チートなはぐれ魔王の規格外な学園生活

つくつく

17懺悔

彼女の剣を持っている手に力が入る。
そして、こちらを強く睨むと、剣を振り上げる。剣が迫ってきたのに対し、魔王は何もしなかった。
剣は、魔王にあたる寸前で止まる。
エリカ「なぜ防がない!…私と戦え!」
魔王「…それは出来ない」
それにエリカは怒鳴る。
エリカ「村の人を殺しておいて私は殺せない?ふざけるな!」
魔王「…殺したいなら殺せ。お前に殺されるなら本望だ」
そこでもう一度剣を振り上げる。そして、振り下ろすがまた当たらない。こちらを見上げる彼女は涙でぐしゃぐしゃだ。剣を握る手は震えている。
エリカ「どう…して、どうして助けたのよ!」
そう言って剣を落とし、胸を殴ってくるが手を握るのに力が入りすぎていて、それほど痛くない。
エリカ「ねぇ。どうしてよ!どうしてなの!村で私を殺していてくれればこんな…こんな苦しい思いはしなくてすんだのに!」
そう言って苦しそうに自分の胸の前で手を握る。
エリカ「私があなたに挑んだときだってそう!あの時どうして殺さなかったの!魔法から私を庇ってくれた時だって!この前だって、基本待機だって言ったのに出てきて!」
そこでエリカは両手で魔王の服を掴む。
エリカ「どうしてよ!…答えてよ!」
そう言って魔王の胸に顔を埋め子供のように泣き喚くエリカを魔王は何も言わずに。いや、何も言うこともできずにそっと優しく抱きしめた。
それからどれだけ時間が流れただろう。エリカは落ち着きをだいぶ取り戻した。
隣同士で外に座り壁に寄りかかっているとエリカは目元が赤くなった目でこちらを見た。
エリカ「…ねぇ魔王。何があったの」
魔王「…」
エリカ「あなたは馬鹿だけど、意味もなく誰かを殺すような魔族じゃないわ。…だから話して」
それに魔王は諦めたように息を吐くと空を見上げた。そして、意を決したように話し始めた。


「この役立たずめ!この魔王の子でありながら魔法の一つも使えぬのかぁ!」
そう言って、まだ幼い俺は殴られた。いつもの光景を他の魔族は見て見ぬ振り。それも当然だ。魔王とは、一国の王のようなものだ。4人の魔王とその上に立つ、魔族の統率者である俺の父親は使えない俺に毎日暴力を振るってきた。
希望なんてもうー。
そんな時だった。
「人間が攻めてきたぞぉ!」
そんな声とともに人間がどんどん攻めてきた。俺の父親はそこで殺された。俺の元にも一人の人間がやってきた。全身に俺の父親の血を含め、様々な血を浴びた女は、傷だらけの俺を見て。
「一緒に来るか?」
と声をかけてきた。そして、俺はその一筋の希望に手を差し伸ばした。
女は俺を森の中にある家に入れると、
「そう言えば名前をまだ聞いてなかったなぁ」
「俺は呼ばれた事がないから覚えてない」
「それは困るなぁ。…じゃあ、、、お前はシュウだ」
「シュウ?」
「そうだ!集まるって意味でシュウだ!大丈夫だ。もうお前は一人じゃない」
シュウ「…それであんたは?」
「ん?まだ名乗ってなかったか。私はフェリドだ。よろしくなシュウ」
シュウ「…フェリドお前勇者なんだろ?俺魔族なんだけど一緒に住んでていいのか?」
それにフェリドは、にっと笑うと
フェリド「親子が一緒に住んでちゃ悪いのかよ」
シュウ「親子?俺らは、親子なのか?」
それにフェリドは、頭を撫でながら
フェリド「あぁ。私とお前と村にいる旦那と娘と」
シュウ「…家族がいるのか?」
フェリド「なんだぁヤキモチか」
そう言って飛びかかってきた。
シュウ「おい、や、めろ!」
それにフェリドは声を上げて楽しそうに笑っていた。

ーとても幸せだった。ー

フェリド「おいシュウ!お前私の食いもんまた勝手に食ったなぁ!」
シュウ「もごもご!(食ってねぇよ!)」
フェリド「そんなリスみたいな顔で言い逃れできるかぁ!」
そう言ってフェリドに抱きつかれていると
コンコンっとノックが鳴った。そして、すぐに扉が開く。かなり焦っているようだ。
「誰かぁ!助けてくれぇ!」
そう言って40後半ぐらいの男が入ってきた。フェリドは、立ち上がり男の元に歩いて行くと
フェリド「どうした?何事だ」
「魔族だ魔族が俺らの仲間を襲ってるんだぁ。助けてくれよぉ」
それにフェリドは、頷き
フェリド「シュウ。私は出かける。お前は出るなよ」
そう言い残し男と共に出て行った。しばらくしてフェリドが帰ってきた。
フェリド「おぉ。出迎えか?シュウ」
シュウ「そ、そんなんじゃねぇ」
フェリド「照れやがって可愛い奴め」

それから数日後。男がもう一度訪ねてきた。お礼だと行って食べ物をくれた。
シュウ「おーいフェリド。俺のー」
と言って、シュウが出てきてしまったのが唯一の誤算だった。
フェリド「馬鹿!出るな!」
とフェリドが怒鳴るが遅かった。男がこちらを見てしまった。
しかし男はふっと笑うと
「フェリドさん。大丈夫です。私は今何も見ていません。恩人に対し邪な気持ちはありません。では私はこれで。」
と言って男が立ち去った。
シュウ「フェリドごめん」
それにフェリドは、いつも通り笑うと
フェリド「気にするな」
そう言って頭を撫でた。











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