劣等眼の転生魔術師 ~ 虐げられた元勇者は未来の世界を余裕で生き抜く  ~

柑橘ゆすら

筆記試験



 アースリア魔術学園の試験は、筆記試験と実技試験の2つがある。

 片方100点が最高点として、満点は200点となる計算だ。


 カリカリ。
 カリカリ。カリカリ。


 静まり返った試験会場の中にはペンを走らせる子気味の良い音が響いていた。
 筆記試験の科目は『一般教養』、『魔術言語』、『魔術工学』の三種類によって構成されていた。


 まずは、一般教養。
 これは解けない方が不思議だろ、というくらいには簡単だった。


 内容の方はというと図形を使った簡単な数学、文章の読解能力を試す問題など多岐に渡る。

 が、この手の試験は、二百年前の時代にも課されることがあった。
 流石に『一般教養』というだけあって、200年前と比べて内容もさほど変わっていない。


 つまり俺にとっては間違えようのない試験ということになる。


 次に魔術言語。
 これに関しては解ける、解けない以前にバカにしているのか? といったレベルであった。
 
 ただでさえレベルの低い、この時代の魔術を更に学生向けにレベルを落としているわけだから、俺にとっては欠伸の出る問題である。

 もちろん満点以外はありえなし、何なら出題者のミスを4つも見つけてしまった。


 で、最後の試験は魔術工学。


 これに関しては前の2つと比べて少しだけ難易度が上がっていた。

 出題者の意地の悪い性格が透けて見えるかのようである。

 ただ、多少ハードルが上がったとは言っても、もちろん俺にとっては赤子の手を捻るよりも簡単な試験には違いない。

 やれやれ。
 このままいくと全教科を満点で試験を通過しそうだな。

 どうやら次が最後の問題のようである。


 設問12 デポルニクスの最終定理より出題。魔術によって人間の魂が作り出せないことを下記に証明せよ。


 んん?
 最後の最後にして、今までとは毛色の異なる問題が飛び出してきたな。

 問題の難易度も今までとは比較にならないレベルで上がっている。

 おそらくこの問題は受験生の満点を阻止するための目的で設置されたものなのだろう。

 思わず少しだけ頬が緩んでしまう。
 

 何故ならば、この問題を最初に作ったのは他でもない俺だからな。


 あれは200年前の世界で、俺が10才にも満たない子供だった時のことである。

 当時の世界は『人体錬成ブーム』の最盛期であり、様々な魔術師たちがこぞって、人間の魂を作り出す方法を模索していた。

 中には高名な魔術師が『実験』と称し、数多の人間の命を奪っていたことが発覚して、社会的な問題になっていたりもした。

 実にバカらしい。
 魔術によって生物の魂を作り出すことは不可能なことだというのに。

 だから俺は匿名で、この『デポルニクスの最終定理』を発表することによって、無意味なブームに終止符を打つことにしたのだ。

 まぁ、当時の研究結果の延長として《転生魔術》を完成させることができたのだから、俺にとっては無意味なことではなかったのだけどな。


 閑話休題。


 これまでと比べて難易度が上がったとは言っても、俺にとってこんなものは『サービス問題』に過ぎない。
 なんと言っても初めてこの問題を解いたのは、俺が10歳にも満たない子供だった時のことだからな。

 この『デポルニクス』の名前の由来が、近所に住んでいたオジサンが飼っていた犬の名前であることを知っているのは俺くらいのものだろう。


 これでよし、と。


 今にして思うと当時に発表した『デポルニクスの最終定理』は、何かと無駄の多い不完全なものであった。


 やれやれ。
 子供の頃の話とは言っても、こんな不完全なものを発表してしまった過去の自分が恥ずかしい。


 俺は既存のデポルニクスの欠点を補った回答を記述することによって、筆記試験を終わらせるのだった。

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