村人が世界最強だと嫌われるらしい

夏夜弘

理不尽な戦争 3

「…………んぉっ、起きた」

 烈毅は目を覚ます。日はもう落ち、時刻は深夜十二時。この時間に目が覚めてしまうと、このあとなかなか眠れない。

「ちっ……変な時間に起きちゃったよ」

 部屋を出て、隣の部屋の様子を見に行く。まだ四人は気持ちよさそうに寝ている。

「こいつら、いつまで寝てんだよ……」

 もうかなりの時間寝ている。なのに、ピクリとも動かず、また起きる様子もこれっぽっちもない。

 烈毅は、何もすることがない。ビックリするぐらいに、本当に何も無いのだ。

 モンスターを倒しに行こと言っても、もう既にレベルは最大。これと言って試したいことも無い。粗方昔にやってしまっているため、もう自分の事は把握済みなのだ。

「にしても、昼間の狩人が言ってた事がやっぱ気になるよなー」

 ベルム国が動き出す。烈毅は他の国には一歩も踏み入れたことが無い。もしかしたら、他の国にも烈毅のような奴が潜んでいるかもしれない。

「それもそれで、面白そうだけどなぁ〜」

 烈毅はそんな独り言を呟く。この時間は、外は基本誰もいない。皆眠っているか、武器の手入れをしているかのどれかだ。

「外はもう静かだしなぁ……」

 そう思った矢先だった。

 突然激しい揺れが爆音と共に起こる。

「な、なんだ!?」

 烈毅はまだ状況が把握出来ない。この町は、言い方は悪いが、そこまで重要な町ではない。攻められる理由なんてほぼ皆無なのだ。

 それなのに、外からは爆音。烈毅は、急いで隣の部屋へ再び移動し、安全確認をする。
 扉を勢い良く開け、大声で確かめる。

「おいお前ら大丈夫か!?」

 だが返事が無い。あれほどの爆音と揺れがあったにも関わらず、四人は起きる気配など毛頭ない。

「なんで起きない!?」

 烈毅はルノの顔をぺちぺちと叩くも、なんの反応も無い。昨日は無理やり寝かせたものの、その時はイビキをかいていた。にもかかわらず、今は呼吸をするだけだ。

「なんで……まさか!?」

 その瞬間、窓ガラスが盛大に割られ、何人かの冒険者が突入してくる。数は二人。どちらも、仮面を付け、背中にダガーを携えた冒険者だ。

 その二人は、目の前に眠っていたレーナとミーシュに、ダガーを突き立てようとする。
 烈毅は、相手が動き出した時にそれを瞬時に理解し、ダガーを振り上げた瞬間に、二人の間に移動し、同時に腹部に殴打をいれ、殴り飛ばす。

 二人は壁を突き破り、遥か彼方まで飛んでいく。
 手加減はしたつもりだが、案外力が入ってしまった。

「やべぇ! こいつらだけでも守らねぇと!」

 相手の人数が把握出来ていない今、この四人を無傷で守りきれるかは分からない。だがひとつ判る事は、相手がかなりの手練だと言うこと。

 以前も、ファイアの巣にいた時に襲われた時があったが、あの時はそれほど手練という連中では無かった。
 だが今回は違う。烈毅でさへ、敵の気配に気づかなかったくらいだ。安心しきっていたというのもあるが、それでも気づかせないのは厄介だ。

 烈毅は、迷う暇もなく、ユニークスキルを発動させる。

 "防御結界陣"それがユニークスキルの名だ。
 一定範囲にドーム状の結界が張られ、その結果は、魔法攻撃、物理攻撃など、ありとあらゆる攻撃や侵入を拒む、便利ユニークスキルだ。
 だが、これには欠点があり、烈毅が十メートル以上離れてしまうと、このユニークスキルが解除されてしまう事、烈毅はその結界内には入れない事だ。

「この無意味だと思っていたスキルが役に立つなんて、俺は嬉しいよ」

 結界が貼られると同時に、烈毅達が泊まっていた宿は大爆発する。
 跡形もなくなってしまった宿の跡地を見て、烈毅は罪悪感を覚える。

 自分のせいでこの店が潰れてしまった。烈毅は、徐々に怒りが湧き上がってくるのを、必死に堪える。

 結界は上手く作動し、ベッドに寝たままの四人は無傷だ。それだけでも、烈毅の心の救いになる。

 四人の安全確認も済んだところで、烈毅は集中して、気配を探る。

 数は……千!?

 その数に、烈毅は度肝を抜かす。

 そう思った直後、烈毅を囲むように、複数の冒険者達が集まる。皆同じくフードを被り、そしてかなりの殺気を放っている。

「お前ら、何者だ?」

 そう尋ねるも、誰からも返事は無い。と思っていると、烈毅の目の前にいた冒険者が道を作り、その道から一人の人物が現れる。

「答えましょう。我々は、貴方を倒すために送られた精鋭部隊アルファ。わざわざ隣国から来たんだ、楽しませておくれよ?」

 そう言うのは、金髪に金目。白いタキシードを華麗に着こなし、腰には二本のレイピアを携えた、西洋風のイケメンの青年だ。声は若々しく、まだ二十代前半と言ったところだ。

 このイケメンが……その顔をボッコボコにしてママ〜って言って泣きヅラをさせてやる!

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