異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

VS 異世界人2



「……チッ。逃げ足の速いやろうだな」

 和也のことを引き連れて悠斗が向かった先は、ケットシーの村の外れにある雑木林の中であった。

 獣化の固有能力を使用した和也は、単純な移動スピードだけで言うと悠斗のそれを上回っていた。

 道すがら。
 和也は悠斗に対して何度も拳を振りかざしてきた。

 けれども、柔よく剛を制すとはよく言ったものだろう。
 悠斗の体捌きは、まるで宙を舞う花びらのように捉えどころがない。

 完全に命中したと思った攻撃を繰り返し躱され続けた和也は、怪訝な表情を浮かべていた。


「さて。この辺りで良いか」


 雑木林の中をある程度、進んだところで悠斗は不意の立ち止まる。

「……ハッ! ようやくオレに殺される気になったか」

 和也はそう啖呵を切ると、悠斗に向かって飛びかかる。

「お前、日本人だろ?」

 悠斗の言葉を聞いた途端。
 和也の動きがピタリと止まった。

「……あ?」

「その反応。どうやら図星みたいだな」

 悠斗は自らの予想が正しかったこと確信すると矢継ぎ早やに質問をぶつける。

「なあ。教えてくれよ。お前をこの世界に召喚したのは誰なんだ?」

「……ッ。知らねえよ! んなもん!」

 和也は明らかに動揺した素振りを見せるが、グッと感情を抑え、悠斗に向かって大きく拳を振りかざす。

 獣化の固有能力を発動させた和也の打撃は、岩すら砕くような強烈なパワーを秘めていた。

 だがしかし。
 次の瞬間、和也の身体は大きく宙に投げ出された。

 全ての格闘技の長所を相乗させることをコンセプトとした《近衛流體術》を習得した悠斗は、《柔道》についても非凡な腕前を誇っていた。

 その中でも悠斗が最も得意としていたのは《空気投げ》と呼ばれる技である。

 足腰にはまったく触れずに、体の捌きだけで、相手を投げ飛ばすこの技を実践的に使いこなすことが出来るのは、一部の達人に限るとされている。


「ウグッ!」


 獣化のスキルにより3メートルを超える体躯にまで巨大化した和也は、背中から勢い良く落下して呻き声を上げる。

 和也は自分が一体何をされたのか分からなかった。
 気が付くと、視界がグルリと回転して、空を見上げていた。

「なら質問を変えようか。お前はどういう経緯でこの世界に召喚されたんだ?」

 仰向けに伏せた和也のことを見下しながらも悠斗は告げる。


「うるせえええぇぇ!」


 激昂した和也はすぐさま体勢を立て直して反撃に移る。

 そこから先は何度やっても同じ結果であった。

 攻撃を仕掛ける和也に対して悠斗の《空気投げ》が炸裂。
 和也の巨体は、繰り返し再生の動画を見ているかのように宙に舞い続ける。

 単純な身体能力だけで言えば、獣化の固有能力を発動された和也は悠斗にも勝る部分が多い。

 けれども。
 いくら力が強くても武道の基本を理解していない相手を翻弄するのは、悠斗にとって赤子の手を捻るほど容易なことであった。


「……クソッ!」


 獣化の固有能力は身体能力を大幅に向上させることが出来る反面。
 体力の消費が増大するというデメリットがある。

 十数回に渡り地面に叩きつけられた和也は、獣化を維持することが敵わなくなり、人間の姿に戻る。


「お前……その右腕……!?」


 これまでは獣化のスキルにより体毛に覆われていた故に気付かなかった。
 悠斗はそこで和也の右腕に《隷属契約》の固有能力により発現される《呪印》を発見する。

 そのとき。
 悠斗の脳裏に1つの疑問が浮かび上がる。

 これまで悠斗は、複数回に渡り和也に対して異世界に召喚された経緯に関する疑問を投げかけてきた。

 けれども。
 どんなに質問をしたところで和也からまともに返答をされたことはなかった。

 もしこれが『言わない』のではなく『言えない』のだとしたら――。
 隷属契約の強制力を用いれば、奴隷となった人間に特定の情報を漏らさせないようにすることは容易である。

 だとしたら一体、誰が情報の隠蔽を行っているのか?

 悠斗が一連の事件の裏に潜む人物の存在に気付きかけたそのときであった。


「んだよ。お前かぁ。人の玩具をゴロゴロと転がして遊んでいるっていうのは……」


 ベルフェゴール
 種族:悪魔
 職業:七つの大罪
 固有能力:転移 懐柔 口寄せ 代眼 隷属契約


 1人の魔族が欠伸を噛み殺したような面持ちで悠斗の前に現れた。




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