天下界の無信仰者(イレギュラー)
通してもらうわよ。私の信仰にかけて
沈痛な雰囲気が漂う。仲間を失った悲しみに騎士たちの顔色も悪い。当然加豪も落ち込んだ。
けれど加豪は顔を上げる。士気は落ち込み悲哀が漂うが、覚悟を宿した瞳で言う。
「起こったことを悔やんでも仕方がないわ。ここに来る時点でみな覚悟は決めていた。あの人も。その遺志を無駄にしちゃいけない。生き残った私たちで役目を果たしましょう」
加豪たちをここまで運んでくれたパイロットには覚悟があった。ここでなにもしなければ彼らは無駄死にだ。
そうはさせない。生き残った者たちが彼らの死の意義を灯さなければならない。
加豪の言葉に落ち込んでいた騎士たちも顔を上げ頷いた。みな目的を思い出したようだ。
それを見てヤコブも気をよくしたか小さく微笑む。
「ふん。嬢ちゃんの言う通りだ。俺たちはこのまま予定通り南の支点破壊に赴くぞ」
盾をつけた左腕を一回りさせ剣を抜く。騎士たちもそれぞれ武器を構えた。すぐに戦えるよう備える。
「? 待って、上から来るわ!」
加豪は地面にいくつもの影があるのに気付き上空を見た。そこにはさきほどの天羽たちがゆっくりと降下してきていた。
宙で止まり剣先を向けてくる。天羽たちもやる気だ。
「私たちは神の教えを示す者。従わぬ者は執行対象です」
「私たちは神の教えを示す者。従わぬ者は執行対象です」
「私たちは神の教えを示す者。従わぬ者は執行対象です」
「うるさい! すでに間に合ってるのよ!」
雷切心典光を一閃して威嚇する。信仰の押し付けなんて余計なお世話だ。
天下界にいる人々には自分で選んだ信仰がある。これならば一生をかけられると思い、それを突き進んできた過去がある。
それを無駄にしたくない。誰かの指図で、今まで歩んできた歴史を捨てられるほど安くはない!
「通してもらうわよ。私の信仰にかけて」
加豪の言葉の後天羽たちが襲いかかってきた。二十人近い数に対して相手は五十体ほどいる。
さらにもたもたしていれば援軍も駆けつけてる。
加豪は天和を守りながら剣を振るう。
電撃による攻撃は相手を近づかさせず、掻い潜ってきた天羽も長身の刃と彼女が修めてきた剣術で切り裂いていく。
如何に天羽であろうとも剣の腕前は加豪の方が幾段も上だ、これまでをそれに費やしてきた彼女の方が分がある。
他の騎士たちも剣を振るった。天和を守るように円陣を組み彼らが近くの天羽を、上空や離れた場所は加豪の電撃と――
「はあ!」
ヤコブの剣が倒していった。
ヤコブの空間転移が光る。瞬時に現れては斬り倒し、すぐさま天羽の背後を取っては斬っていく。
その電光石火の如き早業に天羽たちの数がみるみると減っていく。
「やらせはせんぞ! 我らこそ慈愛連立の信徒、人を救うことこそ本領。ここで退いてなるものか!」
怒涛の勢いでこの場の天羽は少数にまで減っていた。
いけるか? そうした心の緩みが騎士たちからわずかに漏れる。しかし、それはすぐに裏切られることになった。
「援軍が来るわ!」
上空から響き渡る羽の音。遠目ではあるが、五十体ほどの大部隊がこちらに向かってきていた。これではキリがない。
「ええい、仕方があるまい」
ヤコブは苦い表情で加豪に振り向いた。
「琢磨追求の。護衛は付ける。お前たちだけでさきに行ってくれ」
「けれど」
「この数、俺でなければ食い止められん! 時間がないのだ、早く行け。さっさと片付けてお前たちの後を追ってやる!」
言っていることは加豪も分かる。もとから時間の限られた戦い。短期で終わらせなければならない。
それが分かっていても足が重いのは経験の少なさからか。仲間を置いて行くことに躊躇ってしまう。
そこへ、無我無心の天和が言った。
「ここで全員足止めされてたら意味がないわ」
天和は冷静だった。感情が希薄になりがちな無我無心だがその分平常心がある。情に惑わされずに的確にアドバイスしていく。
その状況判断と決断力は優秀な兵士のそれと同じものだった。
隣の友人からの言葉に加豪も心の整理がつく。
「分かってる」
急がなくてはならない。もし時間切れになってしまえばどうしようもなくなってしまう。
ヤコブと離れるのは痛いがそんな弱音など言っていられない。加豪は目つきを鋭くさせた。
これから向かう先、そこにいる強敵を見据えて。
「それに、あいつとは私一人でやるつもりだったのよ」
以前一度だけ会ったサングラスの男。チンピラめいた言動ではあったが漂う強大な雰囲気は間違いなく実力者だった。
見られた瞬間に死が頭を過るほど。
しかし考えはある。だからこそ加豪はこの戦いへ参加することを決めていた。
「天和、行くわよ」
「うん」
「お前ら、彼女たちと共に行け。しっかり守れよ!」
「はっ!」
ヤコブからの指示で五人の騎士が加豪の後に続く。
「それじゃ、ここは任せます」
