天下界の無信仰者(イレギュラー)
そんな
そんな恵瑠が、こんなことするなんて思えない。思いたくない!
「残念だねえ、人の言うことを無視するのはよくないよ?」
「黙ってろミカエル、俺は今、恵瑠と話してんだ!」
俺は怒ってた。なにがなんだか分からない。整理が付かない。大変なことが起きようとしている。
それでも恵瑠と出会えた。本当は嬉しいことのはずなのに、なのになぜか素直に喜べない。なんで恵瑠がそっちで天羽たちと一緒にヘブンズ・ゲートを開こうとしているんだ。
「フッ、ふふふ。恵瑠? いやぁ、残念残念。そんな人物ここにはいないよ。君が恵瑠と呼んでいるのはね」
そんな俺の混乱を面白がるようにミカエルの目が笑っている。
「ウリエル。私たち天羽の仲間なのさ」
「そんな」
恵瑠が、お前たちの仲間? だからヘブンズ・ゲートを開けようとするって?
じゃあ、俺が知っている今までの恵瑠はなんだったんだよ? 一緒に遊んで、一緒に過ごしてたあいつはなんだったんだ。
ミカエルの言葉に俺は黙り込んだ。恵瑠が天羽なのは知っているし仲間といえばそうなんだろう。だけど、だからと言ってヘブンズ・ゲート? 地上への侵攻? そんなの納得できない!
その時だった。ミカエルの足元にいたエノクが動いた。ミカエルの隙を突き、自分が接している床だけを消したのだ。これによりエノクは落下しミカエルの足と離れた。
「ちっ」
離れた直後エノクは空間転移で消えていった。
「まあいい、当初の目的は達している。彼女の蘇生が間に合った時点で成果はあった。あの様子じゃ万全になるにもしばらくかかりそうだし」
エノクを取り逃がしてもミカエルには余裕があった。それだけ計画通りってわけか。
恵瑠が死ぬのも。そして生き返るのも、前もって知ってたわけか。
「恵瑠、お前はこれでいいのかよ?」
俺は恵瑠を見た。落胆に似た悲しみと、裏切られたような怒りの間で俺は揺れていた。
「お前、言ってたじゃねえか! みんなが笑顔になれる世界にしたいって! それが夢だって! なのに、これがお前のやることかよ、恵瑠!?」
「…………」
「なんとか言えよ!」
どれだけ呼んでもなにも答えてくれない。ずっと黙ったままだ。
恵瑠と同じように、俺も顔を下に向けた。
「なんでだよ……。お前が目の前で刺されて、めちゃくちゃ悲しかった。ものすごく後悔した。でもお前が蘇るかもしれないって知って、迷いながらもお前に会いたいって、そう思ってたのに!」
言いながら、俺は悔しさに拳を握り込んでいた。
「本当ならめちゃくちゃうれしいはずなのに……!」
恵瑠を失った悲しみは今だって覚えてる。とても辛くて悲しかった。もう会えないと思って泣き叫んでいた。
でもまだ会える可能性があって、すごく期待してたんだ。もう一度会えたら、また前みたいに元通りになるって。
なのに!
「俺は、こんな出会いを求めてたのか? こんなことのために頑張ってたのか?」
出会ったら、なんて言うかなんて決めてなかったけど、きっとめちゃくちゃ喜んで、泣くほど喜んで、ガラにもなく抱き締めたりするんだろうなって、そんな風に思ってた。
大切なものを取り戻したって、もう失うもんかって思いながら。
でも、実際にはぜんぜん違う。そこにいるのは俺の知ってる恵瑠じゃない。平和を求めて、笑顔を愛してた彼女じゃない。ヘブンズ・ゲートを開こうとしている恵瑠だった。
「違うだろ? お前だって、本当はこんなこと嫌なはずじゃないのかよ?」
俺は恵瑠を見て聞いていた。本心が知りたくて。答えてくれなくたって、何度でも聞くつもりだった。
「厄介だなぁ、おいミカエル。こいつ消していいんだろ?」
だけど俺の言葉に動いたのは恵瑠ではなく見たことない男の天羽だった。赤い髪にサングラス。あからさまにガラの悪い男だった。そいつが前に歩んでくる。
「残念だねえ、人の言うことを無視するのはよくないよ?」
「黙ってろミカエル、俺は今、恵瑠と話してんだ!」
俺は怒ってた。なにがなんだか分からない。整理が付かない。大変なことが起きようとしている。
それでも恵瑠と出会えた。本当は嬉しいことのはずなのに、なのになぜか素直に喜べない。なんで恵瑠がそっちで天羽たちと一緒にヘブンズ・ゲートを開こうとしているんだ。
「フッ、ふふふ。恵瑠? いやぁ、残念残念。そんな人物ここにはいないよ。君が恵瑠と呼んでいるのはね」
そんな俺の混乱を面白がるようにミカエルの目が笑っている。
「ウリエル。私たち天羽の仲間なのさ」
「そんな」
恵瑠が、お前たちの仲間? だからヘブンズ・ゲートを開けようとするって?
