天下界の無信仰者(イレギュラー)

奏せいや

救済の祈りを戦意に変えて

 まだ立つか。彼女はそうした目で見下ろし。

 まだ終わっちゃいねえ。神愛はそうした目で睨み上げた。

 神愛は体の痛みから前のめりになっている。なんとか姿勢を正し気合を入れる。

「ハァ!」

 黄金の闘気が発散される。

「やるじゃねえか……」

 痛みを堪え、それでも笑みを浮かべる。

「だがな、俺はまだ生きている。生きている限り、俺は諦めねえぞ!」

 強化の属性。神愛を包む黄金が神愛の傷と痛みを癒していく。

「いいや、君は諦める」

 神愛の熱い視線に、ウリエルも白熱の眼差しを送る。

「私が、君に勝つからだ!」

 神愛を見つめ、想いを叫ぶ。

 負けられない。

 守ると決めた。

 そのためにも、この戦いは負けられない!

「言ってくれるぜ。だがなぁ、そりゃ俺の台詞なんだよ!」

 神愛が前に出る。ウリエルも剣を構え前に出た。

 二人の戦いは終わらない。その想いが折れぬ限り。その想いが尽きぬ限り。

「うおおおおお!」

「はああああ!」

 二人の戦いは終わらない。

 ウリエルが攻める。これほどの激闘、受けた傷や痛みは数えきれない。今も体が訴える痛みに思考が揺れそうになる。

 しかしそんな素振りも様子も見せず、彼女の剣閃は力強さを増していく。

「ちぃ!」

 だが、そんな彼女が忌々しく声を漏らす。それは痛みよりも厄介なもの。

 神愛の周囲を漂う、妨害の黄金だ。神愛に近づき害をなそうとすれば、それは自動的にウリエルの体に纏わりつき束縛してくる。まるで水中にいるかのような身動きの悪さにせっかくの剣技も精彩せいさいを欠いていく。

 さらに、強化の属性は妨害の威力をも強化し、その呪縛はさきほどよりも飛躍的に上がっていた。

 ウリエルは神愛から離れた。

 それを、神愛は逃さない。

「はあ!」

 神愛がウリエルに向け右手を伸ばす。それに合わせ黄金の光がウリエルに伸びた。彼女に纏わりつき十字架のように固定したのだ。

「く!」

 油断した。敵対行動に対し自動的に反応するだけでなく、遠隔操作もできるのか。振り払おうとするもすぐには出れない。

「うおおおお!」

 神愛は走り出した。相手は身動きを封じられている、さきほどの意趣返しだ。

 神愛はウリエルの前に立ち両手で殴りつけていく。何度も何度も、高速で打ち出される拳がウリエルを叩く!

「ンンンンンンンンンッ――オラぁ!」

 最後に大振りの一撃を打ち付けた!

「がああ!」

 神愛の最後の一撃は妨害の光ごと破壊しウリエルを吹き飛ばす。彼女の体が地面に叩き付けられ転がっていく。

「まだだ……まだ……」

 ウリエルがゆっくりと起き上がる。その表情は苦悶を浮かべダメージが積もってるのが分かる。しかしその意志は未だ健在。折れていない。尽きていない。

 彼女の想いはまだ、神愛を救うと諦めていない!

「私はまだ、負けていない!」

 ウリエルは浮上した。左手を天に掲げ、そのさきには破滅の火球が浮かんでいた。さきほどよりも大きい、全長二メートルはあるか。その熱と放射能に駅周辺の草花は全滅する。

「私は負けない! 負けたくない!」

 けれど、その熱にも負けない想いが叫んでいた。

「君を、失ってたまるかぁああ!」

 破滅の星を希望に変えて。

 救済の祈りを戦意に変えて。

 投げる。失いたくないと叫びながら、本気の攻撃を打ち下ろす。

 彼女の想いは届くのか――

「オラぁ!」

 神愛殴り返す!

「ふん!」

 それを叩き返す!

 二人の間で火球が行き来する。

「オラぁ!」

「ふん!」

「オラぁ!」

「ふん!」

「オラぁ!」

「ふん!」

「くたばれぇえ!」

「がああああ!」

 打ち負けた。火球はウリエルに命中し吹き飛んでいく!

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