村人が世界最強だと嫌われるらしい

夏夜弘

プロローグ


 ここに来て、約何年経っただろうか。

 一年とか二年とか、そんな軽い数字じゃ済まされない。何十年以上はもう過ごしているだろう。

 当時、ここに来た時の年齢は十五歳と、余りにも若かった。戻りたいとは思わない。そして今、俺の年齢は二十三歳。

 ここで疑問にも思うだろう。あれ、八年しか経ってないじゃんと。だが違う。なぜだが、俺の年齢は二十三歳から歳を取らくなった。

 この世界は、地球と全く同じ作りだ。ただ、文化は全く発展してはいない。最高級の建物と言えば、お城が一番高級だろう。

 この世界では、決められた職業『ジョブ』がある。『ジョブ』とは、村人から勇者まで、様々な種類がある。

 最も強いのは、なんと言っても勇者だ。神に認められた者のみ勇者になる事ができ、その者には聖剣が与えられる。地位と名誉もだ。

 勇者になったものは、この世を破壊しようとする魔王を倒せと命ぜられ、それに従わなければならない。それをめんどくさいなど言うはずもない。だって、人気者になれるからな。

 ただ、魔王を倒すのは勇者だけではない。勇者は強制的に戦う運命になるだけだ。ほかのジョブの者も、別に戦ったっていいわけだ。たとえ村人でも。

 勇者、と来たらもちろん、お姫様も存在するわけだ。王様もいる。

 勇者は、魔王を倒した暁には、お姫様と結婚出来るとかいう豪華特典までついている。勇者優遇されすぎじゃね?

 そう。俺はその人生勝ち組ロードを歩き、一生ワハハと笑いながら過ごす、はずだった……。


 ―時は十五歳へと遡る。


 人村烈毅ひとむられつき、十五歳。

 当時、高校生になりたてで、まだソワソワしていた俺は、あまり友達を作れないでいた。

 陰キャって訳でもなければ、陽キャって訳でもない。誰かに好かれるわけでなければ嫌われもしない。普通の人間だ。

 俺は、新たな出会いを求め、誰も友達がいない高校を選んだ。

 "それが間違いだった。"

 そう思ったのはすぐの事だ。自己紹介をしたあとの事。何人か集まってきて、皆と握手交わし、友達になった。その直後。

『あのさ、友達なら金貸してくんね?』

 その時は、電車賃しかなく、本当にお金がない時だった。そして、その事を伝えると『は? なんだよ。じゃあいいや』と言われ、真っ先にイジメの対象になってしまった。

 その後、助けてくれる人は一人もいない。イジメに耐えつつも、なんとか生活をしていたある放課後。

 信号を待っていると、一台の大きなトラックが、かなりのスピードで走ってくる。信号が変わる直前だかだろう。

 ぼーっと見ていると、背中を誰かから押された感触がする。身体は道にはみ出し、右からはトラック。次の瞬間、痛みも感じず暗い世界に迷い込む。

「……ここは?」

 暫く歩いていると、目の前に誰かが現れる。神々しくて自然に跪いてしまう。

『君は死んでしまった。いや、殺されてしまったと言うのが正しいだろう』

「殺された? 俺が……」

『ええ。ただ、君が死んでしまったのは自分の意思ではない。余りにも理不尽な殺され方をした。だから、君には第二の人生を生きてもらう』

「第二の……人生?」

『はい。君には、地球と全く同じ形をした世界に行ってもらい、そこであることをやってもらいます』

「あること?」

『簡単です。その第二世界で世界最強になり、世界を救っていただきたい』

「それは、アニメで言うところの異世界転生みたいなやつですか?」

『理解が早くて助かります。まぁ本音を言うと、勇者ばかりが世界救っても何もつまらないから、他の人に活躍して欲しいからなんですけどね』

「それって言っていいのか……まぁ、でもそういうの楽しそうですし、やります!」

『ただ、条件があります』

「条件?」

『あなたは、一生村人として生きてもらいます』

「…………へ?」

『では、第二世界へイッテラッシャーイ』

 目の前は光に包まれ、思わず目を瞑ってしまう。そして、数秒が経ち、足元に草を踏んでいる感覚があった。

 目をゆっくりと開くと、周りは何故か木だらけ。どこを見渡しても木しかない。森に転送させられた。

「おい待て、転送先が森で、それでいてジョブが村人? …………腐ってる」

 そして、そこから今に至るまで、烈毅は壮絶な人生を歩んでいたのだ……。

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コメント

  • 夏夜弘

    主人公の名前が読めないとの意見があったので、ここに書かせてもらいます。

    人村烈毅、これで、ひとむられつきと言います。

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