天下界の無信仰者(イレギュラー)
ハッ、いらねえ
それからルシフェルは頭として、ミカエルは手足として活動していた。人類との架け橋となるべくミカエルは奔走し、ルシフェルに結果を報告していく。
そのたびにルシフェルとミカエルで話し合い次の行動を決めていった。
お互い真剣だった。この使命を果たしてみせると本気だった。二人を両輪として夢に突き進む。
しかしそれだけではなかった。仕事の合間、二人は時に何気のない会話をし笑い合った。その時は仕事は忘れ、まるで親しい友人のようだった。
ルシフェルが話す苦労話はミカエルに新鮮で、サリエルがまた過剰な罰を与えていただの、ガブリエルとのつき合い方が分からないなど。
それを聞く度にミカエルは興味を示し笑っていた。天羽長の人並みの悩みに親近感を覚え、憧れの四大天羽たちの日常に引きつけられるばかりだ。
いつしか会話に夢中になり時間を忘れるほどだ。
それはルシフェルも同じだった。自分の愚痴を言える相手に親近感を覚えていた。思えばこうして楽しく会話を出来る相手はいなかったかもしれない。
ラファエルとは似たように話せるがどうしても男女の違いがある。
二人は時に上司と部下として、そして時には友人として目標に向かい歩んでいた。
そんな日々が続いていた、ある日。
木々に挟まれた道をルシフェルとミカエルは歩いていた。その顔は真剣だが時折楽しそうに笑っている。
そんな二人の姿を建物の中から見下ろす者がいた。
サリエルは三階にある洋室の窓際に立っていた。包帯越しの視線の先には天羽長と、彼の後を必死に追いかけるミカエルの姿がある。
サリエルの表情が不機嫌そうに歪む。
「ケっ。生まれたばかりのアヒルのようにダンナを追いかけてやがる。あれじゃ補佐官どころかただのファンだぜ? ガブリエル、お前はどう思うんだよ」
洋室にはサリエルだけでなくガブリエル、そしてラファエルもいた。それぞれ別のソファーに腰を下ろし、ガブリエルは目をつぶって足を組み、ラファエルは紅茶を飲んでいた。
サリエルからの質問にガブリエルは目をつむったまま答える。
「初だが仕事が出来るのなら文句はない」
「そうかい。ったく。よりにもよって、なんだってあんなやつをダンナは選んだんだ」
不満を吐き出すサリエルだが反対にラファエルは歓迎ムードだった。
「あら、私はいいと思うわよ? 彼、誠実そうだしなにより心が清らかだもの。彼の主な仕事は人類との外交でしょう? どこかの誰かさんとは違って、彼に危機感を覚える人なんていないわ」
「おい、それは俺に言ってんのか?」
「あら、そう聞こえたの?」
「ちっ」
ラファエルの嫌味に露骨に顔をしかめる。
サリエルはミカエルを気に入っていない。誰が見てもそう思うだろう。そしてそれは最初から変わっていない。
ガブリエルは目を開くとサリエルを横目で見つめた。
「不服そうだな、サリエル」
「別に。そんなんじゃねえよ」
サリエルは否定するがバレバレだ。気にくわないでいるのは一目で分かる。
ガブリエルは再び瞳を閉じた。
「お前は形にこだわる男だからな。下級天羽が天羽長の隣を歩くのが気に障るように見える」
「だったらなんだ、問題でもあるのかよ」
「あるに決まってるでしょ」
ラファエルがつっこむ。
「彼は天羽長が自ら選んだのよ。階級がなんであれ彼は天羽長補佐官という立場なの。そこに四大天羽のあんたがそんな態度じゃ不和が起こるわ。あんたの気持ちも分からなくはないけど、彼は私たちの仲間よ。ひがむのは良くないわ」
「僻む? 俺があいつにか?」
「違うの?」
「んなことするか。ただ普通に考えて場違いだろうが。それが気に入らねえんだよ」
「それを僻みって言うのよ」
「ちっ」
サリエルは窓際を離れると扉に歩いていった。
「どこ行くの?」
「自室だよ。横になってくる」
サリエルは二人を横切り扉を開けた。分が悪いと思っているんだろう。そもそもラファエルの言うとおり、天羽長直々に選任したのだから議論の余地はない。はじめからサリエルは負けている。
それが分かっているからサリエルの苛立ちは収まらない。
そんな彼の後ろ姿にラファエルが声をかける。
「あら残念。ケーキもあるのに」
その一言にサリエルは足を止め、扉を開けたまま振り向いた。
