劣等眼の転生魔術師 ~ 虐げられた元勇者は未来の世界を余裕で生き抜く  ~

柑橘ゆすら

クレープを食べる


 それから暫くの間はエリザが俺と目を合わせることはなかった。

 結局、エリザが何時もの調子を取り戻したのは、とある飲食店に入ってからである。

 運ばれて来た料理は、俺にとって見慣れない品だった
 薄く焼いた小麦粉に、クリーム、フルーツなどの甘味を挟んだ料理をこの世界では『クレープ』と呼んでいるらしい。
 

「んん~~! 美味しい! やっぱり『白連堂』のクレープは別格ね!」


 イチゴと生クリームたっぷりのクレープを頬張りながらエリザは笑顔を浮かべている。

 それにしてもコイツ、さっきから食べ過ぎなんじゃないだろうか。
 この店に入る前にも数件の外食店に入っていたはずなのだがな。
 
 エリザの体が、年の割に発育が良い理由が分かったような気がする。


 人通りのまばらなオープンテラスの中、エリザと2人でクレープなるものを食べる。


 俺が選んだのはビターチョコレートとアーモンドが入ったクレープだ。

 この判断は正解だった。ほどよい甘さで食べやすい。


「ね。それ一口、頂戴よ」


 ふう。こういう時に隣の人間が食べているものほど美味しく見えてしまうのは、何時の時代も共通しているのだろうな。
 

「いいぞ。ほら」


 俺はエリザに対してクレープを差し出す。
 エリザは大きく口を開けてガブリとクレープに噛り付いた。


「ん~~! こっちも美味しいわね! アベルも一口、どう?」

「ああ。頂こうか」


 エリザが差し出した生クリームたっぷりのクレープを齧る。

 ふむ。すごく甘いな。
 
 どちらかというと俺は甘いものが得意ではないのだが、この店のクレープならば苦なく食べられるような気がする。


「どう? 美味しい?」

「ああ。美味いぞ」

「ふふふ。そうでしょ? アタシの一押しなんだから。この店は!」


 得意気に大きな胸を張るエリザ。
 さながらその様子は、自分が作った料理を褒められたかのようであった。
 

「しかし、意外だな。お前は案外『こういうこと』を気にしないタイプだったのだな」

「えっ。『こういうこと』って?」

「俺はよく知らんのだが、前に小説で読んだことがある。他人が口を付けた箇所に自分も同じように口を付けることは『間接キス』と呼ぶらしいぞ」

「~~~~っ!」


 俺が指摘をするとエリザは、何かを察したボッと頬を赤くした。


 んん?
 もしかしてお前、食べることに夢中で気付いていなかっただけなのか?


 相変わらずの食欲モンスターだな。
 食い意地の張った奴だとは思っていたが、これほどまでとは予想外である。


「すまん。無粋なことを言ったな」

「べべべ、別にー! か、間接キスくらい別に普通だし! 全然、まったく、これっぽっちも気にしていないんだから!」

「そうか。まあ、ならいいのだが」


 あからさまに動揺しているようにも見えるが、本人が否定しているので、そういうことにしておくとするか。

 先程のリリスの一件といい、今回のエリザといい、女心というのは本当に分からないものである。

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コメント

  • エリザ可愛ー(o´艸`)

    1
  • ゆぅいくん239984

    190634«(m9^ω')それな

    2
  • ノベルバユーザー190634

    2ヶ月足らずでアニメ化しそう

    9
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