天下界の無信仰者(イレギュラー)
約束された勝利と無敵の激突
この状況で、まだそんなことが言えるのか? 信じられない。いったい、どこまでまっすぐなのか。
ミカエルの情熱は驚愕する域だ。ルシファーにとって一緒にいたあの頃は思い出になった。過去の残滓でしかない。
だけどミカエルは違う。彼は二度と手に入らないこの瞬間に思う。
過去とは、現在だ。今へと続く足跡だ。切り離すものじゃない、断片じゃない、今へと至る同じ道の上なのだ。
ルシファーとは違う。
過ちだと思っていた過去を、大切な歴史として持ち出すミカエルにルシファーは動揺した。
「だが、なにを言ったところでもう遅い。忘れたかミカエル、私はすでにネツアクを発動している。どう足掻いても、お前が勝利することはない!」
そう、すでに絶対勝利の法則は発動している。勝利はルシファーの手の中、誰も勝てない。
「諦めろ!」
だからルシファーは言うのだが。
「諦めない!」
「なぜだ?」
ミカエルは、まだ諦めていなかった。こんなにもわかりやすい絶望を前にして、それでもなお。
「私が、証明してみせるんだああ!」
ミカエルは再び突撃した。きっとこれが最後の戦闘になる。最後の力、渾身の力を込める。
相手は勝利が約束されている。ゆえに勝てない。困難どころの話ではない、そうなると決まっているのだから、敵うはずがないのだ。
なのになぜ挑む?
負けると知りながら。
なぜ前に出る?
あまりに無謀。
もしここに観客がいるのならミカエルの行動を笑うだろう。勝てないのだから戦うだけ無駄だと。
確かにその通り。断崖へと続く道、進めば必ず破滅する。
だけど、そうだと知っていても。
ミカエルは、前に出る。
情熱が、まだ死んでいないから!
諦めていないから!
たとえどんな敵、困難が立ちふさがり、運命すら敵に寝返っても。
彼は、真っ直ぐにしか進まない。
それがミカエル。全天羽の上に立つ、新たな天羽長だった。
ミカエルが振るう剣をルシファーが受け止める。強い力だが押し負けることはあり得ない。
ルシファーの敗北に繋がることが今後一切起こらない。もし自分が負けるようなことがあっても、なにかが起こりそれはなくなるのだ。
ミカエルからどれほど攻撃を受けようと問題にならない。
そして、今度はこちらからだ。運命に愛された一撃、かわせるものならかわしてみせろ。
ルシファーは剣を振るった。それはミカエルを倒すに十分以上の力を発揮した。
理屈などない。勝利すると決まっているのだから、過程が勝手に合わせてくれる。すべては勝利に繋がっていく。
よって必中。よって必殺。この一撃でミカエルは敗北する。
ルシファーの攻撃は決められた台本をなぞるようにミカエルの首もとへと直撃した。
勝った。確信が脳裏を走る。
だが。
「なに!?」
ミカエルは無傷! その首に、傷は一つもついていない!
ミカエルはルシファーを睨みつけたまま剣を弾いた。二体の距離が離れる。
(どういうことだ!?)
