異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

VS 海の悪魔


(おお~! これは良い景色だな!)


 一方、その頃。
 海の中に潜った悠斗は、綺麗な海の中の世界を楽しんでいた。

 全ての格闘技の長所を相乗させることをコンセプトとした《近衛流體術》を習得した悠斗は、《フリーダイビング》についても日本代表クラスの実力を誇っていた。
 
 ダイビングを極めた悠斗であれば息を止めた状態で10分以上の潜水が可能であるが、それでも水の中では行動に様々な制約が付き纏うことは避けられない。


(……よし。そろそろ新技を使ってみるか)


 次に悠斗が使用したのは、自宅の風呂場の中で編み出したオリジナルの魔法である。

 ズゴゴゴゴッ!
 悠斗は水魔法ウォーターを使用して自らの口の周りに小型の渦潮を発生させる。

 口の中から伸びた渦潮は、まるでストローのようにして悠斗と海面を繋いでいく。
 最後に風魔法ウィンドを使用して渦潮の中の空気の循環を活性化させれば、《潜水魔法》の完成である。

 ウォーター&ウィンドの魔法を同時に操ることによって悠斗は、潜水した状態でも自由に酸素を得ることに成功したのだった。


(……さて。何か目ぼしいターゲットはいるかな)


 準備を整えた悠斗はグルリと周りを見渡して、サクラの釣った獲物を超える魚を探してみることにした。


(う~ん。思っていたよりも小粒だなぁ)


 スパイフィッシュ 脅威LV1

 アクアイーター 脅威LV5

 ビリビリクラゲ 脅威LV3


 悠斗の周りには3種類の魚モンスターが泳いでいたが、いずれもサクラの釣り上げたバーサクシャークには遠く及ばない。

 最も大きいものでアクアイーターの1メートルくらいが限度であった。
 更なる獲物を求めて悠斗が水深の深い場所を調べ始めた直後だった。


 ビー。
 ビー。ビー。ビー。


 突如として悠斗の頭の中に電子音が響き渡る。


 警鐘@レア度 ☆☆☆☆☆
(命の危機が迫った時にスキルホルダーにのみ聞こえる音を鳴らすスキル。危険度に応じて音のボリュームは上昇する)


 これまでの経験から音の原因が《警鐘》のスキルにあることは直ぐに分かった。
 異変の臭いを嗅ぎ取った悠斗が水中で振り返った直後のことである。


 デビルクラーケン
 種族:クラーケン
 職業:なし
 固有能力:霊感

 霊感 レア度@☆☆☆
(目では見えないものを感じ取る力)


 まず悠斗の視界に入ってきたのは、人間1人分くらいの大きさがあろうかというサイズの大きな目玉であった。

 至近距離で遭遇した故に相手の全長を確認することはできないが、悠斗がこれまで出会ったモンスターの中でも最大級のサイズを誇っていた。


(こいつ……! ネームドモンスターだな……!)


 ネームドモンスターとは、突然変異により生まれた魔物の通称である。
 通常の魔物と比べて高い知性を持ったネームドモンスターは、強力な《固有能力》を所持しているものが多いことから、一介の冒険者では太刀打ちできない存在としてその名を知られていた。


「シュゴオオオオオオオ!」


 出会い頭に大きく海水を吸い込んだデビルクラーケンは、地鳴りのような咆哮を上げる。
 次の瞬間、悠斗の視界は正体不明の暗闇の中に沈んでいくことになった。


(これは……! イカ墨っていうやつか……!?)


 首尾よくターゲットの視界を奪ったデビルクラーケンは、触手を使って、悠斗の四肢を拘束する。
 通常、イカ墨とは、捕食者から逃げるために用いられるものであり、自ら積極的に攻撃対象に吹きかけたりするものではない。

 そのことからもデビルクラーケンの知能が、通常種とは比べ物にならないほどに高いことが伺うことができた。


(クソッ……! つくづく今日はヌメヌメの生物に縁のある日だな……!)


