村人が世界最強だと嫌われるらしい
最善策 4
―烈毅が、デッド達と接触する五分前のこと。
「よし、ここら辺でいいか」
烈毅は一旦足を止め、"異次元アイテムボックス"の中に入れていたミーシュを取り出す。ミーシュの口は、モグモグと何かを食べている様だったが、もうこの際時間が無いため、無視した。
「ここからは二手に分かれる。俺があいつらと接触するから、お前は隠れながら動いて、キュウを回収すること。多分、戦闘になるからあんまり焦って動かなくていいぞ」
「わかった。でも、もし失敗したら?」
「いや、多分しないと思う」
「なんで?」
烈毅は、キッパリとそう言い切り、その自信がどこから沸いてくるのかわからず、ミーシュは首をかしげながら訊く。
「なんでって……俺がいるからかな」
「なにそれ、心配でならないんだけど……」
「まぁまぁ。ミーシュは、キュウを取り返す事だけを考えてくれればいい。もし、上手くキュウを取り返せたら、何か合図をくれ」
「……わかった。でも、あまり期待はしないでね」
「わかってるよ」
烈毅はミーシュの肩をポンッと優しく叩き、すぐに連中の元へ向かっていった。ミーシュは、ただ肩を触られただけなのに、何故だか力が沸いてくるのきがした。
「よし、頑張るぞぉ!」
一人で拳を上に突き上げ、ミーシュも魔法を駆使しながら連中の元へと向かう。
―そして今に至る。
ミーシュは、幻惑魔法を自分自身に掛け、周りの風景と一体化した状態となり、更に一定時間音を消す魔法を掛け、デッド達の元へ近寄って行く。
これは、誰にも見られず、誰にも聞こえない。たとえ、それが烈毅でも。
デッド達の合間を、針を縫うように軽快に進んで行き、キュウを抱えるデッドの前へと辿り着く。
まだ気を失っている様子のキュウは、ピクリとも動かない。
今助けるからね、キュウちゃん。
誰にも聞こえない呟きをすると、まずはデッド達に幻惑魔法を掛ける。デッド達の目には、今見ていた風景と何一つ変わらない物を映し出されている。ただ一つ、変えたものと言えば、右手に抱えているはずの存在だ。
幻惑魔法で、キュウを持っていると錯覚をさせる。現実を見ているミーシュからしたら、デッドが何も抱えていないのに、あたかも誰かを持っているかの状態に見え、幻惑魔法を掛けられているデッドからしたら、何一つ状態は変わらないと思い込んでいる。
キュウを回収したミーシュは、そのまま何事もなかったかのように歩いていく。そして、物陰に隠れて、自分に掛けた魔法を解く。
そして、キュウを取り返したミーシュは、空に向けて光魔法を放つ。バスケットボール程の大きさのその光魔法は、無音のまま空中に滞在し、そして音もなく消え去る。
「これで、私の役目は終了ね」
あとは、烈毅を待つだけとなった。
一方烈毅は、かなりの苦戦を強いられていた。
ミーシュの合図を探すために、戦いの最中でもほかの場所に常に気を配らなければならず、尚且つ目の前の強敵を相手にしながらだと、さすがの烈毅でも無理がある。
何千もの手数の攻撃が繰り返される中で、命中した攻撃はたったの一発。その一発は、烈毅が最初に入れた蹴り攻撃だけだ。残りの攻撃は、全て防がれていた。
決して、劣勢なわけではない。寧ろ、攻撃の手数は烈毅の方が多い。ただ、カゲロウが想像よりも遥かに強かったため、攻撃を上手く当てられないのだ。
だが、その戦いも間もなく終わる事となる。
よく考えれば、どちらが勝つのかはハッキリと分かるだろう。それは、余裕がある方が勝つのだ。他を気にする余裕がある方。そう言えば分かるだろう。
数秒の中で、数百もの拳を交えている中、烈毅は、視界の右端に、小さな光の玉が空に打ち上げられたのを確認する。
「合図だ」
そう呟き、烈毅はもう周りを気にすることを必要もしなくなり、目の前の戦いに一点集中をする。
そこからは、カゲロウが圧倒的なまでに押され負け、いくつもの攻撃を食らってしまう。
一発目は右肋、二発目は腹部ど真ん中、三発目は顔面、とその後も幾つもの攻撃を食らっていく。
そして、攻撃のダメージの蓄積はすぐに現れ、カゲロウは立つことが困難となり、足元がふらつき、片膝を付いて、荒い呼吸をしてしまう。
「はぁ……はぁ……な、なぜ急に攻撃が当たるように……」
烈毅はカゲロウに視線を合わせるようにしゃがみ込む。
「簡単だ。俺が少・し・本・気・を・出したからだ」
その答えに驚きを隠せなかったカゲロウは、諦めたような顔になり、その場には仰向けに倒れ込む。
「ははは……少し本気をだした、か……俺は最初から、負けていたのか」
「いや、まじで強かった。こんなにワクワクした戦いは久しぶりだったよ」
「ワクワク? ……お前、もしかしてこの戦いを楽しんでいたのか?」
「え、お前は楽しくなかったの?」
更にその答えに驚愕し、人村烈毅という人物が、どういうものなのか、カゲロウには分からなくなり、それと同時に興味が沸いてきた。
「ふふふ……ははははははは! 面白い! あぁ、楽しかった。この戦いはとても楽しかった! よし、じゃあお前の約束に従おう!」
「ああ。何故、領土を拡大したいのかを教えてくれ」
「簡単だ。誰もが望むような事を、過激派のリーダーが言ったからだ」
「世界征服……か」
「そうだ」
「なぜそんなもののためにキュウが必要なんだ?」
「彼女には、ある力があるんだよ。とても強大な力がな」
「力?」
「ああ。九尾の力がな」