ルシファーの表情が歪んだ。目の前で起きた不可解な出来事。
仮に一撃で倒せないとしても無傷というのはおかしい。ネツアクを発動している以前の問題だ。
だが、直後にルシファーは理解した。
「そうか、お前が第六の力をッ」
「ルシファー!」
叫びミカエルが走る。ルシファーも剣を構え前に出た。ミカエルの攻撃をかわし、隙となった腹部へ逆けさぎりを見舞う。
刀身は見事命中するがまたもミカエルに傷を与えることは出来なかった。
本来ならあり得ない。だから違うのだ。ルシファーがセフィラーを発動しているように、ミカエルも天から授かった力を発動していた。
その加護によりミカエルは傷つかない。
第六のセフィラー、『完成された美へと至る第六の力』によって。
それは、傷つかないという法則だった。
約束された勝利と無敵の激突。
よってこの勝負すぐには付かない。前者は負けることはなく、後者は傷つくことがないのだから長期戦だ。
こうなっては力は意味をなさない。肉体の強度も関係ない。勝負を左右するのは力の強さではなく心の強さだ。
絶対に諦めないという、情熱だ。
ミカエルの情熱は驚愕する域だ。ルシファーにとって一緒にいたあの頃は思い出になった。過去の残滓でしかない。
だけどミカエルは違う。彼は二度と手に入らないこの瞬間に思う。
過去とは、現在だ。今へと続く足跡だ。切り離すものじゃない、断片じゃない、今へと至る同じ道の上なのだ。
ルシファーとは違う。
過ちだと思っていた過去を、大切な歴史として持ち出すミカエルにルシファーは動揺した。
「だが、なにを言ったところでもう遅い。忘れたかミカエル、私はすでにネツアクを発動している。どう足掻いても、お前が勝利することはない!」
そう、すでに絶対勝利の法則は発動している。勝利はルシファーの手の中、誰も勝てない。
「諦めろ!」
だからルシファーは言うのだが。
「諦めない!」
「なぜだ?」
ミカエルは、まだ諦めていなかった。こんなにもわかりやすい絶望を前にして、それでもなお。
「私が、証明してみせるんだああ!」
ミカエルは再び突撃した。きっとこれが最後の戦闘になる。最後の力、渾身の力を込める。
相手は勝利が約束されている。ゆえに勝てない。困難どころの話ではない、そうなると決まっているのだから、敵うはずがないのだ。
なのになぜ挑む?
負けると知りながら。
なぜ前に出る?
あまりに無謀。
もしここに観客がいるのならミカエルの行動を笑うだろう。勝てないのだから戦うだけ無駄だと。
確かにその通り。断崖へと続く道、進めば必ず破滅する。
だけど、そうだと知っていても。
ミカエルは、前に出る。
情熱が、まだ死んでいないから!
諦めていないから!
たとえどんな敵、困難が立ちふさがり、運命すら敵に寝返っても。
彼は、真っ直ぐにしか進まない。
それがミカエル。全天羽の上に立つ、新たな天羽長だった。
ミカエルが振るう剣をルシファーが受け止める。強い力だが押し負けることはあり得ない。
ルシファーの敗北に繋がることが今後一切起こらない。もし自分が負けるようなことがあっても、なにかが起こりそれはなくなるのだ。
ミカエルからどれほど攻撃を受けようと問題にならない。
そして、今度はこちらからだ。運命に愛された一撃、かわせるものならかわしてみせろ。
ルシファーは剣を振るった。それはミカエルを倒すに十分以上の力を発揮した。
理屈などない。勝利すると決まっているのだから、過程が勝手に合わせてくれる。すべては勝利に繋がっていく。
よって必中。よって必殺。この一撃でミカエルは敗北する。
ルシファーの攻撃は決められた台本をなぞるようにミカエルの首もとへと直撃した。
勝った。確信が脳裏を走る。
だが。
「なに!?」
ミカエルは無傷! その首に、傷は一つもついていない!
ミカエルはルシファーを睨みつけたまま剣を弾いた。二体の距離が離れる。
(どういうことだ!?)
ルシファーの表情が歪んだ。目の前で起きた不可解な出来事。
仮に一撃で倒せないとしても無傷というのはおかしい。ネツアクを発動している以前の問題だ。
だが、直後にルシファーは理解した。
「そうか、お前が第六の力をッ」
「ルシファー!」
叫びミカエルが走る。ルシファーも剣を構え前に出た。ミカエルの攻撃をかわし、隙となった腹部へ逆けさぎりを見舞う。
刀身は見事命中するがまたもミカエルに傷を与えることは出来なかった。
本来ならあり得ない。だから違うのだ。ルシファーがセフィラーを発動しているように、ミカエルも天から授かった力を発動していた。
その加護によりミカエルは傷つかない。
第六のセフィラー、『完成された美へと至る第六の力』によって。
それは、傷つかないという法則だった。
約束された勝利と無敵の激突。
よってこの勝負すぐには付かない。前者は負けることはなく、後者は傷つくことがないのだから長期戦だ。
こうなっては力は意味をなさない。肉体の強度も関係ない。勝負を左右するのは力の強さではなく心の強さだ。
絶対に諦めないという、情熱だ。
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