村人が世界最強だと嫌われるらしい

夏夜弘

とりあえず特訓だ! 5

あれから二日経ち、今はその夜。レーナとルノは、お風呂に入っているため、今はそれ待ちで暇を持て余していた。

 色々な試行錯誤で作り出したものは数しれず、失敗作などひとつも無い。これが建築スキルの力。

 煙玉や催涙ガス、睡眠爆弾や人体模型。人体模型は、完全にノリで作ったが、後はいずれ役に経つ時が来ると踏んで、同時に作ったバックの中に入れておく。

 お風呂を変わり、今は烈毅が入っている。広く作ったせいか、一人だと心寂しい。

 烈毅は肩まで浸かってため息をつく。

 軍の動向が気になる。それと、もう一つ気になる事がある。それは、ココ最近でよく起こる盗難だ。

 ここは拠点。その中に、もし侵入者が忍び込んでいて、物を盗んだとなると、それは自分の責任である。

 ここを作ったのは烈毅。だから、俺が責められても何も言えない。だが、その盗難者は、何故か女性の物を盗む傾向にある。

 前日、烈毅がさんざん怒られて頭にきた烈毅は、一日中自分のトランクスを罠に、犯人を突き止めようと出待ちしていたが、その日は現れなかった。

 その日の夜、何故かルノとレーナに笑われたのだが、俺は真剣にやってたのに笑われたのは意味がわからない。

 その二つは、軍のことと盗みの事は、絶対に関連は無いと思っている。ただ、この要塞みたいな家をそこら辺のモンスターが、簡単に入れるとは思わない。

 そんなことを考えていると、段々と眠くなってくる。

 何だか眠くなってきた……。

 そこで一つの疑問が浮かぶ。何故、突然眠気が襲ってきたのか。決して催眠ガスではない。となるとこれは……。

「催眠魔法か!」

 烈毅はお風呂場の窓から顔を出すと、二人ほどの人影が奥へと逃げて行くのが確認できた。

「レーナ、ルノ!」

 烈毅は慌てて体を拭いて服を着て、二人の元へ向かう。すると、案の定二人は廊下で眠らされていた。

「やられたか……俺は耐性があるからギリギリセーフだったけど、こいつらはそれが無いのか」

 二人をここに残す訳にも行かない。何をされるか分からないから。だが、二人を抱えて出たとしても、両手が塞がっては戦えない。

 あれを使うか……いや、流石にこんな状況では使えない。

 ムシャクシャして、とりあえず自分の部屋に戻り、何かないかと部屋中を漁っていると、ゴトンと音を立てて、何かが頃が音がした。

「こ、これは!?」

 そこにあったのは人体模型。もしかしたら、これを囮にできるかもしれない。

 烈毅はまず、静かに耳を澄まして、外に何人敵がいるかを確認する。

 家を囲むようにしてるな。指揮官は……見つけられそうにないか。

 その後、人体模型に自分の服を着せて、フードを深く被らせる。その人体模型に、殺気を纏わせて、窓から外に勢いよく投げ飛ばす。

 すると、それにまんまと引っかかったやつらは「逃げたぞ! 追え!」と、人体模型を必死に追いかけていった。

「よし、これなら逃げられる! ファイアの所にお泊まりだ!」

 烈毅は二人を抱えカバンを背負い、勢いよく玄関から飛び出すと、その瞬間を狙われたのか魔法が飛んでくる。

「あぶね!」

 それをくるりと宙で避け、魔法が飛んできた方向を見る。すると、置くから杖を持った女性が現れる。

「お前、敵か?」

「どっちだと思う?」

「味方」

「どうしてそう思った?」

「だって、さっきの魔法は俺じゃなくて、奥の木の上にいた奴を狙ったんだろ?」

 フードを被った冒険者が木から落ちてきて、ドサッと音を立てる。

「フフっ。面白いわ。やはりこの遠征軍に付いてきて正解だったわ」

「お前、何者だ?」

「私はしがない魔法使いさ。冒険者をやってるよ。超上級ジョブのね?」

「それは心強い! 頼む。俺を手伝ってくれ!」

「なら、一つ条件があるわ」

「なんだ?」

 魔法使いは杖を起き、何故か膝を地面につけ、正座をし始める。

「待て、その次の展開読めるぞ。まさか、私を養ってとか言わないよな?」

「…………」

 無言のまま、その魔法使いは頭を地面につけ、見事なまでの土下座の形になる。

「あぁ、もう! わかったよ! 今は時間ないから、早く手伝って!」

「本当!? なら、心から尽力するわ!」

 そう言って立ち上がり、魔法を唱える。

「幻惑魔法か。頼りになるね」

「あら、これが幻惑魔法ってわかるのね〜? ますます気に入った!」

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