天下界の無信仰者(イレギュラー)
彼は君にとってなんだい、ウリエル
「おお~、怖い怖い。しかし手を出すなだって? 残念だけど、君が私に命令できる権限など――」
「ミカエル、止めろ」
ミカエルの言葉を遮り脅迫めいた口調で告げる。
これが自分のわがままだと自覚はしている。世界の平和。そのために人類と戦う決意をした。なのに、自分は彼だけは助けようとしている。
ひどい矛盾、わがままだって分かってる。
それでも、彼を守りたい。
自分を認めてくれた、初めての人だから。多くの宝物をくれた彼を殺すなんてこと出来ない、死なすなんてこと認められない。
好きだから。彼のことを想うたびに胸が熱くなるこの熱で、わが身が焼かれるのなら構わない。
「ふっ、そうかい。ではこうしよう」
ウリエルの想いの強さが通じたのか、ミカエルは追及を止めた。本来ならすぐにでも処遇を告げられてもおかしくない状況。
しかしミカエルの判決は執行猶予、条件を言い渡してきた。
「彼が邪魔しに来なければ、またこの計画を成功させてくれれば、彼を処すのは止めよう。しかし、彼が邪魔しにくれば、失敗するようなら、容赦なく殺す」
その顔は真剣だ。まっすぐなウリエルの視線に応え、見つめ返すのはミカエルの真剣な目。
「どうだ、これ以上ない条件だろ? これが呑めないと言うなら交渉の余地はない」
確かに、ミカエルとしても計画の成就が最優先。
それが邪魔され手出しするなと言うのは無理な話だ、ミカエルの言う通りこれ以上ない条件だ。
「分かった、それでいい」
どれだけ神愛が強くても相手が天羽軍となれば敵わない。計画に支障をきたすイレギュラーとして殺されてしまう。
だが、要は彼がここに現れなければいいのだ。そして自分がミスをしなければいい。
役割を全うし、平和を実現させる。それで彼を救うことが出来る。ウリエルは承諾した。これが彼を守る唯一の方法だった。
「彼は君にとってなんだい、ウリエル」
話はまとまった。しかしミカエルとしてはそう簡単に見過ごしていい話ではない。
なぜそこまでこだわるのか、ウリエルがどう考えているのか、それを確かめる必要がある。
「君に頼みがある。手始めに軍の基地をいくつか襲撃してくれるかな」
軍は政府の組織だ、当然神官長派の指揮下であり、その上官たちがこぞって敵に回ったのだから混乱は必至だ。
軍だけでなく政府は一時的な麻痺状態に陥っており襲撃自体は容易いことだ。
戦力を整える間、教皇派の意識を局地的な襲撃に向けさせるのは悪くない。
その人選をウリエルにするということは、試されているのだ。本当に天羽として振る舞えるのか、それともまた裏切るのか。
もし、手心を加え半端な仕事をしたのなら今度こそ処罰は免れない。さきほどの約束も反故にされかねない。
自分は不審に思われているのだ、これくらいは当然。
「やってくれるね?」
「…………ふん」
険しい表情のままウリエルは踵を返しそのまま部屋を出て行った。答えは言わずとも決まっている。
ミカエルの良いようにされるのは癪だが納得している。
(神愛君。君だけは守ってみせる。今度は、私が)
理想と自己の想い。挟まれる矛盾があろうとも、ウリエルの歩みは止まらない。
世界を平和にしてみせる。
人々を笑顔にしてみせる。
そして、愛する人を守ってみせる。
迷うことなんてない。ウリエルは精悍な表情で前を向きながら、最寄の基地を頭に描いていた。
「ミカエル、止めろ」
ミカエルの言葉を遮り脅迫めいた口調で告げる。
これが自分のわがままだと自覚はしている。世界の平和。そのために人類と戦う決意をした。なのに、自分は彼だけは助けようとしている。
ひどい矛盾、わがままだって分かってる。
それでも、彼を守りたい。
自分を認めてくれた、初めての人だから。多くの宝物をくれた彼を殺すなんてこと出来ない、死なすなんてこと認められない。
好きだから。彼のことを想うたびに胸が熱くなるこの熱で、わが身が焼かれるのなら構わない。
「ふっ、そうかい。ではこうしよう」
ウリエルの想いの強さが通じたのか、ミカエルは追及を止めた。本来ならすぐにでも処遇を告げられてもおかしくない状況。
しかしミカエルの判決は執行猶予、条件を言い渡してきた。
「彼が邪魔しに来なければ、またこの計画を成功させてくれれば、彼を処すのは止めよう。しかし、彼が邪魔しにくれば、失敗するようなら、容赦なく殺す」
その顔は真剣だ。まっすぐなウリエルの視線に応え、見つめ返すのはミカエルの真剣な目。
「どうだ、これ以上ない条件だろ? これが呑めないと言うなら交渉の余地はない」
確かに、ミカエルとしても計画の成就が最優先。
それが邪魔され手出しするなと言うのは無理な話だ、ミカエルの言う通りこれ以上ない条件だ。
「分かった、それでいい」
どれだけ神愛が強くても相手が天羽軍となれば敵わない。計画に支障をきたすイレギュラーとして殺されてしまう。
だが、要は彼がここに現れなければいいのだ。そして自分がミスをしなければいい。
役割を全うし、平和を実現させる。それで彼を救うことが出来る。ウリエルは承諾した。これが彼を守る唯一の方法だった。
「彼は君にとってなんだい、ウリエル」
話はまとまった。しかしミカエルとしてはそう簡単に見過ごしていい話ではない。
なぜそこまでこだわるのか、ウリエルがどう考えているのか、それを確かめる必要がある。
「君に頼みがある。手始めに軍の基地をいくつか襲撃してくれるかな」
軍は政府の組織だ、当然神官長派の指揮下であり、その上官たちがこぞって敵に回ったのだから混乱は必至だ。
軍だけでなく政府は一時的な麻痺状態に陥っており襲撃自体は容易いことだ。
戦力を整える間、教皇派の意識を局地的な襲撃に向けさせるのは悪くない。
その人選をウリエルにするということは、試されているのだ。本当に天羽として振る舞えるのか、それともまた裏切るのか。
もし、手心を加え半端な仕事をしたのなら今度こそ処罰は免れない。さきほどの約束も反故にされかねない。
自分は不審に思われているのだ、これくらいは当然。
「やってくれるね?」
「…………ふん」
険しい表情のままウリエルは踵を返しそのまま部屋を出て行った。答えは言わずとも決まっている。
ミカエルの良いようにされるのは癪だが納得している。
(神愛君。君だけは守ってみせる。今度は、私が)
理想と自己の想い。挟まれる矛盾があろうとも、ウリエルの歩みは止まらない。
世界を平和にしてみせる。
人々を笑顔にしてみせる。
そして、愛する人を守ってみせる。
迷うことなんてない。ウリエルは精悍な表情で前を向きながら、最寄の基地を頭に描いていた。
コメント
ノベルバユーザー137512
神愛って名前からして天羽より強い気がしてならないんだが-w-w
帰宅中に読んでます。