異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

エピローグ ~ 攻略済みのヒロインたち ~



 それから翌日のこと。
 無事に幻鋼流の修行の全工程を終了させた悠斗は、荷物をまとめて王都に帰る準備を始めていた。


「残念だな。個人的にはもう少しゆっくりして欲しかったのだが……」


 エアバイクに跨る悠斗の姿を目の当たりにしたユナは寂し気な表情を浮かべていた。


「何を言っているんですか。結局、俺と一度も戦ってくれなかったくせに」


 珍しく不貞腐れた声音で悠斗は言った。
 エルフの里を離れるに当たって悠斗が最も心残りにしていたのは、ユナと戦えなかったというであった。


「なんだ。そんなことを気にしていたのか」

「はい。全力のユナさんとは一度戦ってみたかったです」

「残念ながら、この里の中にいる限りキミと戦うことが出来ないかな。優れた師でいるためには、面子というものを大切にしなければならない。弟子に舐められてしまっては何を教えたところで身にならないからね」

「…………」


 そう言って語るユナの眼差しは、何処となく近衛流體術の師範であった祖父を彷彿とさせるものであった。

 一体何時頃からそうなってしまったのだろうか?
 中学に入って間もなくして祖父は、悠斗との1対1の実践訓練を避けるようになっていた。

 つまるところ悠斗は中学生の時点で師匠である祖父の実力を超えてしまったのである。

 けれども、それを認めてしまっては他の弟子たちに顔を立たない。
 だから祖父は『戦いを避ける』という苦肉の策を取らざるを得なかったのであった。


「そんな寂しそうな眼をしてくれるな。結局のところ私が目指しているのは一流の武闘家ではなく、一流の師だった、ということなのだろう」


 未だ隠している実力の底が知れない。

 ユナは思う。
 仮に全力で戦ったとしても悠斗に勝利することは絶対に出来なかっただろう。


(皮肉なものだな……。強くなればなるほど人が離れていく。彼が目指すのはそういう茨の道なのだろう)


 圧倒的な強さというものは、時に底知れない孤独を生み出すものである。
 幼い頃よりアークと親交のあったはその場にいた誰よりもそのことを知っていた。


「ユートさん! もう行ってしまうのですか……?」

「ああ。ソフィたちと離れ離れになるのは寂しくなるな」

「せ、せっかくですからもう少し修行を続けて行きましょうよ!」

「ウチも同じ気持ちや! ユートちんには、もっともっと色々なことを教えてもらいたいわ!」


 ソフィア&サリーは全力で悠斗を引き留めにかかる。
 男性経験に乏しい2人にとって悠斗と一つ屋根の下の生活は、充実と刺激に満ちたものであったのである。


「ごめんなさい。王都には待たせてしまっている人たちがいますから」


 既に予定していた3日という期日からは大幅に遅れが生じてしまっている。
 このまま3人の美女たちと修行生活を送る日々も捨てがたいが、悠斗には他に大切にしなければならない女の子たちが存在していたのだった。


「ふふ。気が向いたら何時でも戻って来ても良いのだぞ? 今度は修行とは関係のないところで夜の稽古をつけてやろう」

「「…………!?」」


 ユナの発言を受けたソフィア&サリーは重大な事実に気付く。


「ま、まさかユートさん。私たちの知らないところでユナ先生とも関係を!?」

「この浮気者っ――! ウチらだけではなかったのかっ――!?」


 図星を突かれた悠斗の表情は、みるみる内に青ざめたものになっていく。

 一線を超える行為にまでは至らなかったが、風呂に入る時は毎日のように裸のユナから性的なマッサージを受けていたのは事実である。


「……ユートくん。よもやキミ……私だけには飽き足らず2人まで手を出していたというのか?」


 ユナの一言が決め手になり、場の空気は急激に淀んだものになっていた。


(これから長期滞在をする時は、なるべくスピカとシルフィアを連れて行こう……)


 周囲に女の子がいない状況では、手を出してはならない女の子と関係を持ってしまいかねない。

 今回の遠征を通じて悠斗はそんな反省点を抱いていた。


「それでは3人とも。また何処かで会いましょう!」


 悠斗は爽やかな笑顔を浮かべながらもエアバイクのアクセルを入れると、全速力でエルフの里を後にする。


「ちょっ!? ユートちん!?」

「逃げやがるですか! この、卑怯者~っ!?」


 背後で罵詈雑言の嵐が聞こえたような気がしたが、悠斗は風の音で聞こえなかったことにした。


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