ……」
なんだこの……オッサンみたいな生物は!?
キツネビを正統派の『可愛い系』と形容するのならばケダマロは、所謂『キモカワ系』であった。
やたらと肉付きの良い体。全身を覆う深い体毛。
その割には瞳がやたらと円で愛嬌があり、ギャップ萌えの様相を呈している。
レア進化か。
そういうランダム要素もあるんだな。
ケダマロの他にはレア進化するモンスターっていないのだろうか?
もしかしたらこれまでにも成功しなかっただけで、何度かチャンスがあったのかもしれない。
「このモンスターは……見たことのない種族ですね」
「あれ。キャロも知らないのか?」
「ええ。お恥ずかしながら……。300年以上生きていますがこのようなモンスターに出会うのは初めてです。
おそらく既に絶滅しているか……この世界に数えるほどしか生息していない『希少種』だと思われます」
「そうだったのか……」
さてさて。
どうしたものか。
レアなモンスターを手に入れたのは良いのだが……。
ぶっちゃけて言うとこのモンスターの使い道が分からない。
キツネビのようにスキルに恵まれているわけではないし、ワーウルフのように機敏な動きが出来るとも思えない。
生命力の数値が高いので肉壁として使用することは出来るかもしれないが……。
防御役はアダマイトゴーレムがいれば十分そうだしなぁ。
「す、凄いわ……! このモチモチとした肉感にフワフワの毛皮……。もしかして……この子なら……!?」
想定外のレア進化にテンションを下げる俺とは対照的にアフロディーテは興奮気味の口調であった。
「ね、ねえ。ソータ! この子を地面の上に寝るように命令してくれないかしら?」
「ん。別にいいけど……」
こいつは一体何を考えているのだろうか?
俺が命令権を行使してケダマロを地面の上に寝かした次の瞬間。
アフロディーテはケダマロの腹の上にゴロゴロと転がり始める。
「こ、これよ! この弾力! これこそがアタシが探し求めていた……理想のベッドそのものだわ!」
だらしなく頬を緩ませながらもアフロディーテは、ケダマロの腹の上を転がり続ける。
「ねえ。ソータ。折り入って1つアタシからお願いがあるのだけど……いいかしら?」
「ああ。どうしたよ急に」
「この子のボールの中でのお世話なんだけどアタシに一任してもらえないかしら? この子のお腹の上ならアタシ……何千時間でも寝ていられると思うのよね」
「えーっと。ということはこれでディーの要求していた『ふかふかの天蓋ベッド』をクリアーしたっていうことになるのか?」
「もちろん! この子のお腹は天界にあったどんな寝具にも負けない極上の一品なんだから! ねえねえ。ソータ! 一生のお願いよ!」
「まあ、そういうことなら別に構わないけど」
「本当!? 流石はソータ! 話が分かるわ!」
「どわぁっ!」
まったく……現金なやつである。
許可をするとアフロディーテは勢いよく俺の体に抱き付いた。
果たして生物をベッドとして利用して良いのだろうか?
という疑問は残ったが、魔法道具店で詐欺紛いの商品を買わされるよりは良いだろう。
こうして俺は『ボールの設備拡充計画』にある3つの課題の内の2つ目をクリアーするのであった。
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