天下界の無信仰者(イレギュラー)

奏せいや

心の底から望む、希望が差す未来へと!

 故に、ウリエルは諦観の中必死の抵抗を続けていた。

「だけど。無限の天羽軍は止まらない……。そして、このままだと君はミカエルに殺される。無限の天羽と共に。そんなのは、絶対にいやだ……。いやなんだよ、神愛……」

 胸が引き裂かれるような思いが伝わる。自分を友達だと言ってくれた大切な人。なによりの宝物。それを失いたくない。それが死別など、想像しただけで涙が零れる。

 死んでほしくない。望みはそれだけ。他はなにもいらない。一緒にいる未来もなにもかも、すべてを諦めてもいいから。だから。

 神愛にだけは、死んでほしくない。

「負けねえよ!」

「神愛……」

 そんな彼女の諦観を、神愛は真っ向から否定した。

 ウリエルは顔を上げる。そこには激情を露わにし、ウリエルを見つめる神愛が立っていた。

(なぜ?)

 その姿勢に、ウリエルは胸の中で聞いていた。

(どうして、諦めない?)

 神愛は諦めていない。伝説の天羽を前にしても。無限の天羽を敵にしても。彼女が諦めたすべてを。

 彼女と一緒にいるという未来を、諦めていない!

 だからこそ!

 叫ぶのだ!

 進むのだ!

 心の底から望む、希望が差す未来へと!

「死んだりしない! お前のそばにずっと居てやる! 何度でも言ってやるよ!」

 神愛の背後で五つの黄金の柱が噴出した。噴水のように溢れ周囲へと飛沫を散らす。

 黄金。それは永遠の輝き。あらゆるものを照らし、己のみで輝き続ける不屈の光。

 神愛の全身が黄金のオーラに包まれていた。神気を纏い神と一体となる。

 対してウリエルも全力を発揮した。周囲に無価値な炎を展開する。触れるものは即消滅。概念すら通さない反則的なまでの力。

 黄金のオーラと青白い炎熱が空間で鬩ぎ合う。神愛とウリエルは睨み合い、二人同時に踏み込んだ。

「恵瑠ぅうう!」

「神愛ぁああ!」

 黄金と青き炎が混ざり合い渦巻いていた。二人の闘気が大気を震わせ大地がひび割れていく。

「終わりだ!」

 ウリエルが叫ぶ。手を翳し無価値な炎を放射した。狙いは神愛を覆う黄金のオーラ。それを剥がし神化を解く。強化さえなくせばあとは地力で勝てる。

 この力を発動した今、ウリエルに隙はない。勝利へ繋ぐ絶対的な力。

 無価値な炎が迫る。しかし神愛は逃げなかった。

「なに?」

 そんな素振りすらない。ただ真っ直ぐウリエルへ突き進んでいく。

 まるで、ゴールがそこにしかないように。

 そして、神愛を覆うオーラとウリエルの無価値な炎ファイア・オブ・ノーライフが激突した。

「うおおお!」

 黄金と青が混ざり合う。黄金は威光を発し主張する。しかしそれがどれほどのものだろうがウリエルの炎は否定する。

 黄金の輝きを無価値だと言うかのように炎を消滅させていく。

 はずだった。

「なに?」

 だが、ここで必定が覆る。黄金の光は消えていない。

「馬鹿な!?」

 目の前で起こる現象に、ウリエルが驚愕の声を上げる!

「なぜ、私の無価値な炎ファイア・オブ・ノーライフが!?」

 目を疑った。頭が混乱する。こんなことあり得ない。

 無価値な炎はすべてを消し去る。だが神愛の黄金光までは消えていない。

 それは神愛の思いが無価値な炎を超えているということだ。

 黄金の光。それは神愛の思いそのもの。恵瑠を思う気持ちが神化となって条理を超えていく。

 ウリエルの無価値な炎すら超える、圧倒的信仰おもいのかたちだった。

 越えろ。

 そして願え。それに向かって走り続けろ。

 諦めたくない願いがあるのなら。

 叶えたい望みがあるのなら。

 想え。

 絶対に叶えてみると叫んでみせろ。

 その想いが奇跡を起こす!

「うをおおおおお!」

 迫り来る青い本流ほんりゅうを神愛は突き進む。

 神愛は、無価値な炎ファイア・オブ・ノーライフを突破した!

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