異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育成しています ~

柑橘ゆすら

ヤル気ブースト



「ぬおっ! これは……思っていた以上に暗いな……」

 まだ昼間にもかかわらず鉱山の中は思っていた以上に暗かった。
 入り口は日が差し込んでいるので多少はマシであるが奥に進むほど視界が悪くなっている。


「えーっと……たしかギルドから配布された灯りがあったはずだよな……」


 今回のクエストを受注するにあたりギルドから受け取ったアイテムは『ツルハシ』と『ポケットランタン』の2点セットである。

 ちなみにこれらのアイテムについては、流石に無料というわけにはいかなかった。

 ツルハシが1つ5000コルでポケットランタンが1つ2000コル。
 つまりは……今日の時点で3人合わせて21000コルの経費が発生してしまっている。

 4人分の道具を揃えるのが痛い出費だった。

 特にポケットランタンの方は消耗が激しく直ぐに買い替える必要があるアイテムらしい。


「ご主人さま。ご安心ください」


 ボールの中から『ポケットランタン』を取り出そうとすると、キャロライナが人差し指の先から炎の玉を飛ばした。

「おお……。いきなり明るくなったな」

「暗闇を照らす『フラッシュライト』という魔法です。この魔法を使うと8時間ほど灯りを維持できます」

 流石はキャロライナ!
 魔法を使えばポケットランタンの消費を抑えることが出来るというわけか。

 欲を言うとランタンを買う前に教えてくれると良かったのだが……それを言うのも野暮というものだろう。


「助かったよ。やっぱりキャロは頼りになるな」

「……ありがとうございます。私などには勿体ないお言葉です」


 それに引き換え頼りにならないのはウチの女神さまである。

 先ほどから妙に大人しいと思ったらアフロディーテは、他メンバーに先駆けて鉱石の採取作業をしているようであった。


「ふふふ。ソータ! これを見なさい!」


 石コロ@ 等級G
(何の変哲もない普通の石)


 ドヤ顔のアフロディーテの腕には大量の鉱石が抱えられていた。

「これを見なさい! って……それただの石コロじゃないか?」

「なっ。えっ。嘘よ!? だってこの石……こんなにピカピカしてツルツルしているのに!?」

「嘘だと思うなら神眼のスキルを発動してみろよ」

 俺が指摘すると、アフロディーテは怒りにまかせて手にした石コロを叩き付ける。

「なっ……。本当だわ! クッ……女神であるアタシを騙すとは良い度胸じゃない!」

「いやいや。最初から神眼のスキルを使っておけよ。せっかくの便利スキルが台無しだぞ?」

 神族だけが保有することを許される『神眼』のスキルは、どうやら俺の持っている『鑑定眼』の上位互換の効果を持っているらしい。


 鑑定眼@等級 B アクティブ
(アーテルハイドに存在するアイテム、生物の性能を見極めるスキル)


 まったくもって羨ましい。
 アフロディーテの神眼のスキルを以てすれば、女性のスリーサイズどころかパンツの色までお見通しになるらしい。


「ううぅ……。そんなこと言ったって……神眼のスキルは魔力をたくさん使うから乱発できないのよ……」


 そ、そうか。
 そういう事情があるなら今回のクエストでは、アフロディーテの力はあまり頼りになりそうにない。

 つまりは平常運転というわけである。

 今回の仕事は残った3人と魔物たちの力で何とかするしかないだろう。


 ~~~~~~~~~~~~


 粗鉄鉱石@ 等級G
(微量の鉄を含んだ鉱石)


「お。この石は……!」

 それから暫く歩くと価値のありそうな鉱石が道端に落ちているのを発見する。


「なあ。シエル。この石なんかどうだ?」

「残念ながら……こんなクズ鉄を買い取ってくれる人はいないッス。そもそもお金になる素材ならこんな場所に放っておくはずがないのです」


 ウグッ。
 言われてみればたしかに……。

 冷静に考えるとこの鉱石は、カネにならないと踏んで冒険者が捨てて帰ったものなのだろうな。

「しかし、そうなってくると俺たちが鉱石を見つけられる可能性って絶望的じゃないか? 価値のある鉱石は先に入った人に取られているだろうし」

「ええ。だからここはこういう風に……自分たちで掘り出すしかないッスね!」

 シエルはそう前置きすると手にしたツルハシを地面に向かって振りかざす。


 銅鉱石@ 等級F
(多量の銅を含んだ鉱石)

 鉄鉱石@ 等級F
(多量の鉄を含んだ石)


 おおー!
 出てくる! 出てくる!

 鉱石って意外と近くに埋まっているものだったんだな。


「凄い! どうして鉱石が埋まっている場所が分かったんだ!?」

「これくらい大したことないッス。自分たちノームにとって鉱石はご馳走でもありますから。埋まっている場所は大まかに匂いで分かります」


 知らなかった。
 鉱石が好物だとそんな特技を使うことが出来るのか。

 おいおい。
 もしかしてこれは……一攫千金のチャンスがグッと近くなったんじゃないか!?

「よ、よし。シエル。ならこの調子で鉱石が沢山出る場所に案内してくれ」

「ええ。自分としては当然そのつもりでいたッスけど……。って! どうしたんスかソータさん!? 怖い! 目が怖いですよ!」

「そうか? 俺は何時も通りだよ?」

「全然違いますよ! なんだか急に距離が近くなった気がしますし……どうしちゃたんですか急に!?」

 しまった!
 カネに目が眩むがあまりスキンシップが過剰になっていたか。

 気を付けよう。
 シエルに嫌われてしまったら今回の作戦は全て水の泡となってしまう。


「ねえ。キャロ。たぶんアタシたち……同じことを考えていると思わない?」

「奇遇ですね。私もたった今……同じことを言おうと考えていました」


 ん?
 お前たちは隠れるように何をそんなにヒソヒソと話しているの?


「シエルちゃんばかりに良い思いはさせないわ……!」

「ご主人さまからの寵愛を……独り占めさせるわけにはいきません!」


 理由はよく分からないが、結果オーライということだろうか?
 俺がシエルとスキンシップを取ると、2人の眼にヤル気の炎が点ったような気がした。





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