「よし、ここら辺でいいか」
烈毅は一旦足を止め、"異次元アイテムボックス"の中に入れていたミーシュを取り出す。ミーシュの口は、モグモグと何かを食べている様だったが、もうこの際時間が無いため、無視した。
「ここからは二手に分かれる。俺があいつらと接触するから、お前は隠れながら動いて、キュウを回収すること。多分、戦闘になるからあんまり焦って動かなくていいぞ」
「わかった。でも、もし失敗したら?」
「いや、多分しないと思う」
「なんで?」
烈毅は、キッパリとそう言い切り、その自信がどこから沸いてくるのかわからず、ミーシュは首をかしげながら訊く。
「なんでって……俺がいるからかな」
「なにそれ、心配でならないんだけど……」
「まぁまぁ。ミーシュは、キュウを取り返す事だけを考えてくれればいい。もし、上手くキュウを取り返せたら、何か合図をくれ」
「……わかった。でも、あまり期待はしないでね」
「わかってるよ」
烈毅はミーシュの肩をポンッと優しく叩き、すぐに連中の元へ向かっていった。ミーシュは、ただ肩を触られただけなのに、何故だか力が沸いてくるのきがした。
「よし、頑張るぞぉ!」
一人で拳を上に突き上げ、ミーシュも魔法を駆使しながら連中の元へと向かう。
―そして今に至る。
ミーシュは、幻惑魔法を自分自身に掛け、周りの風景と一体化した状態となり、更に一定時間音を消す魔法を掛け、デッド達の元へ近寄って行く。
これは、誰にも見られず、誰にも聞こえない。たとえ、それが烈毅でも。
デッド達の合間を、針を縫うように軽快に進んで行き、キュウを抱えるデッドの前へと辿り着く。
まだ気を失っている様子のキュウは、ピクリとも動かない。
今助けるからね、キュウちゃん。
誰にも聞こえない呟きをすると、まずはデッド達に幻惑魔法を掛ける。デッド達の目には、今見ていた風景と何一つ変わらない物を映し出されている。ただ一つ、変えたものと言えば、右手に抱えているはずの存在だ。
幻惑魔法で、キュウを持っていると錯覚をさせる。現実を見ているミーシュからしたら、デッドが何も抱えていないのに、あたかも誰かを持っているかの状態に見え、幻惑魔法を掛けられているデッドからしたら、何一つ状態は変わらないと思い込んでいる。
キュウを回収したミーシュは、そのまま何事もなかったかのように歩いていく。そして、物陰に隠れて、自分に掛けた魔法を解く。
そして、キュウを取り返したミーシュは、空に向けて光魔法を放つ。バスケットボール程の大きさのその光魔法は、無音のまま空中に滞在し、そして音もなく消え去る。
「これで、私の役目は終了ね」
あとは、烈毅を待つだけとなった。
一方烈毅は、かなりの苦戦を強いられていた。
ミーシュの合図を探すために、戦いの最中でもほかの場所に常に気を配らなければならず、尚且つ目の前の強敵を相手にしながらだと、さすがの烈毅でも無理がある。
何千もの手数の攻撃が繰り返される中で、命中した攻撃はたったの一発。その一発は、烈毅が最初に入れた蹴り攻撃だけだ。残りの攻撃は、全て防がれていた。
決して、劣勢なわけではない。寧ろ、攻撃の手数は烈毅の方が多い。ただ、カゲロウが想像よりも遥かに強かったため、攻撃を上手く当てられないのだ。
だが、その戦いも間もなく終わる事となる。
よく考えれば、どちらが勝つのかはハッキリと分かるだろう。それは、余裕がある方が勝つのだ。他を気にする余裕がある方。そう言えば分かるだろう。
数秒の中で、数百もの拳を交えている中、烈毅は、視界の右端に、小さな光の玉が空に打ち上げられたのを確認する。
「合図だ」
そう呟き、烈毅はもう周りを気にすることを必要もしなくなり、目の前の戦いに一点集中をする。
そこからは、カゲロウが圧倒的なまでに押され負け、いくつもの攻撃を食らってしまう。
一発目は右肋、二発目は腹部ど真ん中、三発目は顔面、とその後も幾つもの攻撃を食らっていく。
そして、攻撃のダメージの蓄積はすぐに現れ、カゲロウは立つことが困難となり、足元がふらつき、片膝を付いて、荒い呼吸をしてしまう。
「はぁ……はぁ……な、なぜ急に攻撃が当たるように……」
烈毅はカゲロウに視線を合わせるようにしゃがみ込む。
「簡単だ。俺が少・し・本・気・を・出したからだ」
その答えに驚きを隠せなかったカゲロウは、諦めたような顔になり、その場には仰向けに倒れ込む。
「ははは……少し本気をだした、か……俺は最初から、負けていたのか」
「いや、まじで強かった。こんなにワクワクした戦いは久しぶりだったよ」
「ワクワク? ……お前、もしかしてこの戦いを楽しんでいたのか?」
「え、お前は楽しくなかったの?」
更にその答えに驚愕し、人村烈毅という人物が、どういうものなのか、カゲロウには分からなくなり、それと同時に興味が沸いてきた。
「ふふふ……ははははははは! 面白い! あぁ、楽しかった。この戦いはとても楽しかった! よし、じゃあお前の約束に従おう!」
「ああ。何故、領土を拡大したいのかを教えてくれ」
「簡単だ。誰もが望むような事を、過激派のリーダーが言ったからだ」
「世界征服……か」
「そうだ」
「なぜそんなもののためにキュウが必要なんだ?」
「彼女には、ある力があるんだよ。とても強大な力がな」
「力?」
「ああ。九尾の力がな」
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