異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

VS ブレイクモンスター2



 キラーエイプ 脅威LV ???

 エラーメッセージ
(この魔物の情報を表示することができません)


 その全長は2メートル近くあるだろうか。
 突如として悠斗たちの前に出現したキラーエイプという魔物はシーフエイプをそのまま大きくしたかのような姿をしていた。

 だがしかし。
 外見は同じでもその戦闘力は天と地ほどの差が存在している。

 単純な潜在魔力量だけを比較するのならばキラーエイプは、過去に悠斗が戦った憤怒の魔王サタンを凌駕するものがあった。


「この魔物は……あの時と同じ……!」


 金色の光を放つ謎のモンスターの正体について悠斗は心当たりがあった。

 目の前のモンスターは、以前に岩山の洞窟で出現していたゴールデンオーガと共通点が多い。

 つまりキラーエイプという魔物は、アークの言っていた《ブレイクモンスター》と呼ばれる存在なのだろう。


「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

「待って! サリー! 早まらないで!」


 サリーの攻撃。
 サリーは持ち前の体のバネを駆使してキラーエイプに対して飛び蹴りを放った。


「ウキッ。ウキキキキ!」

「グッ……」


 だがしかし。
 邪神の魔力を受け継いだキラーエイプの身体能力は、世界最強の武闘家と呼ばれるサリーすら上回るものであった。


「サリー。勝手な真似は止せ」

「でも……。だって……。こいつがミカエルのことを……!」

「――いいから。黙って俺の言うことを聞いてくれ」


 以前までの女性に対して優しい普段の態度がウソのよう――。
 有無を言わさない気迫で命令を飛ばす悠斗の姿を目の当たりした


「ソフィ。お前の力ならミカエルを蘇生させることが出来るんだよな?」

「は、はい! 死後30分以内であれば。時間はかかりますが、たしかに治療は可能です」

「ならソフィはミカエルの治療。サリーは無防備になったソフィの護衛を頼んだ」

「把握しました」

「り、了解」


 悠斗の指示を受けてからの2人は素早かった。

 素直にキラーエイプの前から引き下がると、さっそくミカエルの治療を開始する。

 もともとレジェンドブラッドのメンバーはアークの命令を頼りに戦闘経験を重ねてきたため、個々の判断能力に関しては不安な面があった。


(ようやく分かりました。どうして私たちがユートさんに惹かれるのか……)


 思い返してみれば最初に出会った時から何故か他人という気がしなかった。


(窮地の時にこそ最大限にカリスマが発揮される。その類まれなる英雄気質が何処かアークに似ているのです……)


 ミカエルの治療にあたりながらも悠斗を見つめるソフィアの眼差しは、益々と熱気を帯びたものになっていた。


「さてと。かかってこいよ。エテ公」

「ウキッ。ウキキキキ!」


 挑発を受けたキラーエイプは悠斗に向かって飛びかかる。

 悠斗は紙一重のタイミングで攻撃を回避した――つもりであった。


「~~~~っ!」


 見えない壁のようなものに押し出された悠斗は、そのまま地面の上を転げまわることになる。

 それは以前にアークと対峙した時と同じ――。
 圧倒的な魔力差から生じる反発ダメージであった。


「――それなら!」


 そこで悠斗が使用したのは、幻鋼流の技術を応用して編み出したオリジナル武術、《ダブルグリップ・アクセル》である。

 螺旋状に編み込んだ魔力の糸を全身に張り巡らせて己の身体能力を最大限に引き出した《ダブルグリップ・アクセル》は、悠斗にとってこの一週間の修行の集大成とも呼べる技であった。


(凄い魔力コントロール……! 以前までのユートさんとはまるで別人……!)


 ソフィアは戦慄していた。
 悠斗の成長スピードは、幻鋼流が始まって以来の天才と謳われたサリーすらも遥かに凌駕するものであった。


「ウキッ! ウキキキキッ!」

「またそれか」


 キラーエイプは足の裏に最大限に魔力を込めて跳躍。
 超スピードの一撃によって悠斗の首を刎ねにかかる。


「二度も同じ技に引っかかるかよ」


 先ほどは魔力差から生じる反発によって体勢を崩されてしまったが、幻鋼流の技術によって肉体を強化した今となっては問題ない。

 ひらりと身を躱した悠斗はキラーエイプに対してカウンターの一撃を浴びせにかかる。


(……早い!)


