異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

不安な仲間



(んっ。スピカのやつ……何処に向かう気だ……?)


 続いてスピカが足を運んだのは、冒険者1階に設立されたギルド掲示板である。
 スピカは掲示板に張り出されていたパーティー募集の紙を見つめていた。


 QR5以上の火属性魔術師
 性別不問。報酬は応相談。

 一緒にシザークラブを倒しに行きませんか?
 前衛の斧使い@2名まで募集中。


 文字の読み書きが苦手なスピカには正確な内容を把握することができない。
 内容については、なんとなくで察しを付けるしかなかった。


(パーティー募集? なんだってそんな面倒なことを……)


 首を傾げる悠斗であったが、一般的には冒険者になって間もないルーキーが単独で狩りに出かけるのは危険とされていた。

 自分に自信のないスピカにとって初めての冒険からソロで動くことは、ハードルの高い行為だったのである。


「ダメダメ。オレたちには初心者を入れる余裕はないの」

「ああ。聖属性の魔術師は間に合っているから」

「キミ、ちゃんと張り紙読んできた? オレたちが求めていたのは斧使いだよ?」


 果敢に声をかけに行くスピカであったが、思うように話がまとまらない。

 そもそもQR1の自分がパーティーに参加するのは無謀だったのだろうか?

 諦めかけたスピカがソロで冒険に出掛けることを検討していた直後であった。


「ちょりーす! キミ、可愛いね!」 

 ヒラリー・ノーチス
 種族:ヒューマ
 職業:冒険者
 固有能力:なし


「やばっ。激熱だわ~! オレ、運命感じちゃったかも」


 ポッチョ・ブレスト
 種族:ヒューマ
 職業:冒険者
 固有能力:なし


 見るからに軽薄そうな2人組の冒険者が困っているスピカに声をかける。

 最初に声をかけてきたヒラリーは、体躯に黒色の革ジャケットを身に着けたガリガリに痩せた冒険者で、2番目に声をかけてきたポッチョは、ダボダボの作業用ズボンを腰の位置で履いている太った冒険者であった。


「……もしかして『可愛い』っていうのは私に対して言っているのでしょうか?」

「ププッ。当たり前じゃ~ん! 他に誰がいるって言うんだよー!」


 スピカの純心なリアクションを受けたヒラリーは満足気な笑顔を浮かべる。

 何故だろう。
 褒められているはずなのに全く『嬉しい』という感情が湧き上がってこない。

 スピカはそこで言葉というのは『何を言われるか』ではなく『誰に言われるか』が大切なのだと知ることになった。


「キミ、オレたちのパーティーに入らない? さっきからずっとギルド掲示板を見ていたよね」

「えっ。良いんですか?」

「ププッ。当たり前じゃ~ん! キミのような可愛い子ちゃんなら大歓迎だよ~!」

「う、嬉しいです! 私、頑張ります! 頑張りますから!」


 心の清らかなスピカは冒険者コンビの『下心』に気付かない。
 男たちに誘われたことは、冒険者として認められたようで純粋に嬉しかった。


(クソッ! こ、これはまずいことになった……!)


 本音を言うと今すぐにスピカのことを助けに行きたい。
 男たちの目的が純粋なパーティー勧誘でないことは明白だった。

 だがしかし。
 そんなことをしたら自立を目指しているスピカの決意に泥を塗ることになりかねない。


 もしもコソコソと後をつけまわっていることを知られたらスピカはどんな反応をするだろうか?


 最悪の場合、約束を破ったと見做されて嫌われてしまうことも覚悟しなければならない。


「お困りですかい~! アニキ~!」


 黒宝の指輪@レア度 ☆☆☆☆☆☆☆
(他人が所持する《魔眼》スキルの効果を無力化する)


 悠斗が頭を悩ませていたその時だった。
 面識のない1人の男が柱の影に隠れている悠斗に声をかける。


「……いや。誰だよ?」


 思わずツッコミを入れてしまう。
 やけに頭の顔が大きな、無精髭を生やした大男は一度会ったら印象に残りそうな特徴的な顔立ちをしていた。

 人の顔を覚えるのが得意でない悠斗であったが、少なくとも目の前の男とは初対面であることは断言できた。


「嫌だな~。オイラのことを忘れちまったんですかい」

「記憶にない。他を当たってくれ」

「だぁ――! 冗談の通じない人ッスね~! ギリィですよ。ギリィ。以前にユートのアニキに助けられた《百面相のギリィ》ですって!」


 男の名前を聞いた悠斗は過去の記憶を思い起こす。
 目の前にいる《百面相のギリィ》という男は、悠斗と同じシルバーランクの冒険者にして《彗星世代》のメンバーの1人である。


 変身@レア度 ☆☆☆☆☆☆
(過去に触れたものの姿に成り代わるスキル)


 過去に触れたものの姿に成り代わる《変身》のスキルを有したギリィは、かつて悠斗の姿に成りすまし悪事を働いていたことがあったのだった。




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