劣等眼の転生魔術師 ~ 虐げられた元勇者は未来の世界を余裕で生き抜く  ~

柑橘ゆすら

怪しげな団体



 それから。
 俺は様々なブースに立ち寄り、自分に合った研究会がないか探してみることにした。

 だがしかし。
 当然と言えば当然の話なのだが、今のところ『これ』という場所を見つけることができないでいた。

 最初こそ、体力トレーニングの一環としてスポーツ系の研究会に興味を持っていたのだが、説明を聞けば聞くほど、拘束時間の長さに嫌気が差していた。

 放課後だけならともかく、休日にまで参加しなければならないのが辛いところである。


 どうやらスポーツ系の研究会に入る必要はなさそうだな。


 体を鍛えたいのであれば、トレーニングルームを使って自主的に鍛錬をすれば良いだけの話である。

 かといって魔術系の研究会は、どれもこれもレベルが低くて興味が湧き辛い。
 200年前の時代から転生してきた俺に合ったレベルを求めるのは酷にしても、せめて何かしらの見どころが欲しいところである。


「さあ! テッド君! アーミーフット研究会に入って、共に熱い汗を流そうではないか!」

「何を言う! テッド君は我々、ハウント研のものだよ!」

「ぬおおおお! 師匠! 助けて欲しいッス!」 


 ああ。そうそう。
 暫く一緒に研究会のブースを回っていたテッドであったが、暫くすると体格の良い上級生たちに拉致されて、俺の前から姿を消すことになった。


 筋肉質でガッチリとした体格のテッドは、勧誘に当たっている上級生の立場からすると絶好のターゲットなのだろう。


 実際、先輩たちの見る目は間違ってはいない。
 魔術の性能はともかくとして、運動神経に関して『だけ』は、俺がそれなりと認めるレベルに優れているからな。

 もしもテッドがスポーツ系の研究会に所属した場合、どこに参加するにしても抜きん出た活躍をしてくれるに違いない。


 ~~~~~~~~~~~~


 さて。
 今回のイベントに参加して、1つ興味深かったのは、外部生の俺たちにも上級生たちは、普通に勧誘活動を行っているということである。

 学年が上がるごとに内部生と外部生の対立構造が薄くなっていくということだろうか?

 中には『外部生お断り』というプラカードを掲げている研究会もあったが、どちらと言うとそういう組織の方が少数派であった。


「この世界から戦争をなくしましょう!」

「魔滅研に入って、共に平和な世界を築くのです!」


 んん? なんだろう。あれは。
 暫く歩いていると今までの研究会とは、少し毛色の異なる怪しげな団体を発見することができた。

 魔術撲滅研究会というプラカードを掲げた男たちは、中央広場の一角を我が物顔で占拠しているようであった。

 ふうむ。
 俺には理解のできない感情だな。

 お前たちは魔術を学びに学園に来ているのではないのか?
 どうしてそこで『魔術を滅ぼす』なんていう発想が出てしまうのだろうか。


「今こそ『魔滅研』に栄光の光を! 革命の時代(とき)は今、目前にまで迫っているぞ!」


 えーっと。今、どこかで聞いたような声がしなかったか?

 俺は目を細めて声のする方を凝視する

 そこで俺を待ち受けていたのは、更なる驚愕の光景だった。


「……んん?」


 思わず驚きの声を漏らしてしまう。

 やはりと言うべきか、魔術を撲滅すると大声を張り上げているのは、見覚えのある人物だった。

 な、なんということだ。


 お前、ボンボン貴族(兄)、バースじゃないか。


 同じ学園に入学したという話は聞いていたが、こんなタイミングで再会を果たすとは思いも寄らなかった。


 暫く見ないうちに貧相な体つきになっているな。
 

 不健康に痩せ細っている割には、目つきだけやたらと鋭く、そこがまた何とも言えない薄気味の悪さを醸し出していた。まるで痩せたトカゲだな。


「ねえ。キミ、もしかしてテッド君と一緒にいた……」


 俺が怪しい団体を観察していると背後から声をかけられた。

 ふうむ。
 この男はたしか以前にテッドをスポーツ系の研究会に誘おうとしていた奴だな。

 名前はたしかセガールとか言ったか。


「先程はウチの部の主将がすまなかったね。改めて謝罪させて欲しい」

「いえ。その件については大丈夫です。この眼のせいで、他人から差別を受けることは慣れていますので」


 今更説明するまでもなく、200年前の時代において、俺の持つ琥珀眼は差別と迫害の象徴であった。

 現代において琥珀眼は無能の象徴とされて、嘲笑されているようであるが、過去に受けてきた理不尽な仕打ちと比べると生温いものである。


「これ、ウチの部で配っているスポーツドリンクなのだけど……。良かったら、謝罪の印にどうかな」


 そう言ってセガールは、鞄の中からボトルを取り出した。
 限りなく水に近い色をしたその飲み物は、今までに見たことのないタイプのものであった。


「受け取っておきます。気を使って頂きありがとうございます」


 なるほど。
 先程の傲慢を絵に描いた『主将』とは異なり、このセガールという男はなかなか礼節を弁えているようだ。


「あの。さっきから気になっていたのですが、そこにいる妙な格好をした連中は何なのですか?」

「あー。AMOの連中だよね。最近では学園にまで拠点を作ったみたいだ。本当に迷惑な奴らだよ」

「AMO?」

「アンチ・マジカル・オーガニゼーション。全国でもトップクラスの規模持つ反魔術組織の略称さ。表向きには『戦争反対』『平和主義』を唱えているのだけど、やることがいちいち過激でさ。近年では深刻な社会問題にもなっているんだよ」


 ふうむ。知らなかった。
 俺が知らない間にそんな組織が世間にのさばっていたのだな。

 俺が以前住んでいたランゴバルト領は辺境の片田舎に存在していたため、世間の情報が入り辛い環境にあったのである。


「ところで、アベル君。キミはもう所属する研究会を決めたのかい?」

「いいえ。実を言うとまだ決めかねています。魔術系の研究会に絞って探しているのですが、正直どこも物足りなく感じてしまって」


 俺の言いたいことを察したのかセガールは苦い笑みを零す。


「そうだろうね。キミほどの実力者ともなると自分のレベルにマッチした場所を探すのにも苦労しそうだ。正直、ウチの学園にキミが満足できるような研究会は……」


 そこまで言ったところでセガールは、何かを閃いたかのような様子で顔を上げる。


「いや、そうか。1つだけあるかもしれない。ついてきて。面白いものが見られるかもしれないよ」


 なるほど。
 どうやらセガールには何か心当たりがあるらしい。

 元々、俺は学園に関する情報には無関心だったので、こういう時に頼れる存在がいるのは有難い。

 そういうわけで俺はセガールの勧める研究会を覗いてみることにした。


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コメント

  • アベルにあった研究会ってあるのかな?

    1
  • ロット

    反魔術団体て魔◯科高校の劣◯生?

    1
  • ノベルバユーザー137512

    ないなら作ればいい-w-w

    1
  • ロット

    小説、アニメ化待ってます(笑)

    1
  • Gabry

    アベルにあったレベルの研究会って…

    2
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