強大すぎる死神は静かに暮らしたい

犬飼ゆかり

死神は聖女と会う


それは神聖国から帰って一ヶ月ほど経った頃
勇者ちゃんが来た

「ラトさん、聖女様が来て欲しいと…」

「なんで?」

「さぁ?ただ会いたいとしか…」

聖女が会いたがっている、理由は分からない

「いいよ、じゃあ転移魔法で行こっか」

「転移魔法…そんな…それって御伽噺の…」

「メア、ちょっと聖女に会いに行くけど一緒に来る?」

「私は…お留守番してます…」

「そっか」

メアはあれから神聖国の話になると元気が無くなる
なんでラト様は怒らないのですか?と聞かれた

違うよ、怒れないんだ


「さてと、行ってくるよ」

「はい、行ってらしゃい」

「ラトさん、転移魔法って本当に大丈夫なの?手だけ転移しなかったとか無い?」

「もしかしたらあるかもね」

「やっぱ、転移魔法じゃなくて…」

「嘘だよ」

「え、嘘なの?あ、もう魔法陣が…」








「はぁ…生きて帰れた……」

勇者ちゃんがそんな大げさな事を言う

「じゃあ城まで案内よろしく」





城に入る、この城は中も真っ白だ

ああ、前来た時と変わらないなぁ

あれ?前来た時あったっけ?

少し歩いたら目の前に女の子がいた
金色の髪に金色の眼、優しそうな顔に、勇者ちゃんと同じ匂い神に愛されてる匂い

「こんにちは、私はレナ、人からは聖女なんて呼ばれてます」

「こんにちは、僕はラト、人からは死神なんて呼ばれてます」

「では、私の部屋で話しましょう、付いてきてください」

聖女ちゃんの部屋まで案内される、聖女ちゃんの部屋は白と金が基調とした王室のような部屋だった、さすが聖女と言える

侍女が茶を淹れ終わると退室を指示する

「さて、本題に入りましょう、私がラト様にして欲しい事は一つです、聖剣を探して持ってきてください、報酬は望むだけ出しましょう」

聖剣…聖剣って神が勇者にあげる剣だよね

「まず、それはさ、どうして死神に頼むの?」

「貴方が強大な力を持つ人神だからです」

人神か…懐かしい言葉を知ってるね

「次に、どうして勇者は聖剣を持っていないの?」

「それは色々な説があります、聖剣は別の所に出現したとか、神が忘れてしまったとか、勇者が女だからとか」

違うよ
そうやって困ってるのを見る為に聖剣を出ていないんだよ
聖女も勇者も神の暇つぶし
今、見ているんだろう、どうせ

「違うよ、正解は神に祈るんだよ、もう一回ね」

「え?」

「神よ、私を愛しているなら証明をせよ、みたいにね」

神の建前は『愛している』だからこう言えばくれるんじゃない?聖剣

「興味深い話ですね、後で試してみます」

「じゃあ報酬はS級冒険者のレトに振り込んでおいて」

「え?わ、分かりました…?」

「じゃあ、帰るよ」

「ちょ、ちょっとラトさん?まだ全然話し終わってないと思うんだけど…」

「聖剣が欲しいだけでしょ?、なら神に祈ればいい、聖女と勇者は神に愛されているんだよ」

「あ、ちょ、ちょっと!」







「ただいま」

「ラト様!おかえりなさい」

ああ、やっぱり僕はあんな白い部屋より木の部屋の方が好きだ、家具もあんなにいらない、必要なものだけでいい
そんな事を思いながら別の事を思う



やっぱり神様は意地が悪いなぁ





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