天下界の無信仰者(イレギュラー)
この勝負、私たちが勝つ!
ついには均衡は崩れ、ミカエルは板に挟まれたゴムボールのように弾き飛ばされた。地上目掛け高速で突っ込む。
公道のアスファルトを何度も跳ねるように転がり地面を抉っていく。アスファルトの破片と下の土が飛び散り瞬く間に荒地へと変えていた。
ミカエルが作った轍に似た爪痕にはいくつもの破壊の跡と純白の羽がひらひらと宙に漂っている。
「くっぬぅ」
ミカエルは仰向けになっている体を起こす。落下した衝撃に表情を歪め目立った外傷こそないものの苦悶を浮かべる。
見上げる先にはビルより高いメタトロンの威容と宙に立つエノク。
反対にエノクは見下ろす。相手は天羽長。この負けられない戦いを前に倒さねばならぬ強敵だ。おまけに全力は封じられている。
それでも負け気はない。諦めることもない。ゴルゴダ共和国教皇としての誇りと信念に賭けて、エノクは守るために戦うのだ。
相手が天羽長であろうとも、メタトロンと共にならこの勝負、勝てる!
慈愛連立のツートップによる戦い。互いに強敵。互いに勢力のトップ。互いに退けない理由がある。
人類VS天羽。その命運は二人の戦いにかかっており、世界の危機は今まさに佳境に差し迫っていた。
「終わりだミカエル。この勝負、私たちが勝つ!」
エノクは剣を振り上げながらミカエルめがけ降下していった。この勝負に勝つ。仲間を守る。その決意を力に変えエノクはミカエルに迫る。
その、瞬間だった。
「ぬ!?」
エノクの側面から炎の弾が襲い掛かってきたのだ。いち早くそれに気づいたエノクは剣で振り払い放たれた場所を見た。
そこには波打つ空間があり、そこを通して別の場所から攻撃してきたようだ。さらにそこから伝わる気配に警戒が走る。
強大な気配だ。天羽長のミカエルと比べても劣らないすさまじい存在感。まるで抜身の剣か、むしろ高温で熱した鉄。
揺れる空間からなにかが現れようとしている。エノクは注目し、それは現れた。
「お前は」
その姿にエノクは目を丸くした。
自分と同じ宙に立つのは一人の女性。透き通った白い長髪。八枚の羽。女性にしては高めの身長。服装は純白のドレスを着ており裾からはすらりとした長い足が出ている。
美しい。絶世の美女だ。
優雅であり気品に満ちている。膨らんだ胸に袖から見える肌は白く、女性としての美を備えていた。
だが、引き付けられるのはなによりその目だ。
冷たい。まるで見る者を凍らせる極寒の眼差し。殺人者か、もしくはそういう世界で生きている者特有の冷たさだ。
「やあやあ、お目覚めはどうかな。あえてこういう言い方をするが、久しぶりだね。やはり君はそっちの方が似合っているよ?」
彼女の登場に地上からミカエルが挨拶を贈る。その表情は役者が揃ったことに笑みを浮かべていた。
そこにいるのはもはや栗見恵瑠という女学生などではありはしない。そのようなものは一線を画している。
彼女こそが、天界の門を開ける最後の鍵。
「審判の天羽、ウリエル」
天羽軍四大天羽ウリエル。二千年前、天羽の侵攻の際数々の街を焼き払い最も多くの犠牲者を出したとされる最悪の天羽。
それがここに現れたのだ。
「すでに復活していたのか……」
ウリエルが現れたことにエノクも警戒の眼差しで見つめる。
公道のアスファルトを何度も跳ねるように転がり地面を抉っていく。アスファルトの破片と下の土が飛び散り瞬く間に荒地へと変えていた。
ミカエルが作った轍に似た爪痕にはいくつもの破壊の跡と純白の羽がひらひらと宙に漂っている。
「くっぬぅ」
ミカエルは仰向けになっている体を起こす。落下した衝撃に表情を歪め目立った外傷こそないものの苦悶を浮かべる。
見上げる先にはビルより高いメタトロンの威容と宙に立つエノク。
反対にエノクは見下ろす。相手は天羽長。この負けられない戦いを前に倒さねばならぬ強敵だ。おまけに全力は封じられている。
それでも負け気はない。諦めることもない。ゴルゴダ共和国教皇としての誇りと信念に賭けて、エノクは守るために戦うのだ。
相手が天羽長であろうとも、メタトロンと共にならこの勝負、勝てる!
慈愛連立のツートップによる戦い。互いに強敵。互いに勢力のトップ。互いに退けない理由がある。
人類VS天羽。その命運は二人の戦いにかかっており、世界の危機は今まさに佳境に差し迫っていた。
「終わりだミカエル。この勝負、私たちが勝つ!」
エノクは剣を振り上げながらミカエルめがけ降下していった。この勝負に勝つ。仲間を守る。その決意を力に変えエノクはミカエルに迫る。
その、瞬間だった。
「ぬ!?」
エノクの側面から炎の弾が襲い掛かってきたのだ。いち早くそれに気づいたエノクは剣で振り払い放たれた場所を見た。
そこには波打つ空間があり、そこを通して別の場所から攻撃してきたようだ。さらにそこから伝わる気配に警戒が走る。
強大な気配だ。天羽長のミカエルと比べても劣らないすさまじい存在感。まるで抜身の剣か、むしろ高温で熱した鉄。
揺れる空間からなにかが現れようとしている。エノクは注目し、それは現れた。
「お前は」
その姿にエノクは目を丸くした。
自分と同じ宙に立つのは一人の女性。透き通った白い長髪。八枚の羽。女性にしては高めの身長。服装は純白のドレスを着ており裾からはすらりとした長い足が出ている。
美しい。絶世の美女だ。
優雅であり気品に満ちている。膨らんだ胸に袖から見える肌は白く、女性としての美を備えていた。
だが、引き付けられるのはなによりその目だ。
冷たい。まるで見る者を凍らせる極寒の眼差し。殺人者か、もしくはそういう世界で生きている者特有の冷たさだ。
「やあやあ、お目覚めはどうかな。あえてこういう言い方をするが、久しぶりだね。やはり君はそっちの方が似合っているよ?」
彼女の登場に地上からミカエルが挨拶を贈る。その表情は役者が揃ったことに笑みを浮かべていた。
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