「おうよ」
けれど加豪は顔を上げる。士気は落ち込み悲哀が漂うが、覚悟を宿した瞳で言う。
「起こったことを悔やんでも仕方がないわ。ここに来る時点でみな覚悟は決めていた。あの人も。その遺志を無駄にしちゃいけない。生き残った私たちで役目を果たしましょう」
加豪たちをここまで運んでくれたパイロットには覚悟があった。ここでなにもしなければ彼らは無駄死にだ。
そうはさせない。生き残った者たちが彼らの死の意義を灯さなければならない。
加豪の言葉に落ち込んでいた騎士たちも顔を上げ頷いた。みな目的を思い出したようだ。
それを見てヤコブも気をよくしたか小さく微笑む。
「ふん。嬢ちゃんの言う通りだ。俺たちはこのまま予定通り南の支点破壊に赴くぞ」
盾をつけた左腕を一回りさせ剣を抜く。騎士たちもそれぞれ武器を構えた。すぐに戦えるよう備える。
「? 待って、上から来るわ!」
加豪は地面にいくつもの影があるのに気付き上空を見た。そこにはさきほどの天羽たちがゆっくりと降下してきていた。
宙で止まり剣先を向けてくる。天羽たちもやる気だ。
「私たちは神の教えを示す者。従わぬ者は執行対象です」
「私たちは神の教えを示す者。従わぬ者は執行対象です」
「私たちは神の教えを示す者。従わぬ者は執行対象です」
「うるさい! すでに間に合ってるのよ!」
雷切心典光を一閃して威嚇する。信仰の押し付けなんて余計なお世話だ。
天下界にいる人々には自分で選んだ信仰がある。これならば一生をかけられると思い、それを突き進んできた過去がある。
それを無駄にしたくない。誰かの指図で、今まで歩んできた歴史を捨てられるほど安くはない!
「通してもらうわよ。私の信仰にかけて」
加豪の言葉の後天羽たちが襲いかかってきた。二十人近い数に対して相手は五十体ほどいる。
さらにもたもたしていれば援軍も駆けつけてる。
加豪は天和を守りながら剣を振るう。
電撃による攻撃は相手を近づかさせず、掻い潜ってきた天羽も長身の刃と彼女が修めてきた剣術で切り裂いていく。
如何に天羽であろうとも剣の腕前は加豪の方が幾段も上だ、これまでをそれに費やしてきた彼女の方が分がある。
他の騎士たちも剣を振るった。天和を守るように円陣を組み彼らが近くの天羽を、上空や離れた場所は加豪の電撃と――
「はあ!」
ヤコブの剣が倒していった。
ヤコブの空間転移が光る。瞬時に現れては斬り倒し、すぐさま天羽の背後を取っては斬っていく。
その電光石火の如き早業に天羽たちの数がみるみると減っていく。
「やらせはせんぞ! 我らこそ慈愛連立の信徒、人を救うことこそ本領。ここで退いてなるものか!」
怒涛の勢いでこの場の天羽は少数にまで減っていた。
いけるか? そうした心の緩みが騎士たちからわずかに漏れる。しかし、それはすぐに裏切られることになった。
「援軍が来るわ!」
上空から響き渡る羽の音。遠目ではあるが、五十体ほどの大部隊がこちらに向かってきていた。これではキリがない。
「ええい、仕方があるまい」
ヤコブは苦い表情で加豪に振り向いた。
「琢磨追求の。護衛は付ける。お前たちだけでさきに行ってくれ」
「けれど」
「この数、俺でなければ食い止められん! 時間がないのだ、早く行け。さっさと片付けてお前たちの後を追ってやる!」
言っていることは加豪も分かる。もとから時間の限られた戦い。短期で終わらせなければならない。
それが分かっていても足が重いのは経験の少なさからか。仲間を置いて行くことに躊躇ってしまう。
そこへ、無我無心の天和が言った。
「ここで全員足止めされてたら意味がないわ」
天和は冷静だった。感情が希薄になりがちな無我無心だがその分平常心がある。情に惑わされずに的確にアドバイスしていく。
その状況判断と決断力は優秀な兵士のそれと同じものだった。
隣の友人からの言葉に加豪も心の整理がつく。
「分かってる」
急がなくてはならない。もし時間切れになってしまえばどうしようもなくなってしまう。
ヤコブと離れるのは痛いがそんな弱音など言っていられない。加豪は目つきを鋭くさせた。
これから向かう先、そこにいる強敵を見据えて。
「それに、あいつとは私一人でやるつもりだったのよ」
以前一度だけ会ったサングラスの男。チンピラめいた言動ではあったが漂う強大な雰囲気は間違いなく実力者だった。
見られた瞬間に死が頭を過るほど。
しかし考えはある。だからこそ加豪はこの戦いへ参加することを決めていた。
「天和、行くわよ」
「うん」
「お前ら、彼女たちと共に行け。しっかり守れよ!」
「はっ!」
ヤコブからの指示で五人の騎士が加豪の後に続く。
「それじゃ、ここは任せます」
「おうよ」
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