異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

波乱の地下通路



 それから翌日のこと。
 シルフィア&サクラに事情を説明した悠斗は、リズベルとの待ち合せ場所に指定された反乱軍の地下聖堂に向かっていた。


「他人の精神を操作する《人形遊び》のスキルですか……。俄かには信じがたいですが、たしかに思い当たるフシはありますね」


 目的の場所に向かうまでの最中、改めて悠斗は今日まで抱いていた違和感を説明することにした。

 思い返してみれば、ここ最近の反乱軍メンバーの増加率は異様だった。
 それまで平和主義と唱えていた神父の男が突然、武器を取ったかと思うと、偶然に街を通りかかった冒険者の男がそのまま組織に加入することもあった。

 もしもグレゴリーという男が、戦力になりそうな人材を次々に洗脳しているのだとしたら?
 これまでの不可解な出来事にも納得が行くことになる。


「しかし、どうして洗脳のスキルの存在に? ワタシにはとても手がかりとなる証拠を掴めそうもありませんでした」

「あー。実を言うと俺、他人のスキルを見通す《魔眼》のスキルホルダーなんだよね」

「なっ……」


 サクラは絶句していた。
 様々なものの性質を見抜く《魔眼》のスキルの存在は知っていたが、それが目の前の少年に与えられているのだとしたら前代未聞の事件である。

 これまでにもサクラは悠斗が、『影の中に潜るスキル』、『自由に水の人形を動かすスキル』の2種類を使用していることを確認している。

 同時に2つの固有能力を持った人間は過去にも存在したケースがあったが、3つともなれば聞いたことがない。


「コノエ・ユート……。貴方は一体、いくつの固有能力を保有しているというのですか……?」

「あはは。さぁ……。何個なんだろうな~」


 言えない。
 先日デビルクラーケンから《霊感》のスキルを手に入れたことによって、ついに10個という大台に到達してしまったということは言えるはずがない。

 魔物のスキルを奪い取る、《能力略奪》の存在は、未だに誰にも説明をしたことがないトップシークレットだったのである。


「諦めろ。サクラ。主君はそういう男なのだ……」


 疑心暗鬼のサクラに対して、シルフィアはポンと肩に手を置いた。
 悠斗の持つ数々の固有能力を目にして絶句する、というイベントは、悠斗の周りの女の子たちの間では、ある種の通過儀礼のような扱いとなっていたのである。


 ~~~~~~~~~~~~


 過疎化の進んだナルビアの街の荒廃した道路を歩く。
 3人で会話を交わしていると、何時の間にか目的の場所に近づいていた。 


「見えてきました……! あの建物の地下がアジトになっています」


 サクラの指さす方向にあったのは、以前にも案内されたことのある教会であった。
 この教会はもともと秘密裏に街に出入りするための、地下通路が引かれていたという背景もあり、反乱軍の隠れ家の1つとして重宝されていたのである。


「お待ちしておりました。シルフィア様でございますね」


 教会の扉を開くと中で待機していた1人の老人が声をかけてくる。


 セバス・マグマルド
 種族:吸血鬼
 職業:反乱軍団長
 固有能力:生物探知 人形遊び

 生物探知 レア度@☆☆☆☆
(周囲にいる生物の気配を探り当てるスキル)

 人形遊び(マリオネット) レア度@☆☆☆☆☆
(他人の精神を操作する魔法の糸を紡ぎ出すスキル)
 

 何か武術の鍛錬を積んでいたのだろうか?
 黒色の執事服に身を包んだその老人は、相当な手練れであることを推し量ることができた。


(吸血鬼? 反乱軍のメンバーの中には魔族までいるのかよ……)


 この時、悠斗にとって知る由のないことであったが、グレゴリー・スキャナーの保有する固有能力《拡散する人形遊び》は、世にも珍しい他人にスキルを付与することのできるスキルだった。

 このスキルには与えられる数に制限がある。

 グレゴリーは反乱軍メンバーの中でも有望な人材にのみ《人形遊び》のスキルを付与して、部下たちの管理を行っていた。
 つまり《人形遊び》を保有しているということは、グレゴリーに一定の実力を認められた証でもあった。


「どうして私の名を? 貴様に教えた覚えはないぞ」

「おっと。これは失礼。シルフィア様のことはリズベル様より伺っておりました。何もない街ではございますが、どうぞゆっくりとして行って下さい」


 リズベルの名前を聞いて一瞬、安堵の感情が湧き上がったが、シルフィアは改めて気を引き締め直す。

 物腰柔らかなセバスの態度に騙されてはならない。
 悠斗の推理が正しければ反乱軍のメンバーは全員、グレゴリーの能力によって洗脳されている敵なのである。

 
「……ささ。どうぞこちらへ。リズベル様が首を長くして待っております」


 柔和な笑みを浮かべたセバスは、教会奥の地下通路に続く階段に悠斗たちを案内する。
 異変が起きたのは、悠斗たちか地下通路の階段を降りようとした瞬間だった。 

 カチャリッ。

 振り返ってみると、どういうわけかセバスは地下通路の扉に対して内側からカギをかけていた。


「どういうことだ……? 何故、扉のカギを締める必要がある?」


 不審を抱いたシルフィアがセバスに疑問を投げかけた直後だった。


「フフフ。フハハハハハハ!」 


 突如として哄笑したセバスは着ている服を脱ぎ去り、鍛え抜かれた上半身の筋肉を露にする。


「バカな娘どもだ! 既にこのアジトがグレゴリー様の支配下にあるとも知らずにな!」


 そこまで聞いたところで悠斗は、自らの推理が正しかったことを確信した。

 シフフィア、サクラも同様である。
 事前に悠斗の推理を聞いていたからこそ、不測の事態を受けても冷静な状態を保つことができた。


「かかれ! お前たち! まずはその金髪を取り押さえろ!」


 セバスが指の先から伸びた魔法の糸を操作すると、配下である男たちを呼び寄せる。

 シルフィアの到着に合わせて準備をしていたのだろう。
 薄暗い通路の中には、武装した男たちの集団が待ち構えていた。


「行くぞ! 主君! サクラ! 援護を頼む!」


 もしも戦争を止める可能性があるのだとしたら、それはアジトの奥に鎮座するグレゴリーを討つことだけである。

 覚悟を決めたシルフィアは、先陣を切って階段を駆け下り、悠斗たちもそれに続く。 
 先の見えない地下聖堂の奥には、何処までも続く薄暗い闇が広がっていた。

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