劣等眼の転生魔術師 ~ 虐げられた元勇者は未来の世界を余裕で生き抜く  ~

柑橘ゆすら

ハウント



 突如として体育の時間で行うことになった『ハウント』は、2つのチームに分かれて戦うスポーツだ。


 両チームは『攻撃側』『防御側』に分かれて5分間ずつ交互に攻撃を行う。


 攻撃側は『シューター』と呼ばれ、防御側は『ラビ』と呼ばれる。
 これは貴族の昔からの遊びである『狩り』から着想を得ている為だ。

 攻撃側シューターの目的は、防御側ラビ術弾ブレットを命中させて転倒させること。

 防御側ラビの目的は、攻撃側シューターから放たれる術弾ブレットを避け続けることである。

 最終的により多くの生存者を残していたチームが勝ち、というシンプルなルールであった。


「シューターが使う射撃手袋は事前にオレが用意している。だがまあ、何時も通り自前のものを持っているっていうやつは、そっちを使っても構わないぜ」


 シューターの役割を持った人間は、それぞれ手袋型の魔道具を装備する決まりとなっているらしい。


 この魔道具からは3種類の術弾が射出される。


 それ即ち、スピードに特化した槍型、バランス型の球型、軌道に変化を付けやすい円盤型だ。

 どのタイプの術弾も肉体に対するダメージはないが、プレイヤーに命中すると衝撃波が発生するようになっているのだとか。


「なるほど。つまりは攻守に分かれて戦う、ドッジボールみたいなイメージっスね」


 隣で座っていたテッドが珍しく的を射た言葉を呟いた。
 ドッジボールとは俺のいた200年前の時代にはなかった、比較的歴史の浅い球技スポーツだ。

 実際にプレイしたことはないのだが、本で読んだので俺も大まかなルールは知っている。


「それでは、チーム分けするぞ。全部で30人だから、8人チームが2つの7人チーム2つでいいな。各自、名前を呼ぶぞ。まず、Aチーム」


 カントルが名前を呼んでいく。
 ふとBチームを呼び終わった辺りで違和感を覚えた。

 Cチームのメンバーの名前を点呼した後、テッド以外の誰もが異変に気付いていた。


「で、残った7人がDチームだな」

「わーい! 師匠と同じチームッスねー!」


 やれやれ。お前っていうやつは何処までも呑気なのだな。
 異変に気付いた俺たちチームの中には、早くも暗雲が漂い始めていた。


「あの、先生。このチーム分けって……?」


 俺と同じチームに分けられた、気の弱そうな黒髪の少女が戸惑いの声を上げる。


「何か不満か? それぞれ見知った相手とチームを組んだ方が戦いやすいだろ?」


 なるほど。
 俺は昨日の言葉を思い出した。


『お前、明日の授業で覚えておけよ! 絶対に大恥をかかせてやるからな!』


 これで納得がいった。
 昨日の言葉は単なる捨て台詞ではなく、今日の体育の時間を見越してのものだったのだろう。

 事前に知っていたということは、内部生たちと体育教師はグルだったという可能性もあるな。


「分かってはいると思うが、相手プレイヤーに干渉する魔術は禁止だ。そしてもちろん、身を守るための身体強化系魔術の使用は問題ないぞ。各自、自己責任でケガには十分に気を付けて試合するように」


 カントルが俺たちの方を見てそう言う。

 ふう。まるで怪我をしても『我関せず』とでも言いたそうな台詞だな。


「では、AチームとBチームは奥のコートへ。CチームとDチームは手前のコートに移動だ。各自準備が出来たら知らせるように」


 カントルがパンッと手を叩く。
 それを合図に生徒たちが私語交じりに立ち上がってコートへ移動する。


「へへっ。よろしくな。劣等眼。これで昨日の借りは返してやるぜ」


 すれ違いざまに昨日の内部生が俺にそんな言葉を投げかけた。

 はあ。
 あまりにも露骨なチーム分けに逆に感心をしてしまいそうになる。


 俺たちの対戦相手であるCチームは、ここ最近、外部生に敵意を剥き出しにして絡んできた内部生たちだったのだ。


 やれやれ。何を仕掛けてくるのやら。
 こうして俺たち外部生チームは、ひょんなことから内部生たちと戦うことになるのだった。

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