劣等眼の転生魔術師 ~ 虐げられた元勇者は未来の世界を余裕で生き抜く  ~

柑橘ゆすら

回避の天才



 やれやれ。
 今後の学園生活のことを考えると、あまり目立ちたくはないのだけどな。

 俺としては、別に勝敗に対する拘りないし、負けてやっても良いのだが、そうすると今度は余計に内部生たちを増長させかねない。

 仕方ない。
 敵の弾丸を回避するくらいなら特別な魔術を使うわけでもないし、ここは2人の仇を取ることを優先してやるとしよう。


「オラオラ! 喰らいやがれ!」

「ハッハー! そろそろ息が上がってきているんじゃないか!?」


 全然上がってない。
 どちらかというと疲労の色が見えてきているのは、3人がかりで攻撃しているお前たちの方じゃないか?

 三方向から攻撃が来るのだから、避けるのが難しいと思うかもしれないが、実際はそんなことはない。
 
 理由は2つある。

 1つは、こいつらの攻撃がバカの1つ覚えのように単調なことである。

 仮にこいつらが頭を働かせて、俺の退路を断つように攻撃をしてきたのならば、少しは難易度が上がるかもしれないが、今のところは全くその気配がないな。

 そしてもう1つは、このコートだ。
 ラビが自由に動き回ることのできるエリアは縦横20メートルの範囲である。十分に広い。

 相手がコートの外から攻撃を打ってくる以上、俺は目を閉じていても攻撃を回避できるだろう。


 そういえば最近、図書館に籠ってばかりで体を動かしていなかったな。


 よくよく考えてみると、この体育の時間は運動不足の解消にはうってつけなのかもしれない。


「うおっ! 今の攻撃! 危なかったッス! 流石の師匠でも、3人が相手じゃ……」

「いいえ。ドングリ。それは違うわ」


 何かに勘づいたかのような様子でエリザは言った。


「アベルはさっきから、あの位置から一歩も動いていないのよ」


 ふう。流石にエリザは気付いたか。
 普通に避けていても簡単過ぎるし、何個か自分の行動に制限をかけていたのだ。


「ヤベエぞ! このままだと仕留めきれねえ!」

「仕方ねえ! 例の、『合体攻撃』でいくぞ!」


 はて。合体攻撃とは一体何のことだろうか。

 などと考えていたその直後、俺の周囲を大量の術弾が覆った。

 ふむ。
 どうやら内部生の連中は、既存の魔術構文に《散連弾》の追加構文を施してきたらしい。
 
 ルール違反も甚だしい。
 既存の魔術構文を変更するのは、ルール違反だと事前の説明であれほど言っていただろうに。


「どうだ! この攻撃は避けられないだろう!」


 先程までとは比較にならないほどの量の術弾が一気に押し寄せてくる。

 なるほど。
 たしかにこれだけの弾幕を張られてしまうと、攻撃を避けられるだけのスペースが見当たらない。

 まあ、正確に言うと避けられないこともないのだが、そうすると今度は大勢の前で人間離れした動きを晒すことになってしまうことになり、余計な注目を集めてしまうだろう。

 仕方ない。
 先にルールを犯したのはお前たちだ。


「証明完了。《反証魔術》」


 相手の構築した魔術を分析して、一瞬で相手の魔術を無力化する技術を《反証魔術》という。
 実のところ《反証魔術》は相当な実力差がないと使えないのだが、ポンコツを絵に描いた内部生チーム相手なら問題ないだろう。


 パリンッ!


 ガラスが割れるような音が響いて、俺の周囲を覆っていた術弾の嵐が粉々になって砕け散る。

 はて。
 ところでこのハウントというスポーツで《反証魔術》を使用するのは、ルール違反になるのだろうか。

 事前の説明では相手プレイヤーに干渉する魔術を使ってはいけないというルールがあったはずだが、《反証魔術》がこれに当てはまるかは微妙なところである。


「なっ! 何が起こったっ!?」

「信じられねえ! 魔道具の故障か!?」


 俺が《反証魔術》を使用したのと同時にゲーム終了のブザーが鳴る。
 
 結果的に《反証魔術》で攻撃を凌いだことは正解だったかな。
 これで第三者の視点からは、慣れない追加術式を使ったことによって魔術が暴発(オーバーフロー)したようにしか見えないだろう。


「うおおおお! 流石は師匠! 世界一ッス!」

「凄いです! アベルくん! たった1人で攻撃を凌ぎ切ってしまうなんて!」


 チームの連中は既に勝利したかのように喜んではいるが、まだまだ油断することはできない。


 結局、外部生チームの生き残りは俺一人だった。


 つまり、次の攻撃で防御側(ラビ)に回った内部生チームを全滅させないと、俺たちの敗北が確定してしまうのである。

 さてさて。
 どうしたものか。


「劣等眼の転生魔術師 ~ 虐げられた元勇者は未来の世界を余裕で生き抜く  ~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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コメント

  • いーちゃん

    はやく!はやく!めっちゃ続き気になる!!

    6
  • ノベルバユーザー128919

    続きがきになってきましたね〜!

    10
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