天下界の無信仰者(イレギュラー)
ここは悪を滅する焼却所。赤とオレンジに変色した世界に焼かれ罪業よ浄化されるがいい
「あ、アアアア!」
その逆境、地形まで変える激闘にサリエルは吠える。見て殺す、そうでなくば斬り殺す。
連続する空間転移と高速移動で撹乱し、妄執的な観察眼を働かせ、ウリエルの隙を見つけ出す。
その気概は実り、サリエルはウリエルの背後を取った。すぐさま鎌を振るって一撃のもと命を刈り取る。
それを読んでいたか、ウリエルは振り向きざまに大剣を振るってきた。両者の刃が激突する。
「うおおお!」
間合いに入った。サリエルは攻める。空間転移させる暇など与えない、押して押して押し通す。
サリエルが振るう大鎌の烈風とウリエルが突く大剣の轟風。それは地面を抉り亀裂を入れ大気に乱気流を生んでいた。
サリエルが操る大鎌は独楽のように回転し死を振り撒く風車と化している。それを捌くのは至難の業だ。
だが、それを見事ウリエルは受け切った。剣技においてもウリエルは一流だ。対処の難しい鎌の軌道を見切り、自身の身長ほどある長剣でいなしては攻撃していく。
両者の一進一退の攻防。剣戟の音が鍛冶場のように鳴り響く。武器による戦いは互角だ、どちらが勝っても不思議ではない。
けれど勝負はウリエルに傾いていた。すでに空間は彼女の支配下だ、サリエルはウリエルの轟剣を躱そうとも灼熱までは躱せない。
ウリエルも死の視線の体力減衰を受けているものの被害は比べるまでもない。
「クソがぁああ!」
その差が分けた。実力が互角だからこそサリエルは押し切られる。
その隙にウリエルはさらに火柱を打ち上げて、サリエルとの間に壁を作った。燃え盛るいくつもの柱はまさしく彼女の正義の具現。
悪を根絶やしにせんとする思いの発露だ。
サリエルは攻める。自慢の邪眼と大鎌を遺憾なく発揮する。むしろそれしか術がない。
玉砕覚悟でもなんでもいい、一撃、それだけ当てての逆転狙い。自身が灰になるより前に、敵を殺す!
我武者羅だろうが猪突猛進だろうが自然とそうなる。やむを得ない、もたもたしていれば本当にローストだ。
時間制限に急かされる。本来は対戦相手が追い込まれる状況に自身が追い込まれていた。
なんたる皮肉。そしてだからこそ忌々しい。貴様、いったい誰の真似をしてやがると。
「てめえウリエルぅうう!」
叫び、何度も特攻する。大鎌の刃をウリエルの胸に突き刺す。
しかし、その度にウリエルは炎で身を隠すか空間転移で背後へと回ってしまう。まるで手慣れた闘牛士だ、いくらサリエルが攻めても躱されこの繰り返し。
ウリエルは距離を取ると左手をサリエルに向けた。狙いを定めると打ち上がっていた火柱が集まってきた。みるみると巨大な火の玉へとなっていく。
「はあっ!」
ウリエルの気迫と共に獄炎が放たれる。火柱だけでも天羽を一掃するのにこれの火力はその数倍、受ければひとたまりもない。
サリエルは受け切れないと判断し間一髪回避する。即死は免れた。だが、なお上昇していく温度の猛威。
「ぐぅ! ぐっ、がああ!」
意識が飛びそうな熱だ、立っているだけで肌が爛れる。だが、恐るべきはこれは余波でしかないということ。
あくまでおまけ。それだけで辺りはこのザマだ。
彼女の炎に周囲の景観は一変していた。
熱量にアスファルトは溶け出し水たまりになっている。空間そのものが膨大な熱量によって歪曲し街は水あめのように溶けて形を変えていく。
彼女の技が、正義を執行せんとする炎が空間すら変異させ襲いかかる。逃げ場はない、数千度と化した空間そのものがウリエルの味方となって異物を排除する。
ここは悪を滅する焼却所。赤とオレンジに変色した世界に焼かれ罪業よ浄化されるがいい。
「があああああ!」
全身を焼かれる痛みにサリエルは叫んだ。だが意識までは手放していない。戦意はまだある、尽きてはいない。
すさまじい執念でウリエルの姿を追いかける。邪魔する炎の柱と壁を切り裂いて、どこまでも追いかけた。
「ふぜけんじゃねえ、ふざけんじゃねえ、ぞ……ウリエルぅ……!」
だが、追い詰められているのは自分の方だった。
世界すら燃やし尽くすウリエルの炎に炙られる。それで形を保っているだけで僥倖だ、プリーストなら戦うどころかこの空間に入った瞬間に蒸発している。
それほどの熱にサリエルも無傷とはいかず、肌は刻一刻と焼かれ炭化していく。
そんなサリエルの行動を無駄だと叩き付けるかのように、ウリエルは必殺の奥義を発揮した。
「無価値な炎」
左手の前で新たに燃え上がるのは青き炎。
白が混ざったそれはあらゆるものを消滅させる概念攻撃だ。彼女が誇る絶対の力を揺らめかせ、ウリエルはサリエルを見下ろした。
「お前は負ける」
サリエルの死の視線は消滅している。そのためウリエルは悠々と姿を明かしていた。
「私には勝てない」
この状況、この優位。イービルアイの視線すら消滅させて、ウリエルは絶対的な貫録で宙に立つ。
「あ、ああ……」
勝てない、勝てるわけがない。そもそも相手が超越者(オラクル)という時点で背後を取られ、加えて無価値な炎を出されれば死の視線は完全に機能しなくなる。
サリエルでは、相性が悪すぎる。
