劣等眼の転生魔術師 ~ 虐げられた元勇者は未来の世界を余裕で生き抜く  ~

柑橘ゆすら

医療魔術



 それから1時間後。
 テッドのケガは俺が直すこともできるのだが、一応この世界の医療魔術師たちのレベルも見ておきたい。

 そういうわけで俺は木に上って、医務室にいるボンボン貴族(弟)の様子を窓の外からこっそりと眺めることにした。


「全治六カ月はかかりますじゃ」

「そう、ですか」

「坊ちゃま。遊びたい盛りなのは分かりますが、我慢ですぞ」


 全治六カ月か。
 随分とまぁ時間がかかるのだな。


 いくらボンボン貴族(兄)の回復魔術によって症状が悪化したとは言っても、そこまでのケガとは思えない。


 やはりこの世界では、医療魔術師たちのレベルも落ちているようである。


 ガチャリ。


 老医師が部屋を後にしたタイミングを確認してから、俺は窓から医務室に潜入する。 


「あ……れ……? アベルか……?」

「ああ。ケガの具合は大丈夫か?」

「へへっ。当たり前だろ。これくらいのケガ、掠り傷のうちにも入らないやい!」


 気丈に振る舞うボンボン貴族(弟)であったが、疲労の様子が隠しきれていない。


「ZZZ……」


 暫くするとテッドは、寝息を立てて眠りに落ちていくことになった。


 ふむ。
 それにしても不細工な寝顔だ。 


 相変わらずにこの男の顔には知性の欠片も感じられない。


「六カ月なんて俺は待たんぞ」


 俺は幾つかの術式の魔術構文を空中に生み出す。


《術式破壊──下手くそな回復魔術リトル・ヒーリング

《再構築術式、治癒魔術。並列発動、回復魔術》

《身体強化魔術、変化応用、治癒力増進》


 よし。これでいいだろう。

 バースのかけた下手な魔術を取り除き、骨と骨を繋ぐ魔術を掛けた。

 後は治癒力を増進させたし、これで直ぐ治るはずだ。


「悪いな。テッド。生憎と俺は気が短いんだ」


 もちろん俺としては、ボンボン貴族(弟)のケガがどうなろうと知ったことではない。


 ただ、日々の運動相手を失ってしまうのは俺にとっても痛手である。


 この男にはまだまだ利用価値がある。

 早くケガを直して今後も俺のためにしっかりと働いてもらうとしよう。


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