じゃあ、俺が知っている今までの恵瑠はなんだったんだよ? 一緒に遊んで、一緒に過ごしてたあいつはなんだったんだ。
ミカエルの言葉に俺は黙り込んだ。恵瑠が天羽なのは知っているし仲間といえばそうなんだろう。だけど、だからと言ってヘブンズ・ゲート? 地上への侵攻? そんなの納得できない!
その時だった。ミカエルの足元にいたエノクが動いた。ミカエルの隙を突き、自分が接している床だけを消したのだ。これによりエノクは落下しミカエルの足と離れた。
「ちっ」
離れた直後エノクは空間転移で消えていった。
「まあいい、当初の目的は達している。彼女の蘇生が間に合った時点で成果はあった。あの様子じゃ万全になるにもしばらくかかりそうだし」
エノクを取り逃がしてもミカエルには余裕があった。それだけ計画通りってわけか。
恵瑠が死ぬのも。そして生き返るのも、前もって知ってたわけか。
「恵瑠、お前はこれでいいのかよ?」
俺は恵瑠を見た。落胆に似た悲しみと、裏切られたような怒りの間で俺は揺れていた。
「お前、言ってたじゃねえか! みんなが笑顔になれる世界にしたいって! それが夢だって! なのに、これがお前のやることかよ、恵瑠!?」
「…………」
「なんとか言えよ!」
どれだけ呼んでもなにも答えてくれない。ずっと黙ったままだ。
恵瑠と同じように、俺も顔を下に向けた。
「なんでだよ……。お前が目の前で刺されて、めちゃくちゃ悲しかった。ものすごく後悔した。でもお前が蘇るかもしれないって知って、迷いながらもお前に会いたいって、そう思ってたのに!」
言いながら、俺は悔しさに拳を握り込んでいた。
「本当ならめちゃくちゃうれしいはずなのに……!」
恵瑠を失った悲しみは今だって覚えてる。とても辛くて悲しかった。もう会えないと思って泣き叫んでいた。
でもまだ会える可能性があって、すごく期待してたんだ。もう一度会えたら、また前みたいに元通りになるって。
なのに!
「俺は、こんな出会いを求めてたのか? こんなことのために頑張ってたのか?」
出会ったら、なんて言うかなんて決めてなかったけど、きっとめちゃくちゃ喜んで、泣くほど喜んで、ガラにもなく抱き締めたりするんだろうなって、そんな風に思ってた。
大切なものを取り戻したって、もう失うもんかって思いながら。
でも、実際にはぜんぜん違う。そこにいるのは俺の知ってる恵瑠じゃない。平和を求めて、笑顔を愛してた彼女じゃない。ヘブンズ・ゲートを開こうとしている恵瑠だった。
「違うだろ? お前だって、本当はこんなこと嫌なはずじゃないのかよ?」
俺は恵瑠を見て聞いていた。本心が知りたくて。答えてくれなくたって、何度でも聞くつもりだった。
「厄介だなぁ、おいミカエル。こいつ消していいんだろ?」
だけど俺の言葉に動いたのは恵瑠ではなく見たことない男の天羽だった。赤い髪にサングラス。あからさまにガラの悪い男だった。そいつが前に歩んでくる。
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