その逆境、地形まで変える激闘にサリエルは吠える。見て殺す、そうでなくば斬り殺す。
連続する空間転移と高速移動で撹乱し、妄執的な観察眼を働かせ、ウリエルの隙を見つけ出す。
その気概は実り、サリエルはウリエルの背後を取った。すぐさま鎌を振るって一撃のもと命を刈り取る。
それを読んでいたか、ウリエルは振り向きざまに大剣を振るってきた。両者の刃が激突する。
「うおおお!」
間合いに入った。サリエルは攻める。空間転移させる暇など与えない、押して押して押し通す。
サリエルが振るう大鎌の烈風とウリエルが突く大剣の轟風。それは地面を抉り亀裂を入れ大気に乱気流を生んでいた。
サリエルが操る大鎌は独楽のように回転し死を振り撒く風車と化している。それを捌くのは至難の業だ。
だが、それを見事ウリエルは受け切った。剣技においてもウリエルは一流だ。対処の難しい鎌の軌道を見切り、自身の身長ほどある長剣でいなしては攻撃していく。
両者の一進一退の攻防。剣戟の音が鍛冶場のように鳴り響く。武器による戦いは互角だ、どちらが勝っても不思議ではない。
けれど勝負はウリエルに傾いていた。すでに空間は彼女の支配下だ、サリエルはウリエルの轟剣を躱そうとも灼熱までは躱せない。
ウリエルも死の視線の体力減衰を受けているものの被害は比べるまでもない。
「クソがぁああ!」
その差が分けた。実力が互角だからこそサリエルは押し切られる。
その隙にウリエルはさらに火柱を打ち上げて、サリエルとの間に壁を作った。燃え盛るいくつもの柱はまさしく彼女の正義の具現。
悪を根絶やしにせんとする思いの発露だ。
サリエルは攻める。自慢の邪眼と大鎌を遺憾なく発揮する。むしろそれしか術がない。
玉砕覚悟でもなんでもいい、一撃、それだけ当てての逆転狙い。自身が灰になるより前に、敵を殺す!
我武者羅だろうが猪突猛進だろうが自然とそうなる。やむを得ない、もたもたしていれば本当にローストだ。
時間制限に急かされる。本来は対戦相手が追い込まれる状況に自身が追い込まれていた。
なんたる皮肉。そしてだからこそ忌々しい。貴様、いったい誰の真似をしてやがると。
「てめえウリエルぅうう!」
叫び、何度も特攻する。大鎌の刃をウリエルの胸に突き刺す。
しかし、その度にウリエルは炎で身を隠すか空間転移で背後へと回ってしまう。まるで手慣れた闘牛士だ、いくらサリエルが攻めても躱されこの繰り返し。
ウリエルは距離を取ると左手をサリエルに向けた。狙いを定めると打ち上がっていた火柱が集まってきた。みるみると巨大な火の玉へとなっていく。
「はあっ!」
ウリエルの気迫と共に獄炎が放たれる。火柱だけでも天羽を一掃するのにこれの火力はその数倍、受ければひとたまりもない。
サリエルは受け切れないと判断し間一髪回避する。即死は免れた。だが、なお上昇していく温度の猛威。
「ぐぅ! ぐっ、がああ!」
意識が飛びそうな熱だ、立っているだけで肌が爛れる。だが、恐るべきはこれは余波でしかないということ。
あくまでおまけ。それだけで辺りはこのザマだ。
彼女の炎に周囲の景観は一変していた。
熱量にアスファルトは溶け出し水たまりになっている。空間そのものが膨大な熱量によって歪曲し街は水あめのように溶けて形を変えていく。
彼女の技が、正義を執行せんとする炎が空間すら変異させ襲いかかる。逃げ場はない、数千度と化した空間そのものがウリエルの味方となって異物を排除する。
ここは悪を滅する焼却所。赤とオレンジに変色した世界に焼かれ罪業よ浄化されるがいい。
「があああああ!」
全身を焼かれる痛みにサリエルは叫んだ。だが意識までは手放していない。戦意はまだある、尽きてはいない。
すさまじい執念でウリエルの姿を追いかける。邪魔する炎の柱と壁を切り裂いて、どこまでも追いかけた。
「ふぜけんじゃねえ、ふざけんじゃねえ、ぞ……ウリエルぅ……!」
だが、追い詰められているのは自分の方だった。
世界すら燃やし尽くすウリエルの炎に炙られる。それで形を保っているだけで僥倖だ、プリーストなら戦うどころかこの空間に入った瞬間に蒸発している。
それほどの熱にサリエルも無傷とはいかず、肌は刻一刻と焼かれ炭化していく。
そんなサリエルの行動を無駄だと叩き付けるかのように、ウリエルは必殺の奥義を発揮した。
「無価値な炎」
左手の前で新たに燃え上がるのは青き炎。
白が混ざったそれはあらゆるものを消滅させる概念攻撃だ。彼女が誇る絶対の力を揺らめかせ、ウリエルはサリエルを見下ろした。
「お前は負ける」
サリエルの死の視線は消滅している。そのためウリエルは悠々と姿を明かしていた。
「私には勝てない」
この状況、この優位。イービルアイの視線すら消滅させて、ウリエルは絶対的な貫録で宙に立つ。
「あ、ああ……」
勝てない、勝てるわけがない。そもそも相手が超越者(オラクル)という時点で背後を取られ、加えて無価値な炎を出されれば死の視線は完全に機能しなくなる。
サリエルでは、相性が悪すぎる。
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