 通常の相手ならば今の攻撃で勝負は決まっていただろう。

 だがしかし。
 膨大な魔力をスピードの強化に集中させたキラーエイプは、万全なタイミングで攻撃しても捉えきれなかったのである。


「凄すぎます。こ、これがユートさんの実力……!」


 そこから先は両者一歩も引かない攻防が繰り広げられた。

 キラーエイプの単調な攻撃パターンは既に見切っている。
 しかし、キラーエイプに触れるには僅かにタイミングが遅れてしまう状況であった。


「ユートさん……。一体何を……?」


 次に悠斗が取った行動はソフィアにとって俄かには信じられないものであった。
 何を思ったのか悠斗は――自らの両目を瞑り始めたのである。


(いける……! 敵の動きが手に取るように分かる!)


 幻鋼流を取得してからというもの悠斗は、大気中に流れる魔力の流れを精密に感じ取れるようになっていた。

 自らの視界を塞いだのは魔力の流れにのみ集中することで、キラーエイプの速度に対応しようと考えたからである。


「キキッ!?」


 この試みが功を奏したのだろう。
 悠斗の拳はついに相手の身体を翳めて、キラーエイプの尻尾を掴むことに成功する。


「……アカン! 尻尾に触れただけやと大してダメージを与えることはできへん!」


 通常の武術であればサリーの言葉は正しかっただろう。

 だがしかし。
 どんな状況からでも逆転の一打を放つことができる汎用性の高さが《近衛流體術》の強みである。

 全ての格闘技の長所を相乗させることをコンセプトとした《近衛流體術》を習得した悠斗は、《ハンマー投げ》に関してもオリンピックのメダリスト級の才能を有していた。

 キラーエイプの尻尾を掴んだ悠斗はそのまま、《ハンマー投げ》の要領で回転を始める。


「キキキキッ――!」


 強烈な遠心力によって体の自由を奪われたキラーエイプは、そのまま悠斗の周囲をグルグルと回ることになる。

 限界まで遠心力が乗ったタイミングで悠斗は、キラーエイプの体を思い切り地面に叩きつける。


「グギギギッ!」


 悠斗の意表を突いた攻撃により脳震盪を起こしたキラーエイプは、完全に逆上せ上がっていた。

 悠斗は止めとばかりに、地面で寝ているキラーエイプに対して渾身の一撃を与える。


 破拳。


 人体の《内》と《外》を同時に破壊することをコンセプトに作ったこの技を悠斗は、そう呼ぶことにしていた。
 高速で拳を打ち出しながらも、インパクトの瞬間に腕全体に対してスクリューのように回転を加えるこの技は、悠斗にとっての《奥義》とも呼べる存在であった。

 標的の体内にその衝撃を拡散させるこの技は、生物の骨格・臓器・筋肉の全てを同時に破壊することを可能にしている。


「グギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイィィィ!」


 ダメ押しの一撃を受けたキラーエイプは、断末魔の叫びを上げながらも肉体を弾けさせていく。
 その体からは、肉眼で目視できるほどの膨大な魔力が霧散していた。

 悠斗はそこでステータスを確認。


 近衛悠斗
 固有能力: 能力略奪 隷属契約 魔眼 透過 警鐘 成長促進 魔力精製 魂創造 魔力圧縮 影縫
 魔法  : 火魔法 LV4(12/40) 水魔法 LV6(10/60)
       風魔法 LV5(13/50)  聖魔法 LV6(37/60)
       呪魔法 LV6(6/60)
 特性  : 火耐性 LV6(9/60) 水耐性 LV3(0/30)
       風耐性 LV7(56/70)


 風耐性の項目が驚くほど上がっていた。
 どうやらキラーエイプから取得できるスキルは風耐性プラス200らしい。


(悔しいが……アイツの言うことを聞かなかったら苦戦していただろうな)


 今回勝利することが出来たのは、幻鋼流によって魔力量によるハンデを補えたことが大きい。


 もしもアークに出会う前に、ブレイクモンスターと戦うことになっていたら勝敗は分からなかっただろう。


 闇夜に向かって溶けていく魔力の粒子を眺めながらも悠斗は、自分に足りていなかったものを思い知るのであった。




「異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く