 抵抗しようにも海の中では思うように力を入れて体を動かすことができない。
 視界を奪われた悠斗はデビルクラーケンの触手に捕まり、海の底に引きずり込まれていくのだった。


 ~~~~~~~~~~~~


 一方、その頃。
 ここは悠斗が潜っている水中から100メートル離れた場所にある堤防である。


「……日が沈むまで残り3分と言ったところでしょうか。どうやらワタシの勝利は揺るがなかったみたいですね」


 サクラが釣り上げたバーサクシャークは、この付近の堤防で釣れる魚の中では最大サイズを誇るモンスターである。
 今回の釣り対決は、悠斗を負かすために仕組んでいたサクラのワナであった。

 バーサクシャークというモンスターは、朝昼に河口に入って、夕日が沈むタイミングで海に戻る習性があった。

 事前にターゲットの回遊ルートを調べておけば、釣り上げることは簡単である。
 勝負の序盤、バーサクシャークが好みそうな小魚を釣り上げて、時合いが訪れた時にワナを張っておくだけでいい。

 サクラの考えていた勝利の方程式は、ここまで完璧に再現されていた。


「あの男の狙いは分かりました。大方、直接海に潜って素手で魚を取るつもりでいるのでしょう。しかし、どう考えてもワタシを脅かすような策ではありません」


 人間と魚では持って生まれた体の構造が違い過ぎる。
 この時、サクラは仮に上手く行ったとしても、悠斗の作戦では動きの緩慢なフグなどの小魚を1匹捕まえるのが関の山だと考えていた。


「……大丈夫。主君は絶対に勝ってみせるさ」


 これまで幾度となく悠斗の勝利を見届けていたシルフィアだからこそ分かる。
 悠斗が『勝てる』と宣言をして、敗北をしたことは過去にない。

 どんな逆境であろうとも吹き飛ばす『英雄気質』を持って生まれたことが、悠斗に仕えようと思った最大の理由だったのである。


「クッ……。何を根拠にそのような言葉を……!? お嬢さま。いい加減に目を覚まして下さい!」


 圧倒的に有利な状況に置かれているにもかかわらず、サクラは苛立っていた。
 
 何故だろう。
 作戦は上手く行っているはずなのに――不思議と悠斗にだけは勝てるビジョンが浮かばない。

 決して拭うことのできない敗北のイメージがサクラの余裕を削ぎ取っていた。 


 ピクピク。
 ピクピク。ピクピク。


 2人がそんな会話を交わしていた直後のことである。
 突如としてシルフィアの手にした竿に強い当たりが発生する。


「主君……! ついにやったのだな……!」


 悠斗の合図を感じ取ったシルフィアは、手にしたリールの糸を一心不乱に巻き取っていく。


「ま、まさか……! そんなはずは……!?」


 海面に浮きあがってきた魚影を見れば否が応でも分かってしまう。
 どうやら悠斗が仕留めた獲物は、サクラの釣ったバーサクシャークを遥かに超えるサイズを有しているらしい。

 けれども、だからこそ腑に落ちない。
 普通に考えれば、人間が海の中で大型のモンスターを仕留めることなど不可能なはずであった。
 

「こ、この魔物は……!?」


 やがて浮かび上がってきた生物を見てサクラは絶句することになった。

 その全長は優に15メートルにも達しているだろう。
 空前絶後の巨躯を誇るイカのモンスターは、地元の漁師たちが『海の悪魔』と呼んで恐れていたものと特徴が一致していた。


「そんな……。一体どうやって……」


 サクラは戦慄していた。
 目の前のモンスターは政府お抱えの海軍が100人がかりで討伐に向かっても、返り討ちにされるような怪物である。

 間違っても武器すら持たない手ぶらの少年が仕留められるような相手ではなかった。


(いやぁ……。流石に今回ばかりは生きた心地がしなかったぜ……)


 生死の淵で綱渡りを繰り広げていた悠斗の心臓は、未だにバクバクと高鳴っていたままであった。

 潜水魔法が完成していなかったら勝負の行方は分からなかっただろう。
 いかに近衛流體術が万能であろうとも流石に水の中では、打撃攻撃の威力は激減してしまう。

 全ての格闘技の長所を相乗させることをコンセプトとした《近衛流體術》を習得した悠斗は、《銛突き》の技術に関してもベテラン漁師を上回る実力を誇っていた。

 悠斗は水魔法で生み出した氷を『銛』のように活用することによって、デビルクラーケンを半ば強引に 仕留めることに成功したのだった。


「――さぁ。どうやら勝負の結果がハッキリとしたようだな」


 肩に背負ったデビルクラーケンを堤防に打ち上げた悠斗は不敵な笑みを浮かべる。
 

「クッ……」


 完敗を喫したサクラの眼尻にはジワリと涙が滲んでいた。

 こんなはずではなかった。
 当初の予定では鮮やかに悠斗を打ち負かして、シルフィアにかかっている『洗脳』を解くことができるはずであった。


「ワタシはこのような結果……。絶対に認めません……!」


 プライドの高いサクラにとって、素直に敗北を受け入れることは難しかったのだろう。
 涙目のまま背を向けたサクラは、逃げるようにして悠斗たちの元を離れて行くのだった。

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