「チーズケーキか?」
「モンブランよ」
「ハッ、いらねえ」
サリエルは乱暴に扉を閉め部屋から出て行った。
そのたびにルシフェルとミカエルで話し合い次の行動を決めていった。
お互い真剣だった。この使命を果たしてみせると本気だった。二人を両輪として夢に突き進む。
しかしそれだけではなかった。仕事の合間、二人は時に何気のない会話をし笑い合った。その時は仕事は忘れ、まるで親しい友人のようだった。
ルシフェルが話す苦労話はミカエルに新鮮で、サリエルがまた過剰な罰を与えていただの、ガブリエルとのつき合い方が分からないなど。
それを聞く度にミカエルは興味を示し笑っていた。天羽長の人並みの悩みに親近感を覚え、憧れの四大天羽たちの日常に引きつけられるばかりだ。
いつしか会話に夢中になり時間を忘れるほどだ。
それはルシフェルも同じだった。自分の愚痴を言える相手に親近感を覚えていた。思えばこうして楽しく会話を出来る相手はいなかったかもしれない。
ラファエルとは似たように話せるがどうしても男女の違いがある。
二人は時に上司と部下として、そして時には友人として目標に向かい歩んでいた。
そんな日々が続いていた、ある日。
木々に挟まれた道をルシフェルとミカエルは歩いていた。その顔は真剣だが時折楽しそうに笑っている。
そんな二人の姿を建物の中から見下ろす者がいた。
サリエルは三階にある洋室の窓際に立っていた。包帯越しの視線の先には天羽長と、彼の後を必死に追いかけるミカエルの姿がある。
サリエルの表情が不機嫌そうに歪む。
「ケっ。生まれたばかりのアヒルのようにダンナを追いかけてやがる。あれじゃ補佐官どころかただのファンだぜ? ガブリエル、お前はどう思うんだよ」
洋室にはサリエルだけでなくガブリエル、そしてラファエルもいた。それぞれ別のソファーに腰を下ろし、ガブリエルは目をつぶって足を組み、ラファエルは紅茶を飲んでいた。
サリエルからの質問にガブリエルは目をつむったまま答える。
「初だが仕事が出来るのなら文句はない」
「そうかい。ったく。よりにもよって、なんだってあんなやつをダンナは選んだんだ」
不満を吐き出すサリエルだが反対にラファエルは歓迎ムードだった。
「あら、私はいいと思うわよ? 彼、誠実そうだしなにより心が清らかだもの。彼の主な仕事は人類との外交でしょう? どこかの誰かさんとは違って、彼に危機感を覚える人なんていないわ」
「おい、それは俺に言ってんのか?」
「あら、そう聞こえたの?」
「ちっ」
ラファエルの嫌味に露骨に顔をしかめる。
サリエルはミカエルを気に入っていない。誰が見てもそう思うだろう。そしてそれは最初から変わっていない。
ガブリエルは目を開くとサリエルを横目で見つめた。
「不服そうだな、サリエル」
「別に。そんなんじゃねえよ」
サリエルは否定するがバレバレだ。気にくわないでいるのは一目で分かる。
ガブリエルは再び瞳を閉じた。
「お前は形にこだわる男だからな。下級天羽が天羽長の隣を歩くのが気に障るように見える」
「だったらなんだ、問題でもあるのかよ」
「あるに決まってるでしょ」
ラファエルがつっこむ。
「彼は天羽長が自ら選んだのよ。階級がなんであれ彼は天羽長補佐官という立場なの。そこに四大天羽のあんたがそんな態度じゃ不和が起こるわ。あんたの気持ちも分からなくはないけど、彼は私たちの仲間よ。ひがむのは良くないわ」
「僻む? 俺があいつにか?」
「違うの?」
「んなことするか。ただ普通に考えて場違いだろうが。それが気に入らねえんだよ」
「それを僻みって言うのよ」
「ちっ」
サリエルは窓際を離れると扉に歩いていった。
「どこ行くの?」
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「あら残念。ケーキもあるのに」
その一言にサリエルは足を止め、扉を開けたまま振り向いた。
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サリエルは乱暴に扉を閉め部屋から出て行った。
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