天下界の無信仰者(イレギュラー)
お前、なにしてるんだよ……?
小さな影が六つ、高速で動き回っている。見ている感じどうやら五対一のようだ。天羽五体相手に一人で戦えるなんて、きっとエノクだ。
そこで俺はもう一つのことに気付いた。
「五体? あれ、他は誰だ?」
俺が知ってるのはミカエル、ガブリエル、ラファエルの三人だけだ。ラグエルっていうのもいたらしいが殺害されたみたいだし。
あと二人は俺の知らない奴だ。でも、地上に残った天羽は少ないって言っていたし。
「まさか……」
動き回る羽を持つ五つの影、その可能性に思考がゆっくりと止まっていく。あの中の影、その一つって……。
上空での戦況が傾いた。一人で戦っていたエノクがついに限界を迎え、連続する攻撃を受けたのだ。
最後は俺からでも見て取れるほどの巨大な炎の塊、五メートルほどはあるだろうか?
そこから放射される炎熱をくらい落下してきた。そのまま落ちると上空の風に当てられたか方向を教皇宮殿に変えぶつかってきた。
「うお!」
教皇宮殿の壁をぶち破る音が聞こえてきた。落下の衝撃も伝わってくる。
「上か?」
近い。そんなに遠くはないはずだ。俺はもう一度広場を見る。向こうも大変そうだが、ここはヨハネ先生に任せるしかない。
俺は下ではなく、来た道を戻ることにした。廊下を走り階段を上がっていく。ぶつかった場所は分かってるんだ、すぐに見つけられる。
俺は落下した場所を思い出しながらここだと思う部屋の扉に手を掛けた。しかしドアノブが回らない。俺は一旦距離を離して扉に体当たりした。
「おらぁ!」
扉が倒れる。部屋を見ると電気の点いていない会議室のようだった。しかし壁には大きな穴が開き中の机やら椅子やらは薙ぎ倒されていた。
そこにはエノクがうつ伏せに倒れており、その前にはミカエルが剣を振り上げて立っていた。やはりこの部屋だったか。
それにミカエルの背後には他の四人もいた。そこには初めてみる男の天羽もいたが、なにより驚いたのが――
「恵瑠ー!」
そこに、恵瑠がいた。
長髪に細く長い足、純白のドレスに身を包み、背中には八枚の翼。それは俺のよく知る恵瑠じゃなかったが、紛れもなく恵瑠だった。あの日一緒に過ごした大人の恵瑠だ。
「お前、なにしてるんだよ……?」
生きていたのか。生き返っていたのか。また会えた、表情が自然と笑顔になる。
でも、すぐに驚きがそれを上回っていた。恵瑠は天羽の姿をしていて、他の天羽と共に、エノクを倒そうとしている。
俺の声掛けに恵瑠は小さく顔を伏せていた。見られたくないものでも見られたように。俺は答えを待つが一向に返事が返ってこない。
「これはこれは、イレギュラー。まさかこのタイミングで君と会うとはねえ」
その代わりミカエルが話しかけてきた。持ち上げた剣はそのままに俺を見てくる。
「とりあえず君には感謝しておけばいいのかな? 私たちが仕掛ける前にずいぶんと荒らしてくれたおかげでスムーズにことが運べたよ。特にメタトロンを単身撃破するなんて思わぬ収穫だ。君、何者だい?」
不気味な笑みのままミカエルの目が細められる。鋭く俺を見る目は警戒しているようだった。
「おい恵瑠、なんとか言えよ」
だがそれを無視した。
「お前、なにをしようとしてるんだ? まさかヘブンズ・ゲートっていうのを開くつもりか? そんなことしたら大変なことになるんじゃねえのかよ!?」
「…………」
俺は恵瑠のことを知ってる。いつも明るくて、誰かの苦しみを放って置けない、優しいやつだって知ってる。
そこで俺はもう一つのことに気付いた。
「五体? あれ、他は誰だ?」
俺が知ってるのはミカエル、ガブリエル、ラファエルの三人だけだ。ラグエルっていうのもいたらしいが殺害されたみたいだし。
あと二人は俺の知らない奴だ。でも、地上に残った天羽は少ないって言っていたし。
「まさか……」
動き回る羽を持つ五つの影、その可能性に思考がゆっくりと止まっていく。あの中の影、その一つって……。
上空での戦況が傾いた。一人で戦っていたエノクがついに限界を迎え、連続する攻撃を受けたのだ。
最後は俺からでも見て取れるほどの巨大な炎の塊、五メートルほどはあるだろうか?
そこから放射される炎熱をくらい落下してきた。そのまま落ちると上空の風に当てられたか方向を教皇宮殿に変えぶつかってきた。
「うお!」
教皇宮殿の壁をぶち破る音が聞こえてきた。落下の衝撃も伝わってくる。
「上か?」
近い。そんなに遠くはないはずだ。俺はもう一度広場を見る。向こうも大変そうだが、ここはヨハネ先生に任せるしかない。
俺は下ではなく、来た道を戻ることにした。廊下を走り階段を上がっていく。ぶつかった場所は分かってるんだ、すぐに見つけられる。
俺は落下した場所を思い出しながらここだと思う部屋の扉に手を掛けた。しかしドアノブが回らない。俺は一旦距離を離して扉に体当たりした。
「おらぁ!」
扉が倒れる。部屋を見ると電気の点いていない会議室のようだった。しかし壁には大きな穴が開き中の机やら椅子やらは薙ぎ倒されていた。
そこにはエノクがうつ伏せに倒れており、その前にはミカエルが剣を振り上げて立っていた。やはりこの部屋だったか。
それにミカエルの背後には他の四人もいた。そこには初めてみる男の天羽もいたが、なにより驚いたのが――
「恵瑠ー!」
そこに、恵瑠がいた。
長髪に細く長い足、純白のドレスに身を包み、背中には八枚の翼。それは俺のよく知る恵瑠じゃなかったが、紛れもなく恵瑠だった。あの日一緒に過ごした大人の恵瑠だ。
「お前、なにしてるんだよ……?」
生きていたのか。生き返っていたのか。また会えた、表情が自然と笑顔になる。
でも、すぐに驚きがそれを上回っていた。恵瑠は天羽の姿をしていて、他の天羽と共に、エノクを倒そうとしている。
俺の声掛けに恵瑠は小さく顔を伏せていた。見られたくないものでも見られたように。俺は答えを待つが一向に返事が返ってこない。
「これはこれは、イレギュラー。まさかこのタイミングで君と会うとはねえ」
その代わりミカエルが話しかけてきた。持ち上げた剣はそのままに俺を見てくる。
「とりあえず君には感謝しておけばいいのかな? 私たちが仕掛ける前にずいぶんと荒らしてくれたおかげでスムーズにことが運べたよ。特にメタトロンを単身撃破するなんて思わぬ収穫だ。君、何者だい?」
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