召喚された賢者は異世界を往く ~最強なのは不要在庫のアイテムでした〜

夜州

第3話 アルトリアの実家

 シャルの姿を前に、片膝をついている兵士たちの中には、涙を流している者もいた。
 皆、喜びに満ちた表情をしている。きっとそれだけこの国の王族は慕われている現れでもあった。
 シャルは兵士たちに立ち上がるように伝える。

「皆さん、この街を守ってくれてありがとう。私はエスフォート王国へと出向き、『黄昏の賢者』であられるナタリー様を探しに行ってまいりました。そしてーーこうしてこのルネット帝国のために同行していただきました」
「ナタリーじゃ。わしが居れば敵がいくらいても問題ないじゃろ。しかも今回はーー強力な助っ人も来ているのでな」

 ナタリーはそっと俺に視線を送る。
 それと同時に大きな歓声が鳴り響く。

「ナタリー様ってあの伝説のっ!?」
「ナタリー様が挑んだ戦いは全勝と伝説になっているぞっ!」
「これで勝てる!!」

 兵士たちからは歓喜の声があがった。

 ……ナタリーそんなに有名だったんだな。どう見ても食いしん坊の幼女にしか見えないけど。
 胸を張り偉そうに踏ん反り返るナタリーを見て思わずクスッと笑ってしまう。
 笑ったのが気づかれたのか、ナタリーはジト目で俺に視線を向けてきた。

 そんな中、門の上で指揮を取っていた狼の獣人の兵士が近づいてきた。
 三〇代であろうか、鍛えられた身体で他の兵士たちと覇気が全く違う。きっと隊長なのかもしれないな。
 そしてシャルの前に立ち膝をつき頭を下げる。

「シャルロット皇女殿下、よくぞご無事で……。この街の兵をまとめております、レイド・フォン・リナックスです」
「リナックス卿、よくぞリアンの街を守ってくださいました。ーー皇都のほうはすでにジェネレート王国に堕ちてしまっていると聞いています。このリアンを拠点に取り戻すことができたら……」

 話しているシャルも拳を強く握りしめる。きっと両親や国民のことを考えているのかもしれない。

「まずは長旅でお疲れてしょう。屋敷でゆっくりとなさいませ。……それで、そちらの方は?」

 レイドが俺へと視線を送る。俺は未だに剣を人質バネットに当てたままである。

「この人はトーヤ様と言って、私たちの命の恩人です。そしてーー」

 シャルは頬を染める。
 ……アレは言うなよ? こんな時に問題ある発言をされても混乱が起きるだけだ。

「ーーーー将来の旦那様になるお方です」

 一番言ってはいけない言葉をシャルはきっちり言い切った。
 これでもかっていうほどきっぱりと。
 シャルの言葉に目を大きく見開くレイドと、額に手をあて、天を仰ぐ俺。

「…………そ、そうですか……。それではご一緒にご案内いたします。おい、誰か人質を運べ!」

 少し動揺しながらもレイドは兵に指示をだす。そして、数人が前に出て俺に向かってきたので、バネットを引き渡した。

「あなた方のおかげでこのリアンは救われました。本当に感謝しています」

 兵は俺に向かって頭を下げ、バネットを連行していく。

「私の屋敷があるからそこに行きましょう。場所はわかっています」

 とりあえずの拠点は、この街に屋敷があるアルの家となった。
 アルと兵士が御者台に乗り込み、シャルとナタリーは馬車へと乗り込んだ。
 俺も一緒に御者台へと乗ろうとしたら「将来の王配にそんなとこ乗せられません」と断られ、馬車へと乗り込んだ。
 ……王配って何? 聞きなれない言葉に首を傾げながら二人の対面に座る。
 初めて乗ったけど、馬車の中は振動は吸収され座り心地もよかった。

 馬車はアルの案内で街を進んで行き、二〇分ほどで屋敷へと到着する。
 扉が開けられ馬車から降りると、目の前には思わず見上げてしまうほど立派な屋敷が建っていた。
 街で住んでいた屋敷よりも数倍の大きさで思わず口がポカンと開いてしまう。

「……えっ!? ここが、アルの家……?」
「えぇ。そうですよっ! 今はお爺様とお兄様が住んでいます」
「お爺様……? もしかして……」

 アルの家である屋敷は、周りにあるいくつかある屋敷を見ても比べ物にならないほど大きい。

「えぇ、お爺様がこの街の領主です。兄と一緒に運営している筈です」

 近衛騎士だったから騎士の家系かと思っていたら全く違っていた。
 そして連絡がすでにいっていたのか、屋敷の扉の前には、すでに立派な羊角を生やした老人と、同じく青年が立っており、その横にはメイドたちが並んでいる。
 老人と言っても、服は筋肉で押し上げられ、いかにも武人という装いであった。
 アルはその老人の前に立ち、頭を下げた。

「お爺様、ご無沙汰しております。シャルロット皇女殿下とともに戻ってまいりました」
「うむ、二人とも無事で良かった。よく帰ってきたのぉ。シャルロット皇女殿下も無事で何よりです。屋敷でゆっくりと寛いでください。さぁ皆さんもどうぞ中へ」

 老人は目尻を下げ優しそうな声で答える。
 コクヨウは兵士に連れられて厩舎へと移動していき、俺たちはメイドの案内で大きな応接室へと案内された。

 
 そして、三〇分後。
 俺は訓練場の真ん中で剣を持ち、数人の騎士に剣を向けられていた。
 ……なんでこうなる。

 

 
 

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コメント

  • ノベルバユーザー128919

    最高です!

    0
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