天下界の無信仰者(イレギュラー)
なぜ戦うのか?
「話をしようじゃないか、人間」
ガブリエルからの誘いをペテロは立ちながら聞いていた。相手は敵、しかも四大天羽といえば天羽の最高幹部のようなもの。油断していい相手ではない。
しかし、ペテロはしばらくすると自分のイスを引きそこへと座った。
神徒。信仰者の極限。信仰を極めたことで成る神だ。全能である彼らからしてみればそれ以外の信仰者など相手にならない。
それは超越者のペテロも同じ。
勝てない。戦う前からそれは分かっていた。
そんな状況で相手から話を振ってきた。
乗るしかない。それに意図も気になる。なにか情報が得られるかもしれない。
こうして、ペテロとガブリエルの対談が始まった。
ペテロは引き締まった表情のままガブリエルに聞いた。
「なぜこんなことをする?」
「こんなこととは?」
ガブリエルは片手に持ったコーヒーカップを優雅に回しながら話を聞いていた。
「天羽降臨」
「それは前回か? それとも今回のことを言っているのか?」
「今回だ」
ペテロの緊張はさきほどから緩んでいない。勝機がなくともいつでも戦える気構えだ。それとは反対にガブリエルからは戦意はなく、昼過ぎのオープンテラスでくつろいでいるかのような余裕を見せている。
「過去のことはいい。しかし、ヘブンズ・ゲートはシカイ文書ではルシファー協定によって封鎖された。それを開けるのは違反のはずだ」
「その通り」
ペテロの質問に、ガブリエルははじめて声を固くして答えた。
「ミカエルはなぜ今になってヘブンズ・ゲートを開く?」
徐々にガブリエルの表情からも余裕が消えていく。回すコーヒーカップを見つめる目は冷たく、厳しい思い出に触れるようだった。
そもそもなぜ、この期に及んでヘブンズ・ゲートを開くのか? ルシファー協定を反故にしてまで。今まで沈黙しておきながらなぜ今なのか?
理由が分からない。たとえ天羽の使命だとしてもここまでの大規模な被害を出してまですることか?
だから聞く、なぜなのかと。
その問いにガブリエルは一言で答えた。
それは、予想のはるか外のものだった。
「魔王戦争」
「!?」
その言葉にペテロの目がわずかに見開かれた。
魔王戦争。それは近代に起きた最大の戦争だ。天下界ではどのような爪痕も災害も神徒の活躍によって瞬く間に直してしまうので戦場跡地というのは数少ないが、しかしこの戦争で出した犠牲は大きい。
なによりも神徒全盛期、四十人以上いた神が激減したことがこの戦争の異質さを物語っている。
まるで信仰に対する反逆。この戦争によって当たり前にあった信仰に対する信用は揺らいでしまった。
信仰心をどれだけ強めても、勝てない敵がいると。
「あれは、我々にも予想外の戦争、いや、存在だった。そもそも浮いているだろう、この天下界において魔王などと。神が大勢いた時代。その中で魔王というのは異質であり、そして、強大だった。お前も知ってはいるだろう」
魔王戦争が起こったのは約六十年前。終結は二十五年ほど前だ。魔王戦争後期ならばペテロも知っている。まだ若年であったため参加はしていなかったが。
だが、その戦争に参加した人を直に知っている。
「エノク様が参加された戦争だ」
教皇エノク。当時は聖エノクとして聖騎士の座についていた彼は多くの騎士を引き連れ魔王戦争に参加した。その場面は絵画にもなりゴルゴダ美術館に飾られている。
ガブリエルからの誘いをペテロは立ちながら聞いていた。相手は敵、しかも四大天羽といえば天羽の最高幹部のようなもの。油断していい相手ではない。
しかし、ペテロはしばらくすると自分のイスを引きそこへと座った。
神徒。信仰者の極限。信仰を極めたことで成る神だ。全能である彼らからしてみればそれ以外の信仰者など相手にならない。
それは超越者のペテロも同じ。
勝てない。戦う前からそれは分かっていた。
そんな状況で相手から話を振ってきた。
乗るしかない。それに意図も気になる。なにか情報が得られるかもしれない。
こうして、ペテロとガブリエルの対談が始まった。
ペテロは引き締まった表情のままガブリエルに聞いた。
「なぜこんなことをする?」
「こんなこととは?」
ガブリエルは片手に持ったコーヒーカップを優雅に回しながら話を聞いていた。
「天羽降臨」
「それは前回か? それとも今回のことを言っているのか?」
「今回だ」
ペテロの緊張はさきほどから緩んでいない。勝機がなくともいつでも戦える気構えだ。それとは反対にガブリエルからは戦意はなく、昼過ぎのオープンテラスでくつろいでいるかのような余裕を見せている。
「過去のことはいい。しかし、ヘブンズ・ゲートはシカイ文書ではルシファー協定によって封鎖された。それを開けるのは違反のはずだ」
「その通り」
ペテロの質問に、ガブリエルははじめて声を固くして答えた。
「ミカエルはなぜ今になってヘブンズ・ゲートを開く?」
徐々にガブリエルの表情からも余裕が消えていく。回すコーヒーカップを見つめる目は冷たく、厳しい思い出に触れるようだった。
そもそもなぜ、この期に及んでヘブンズ・ゲートを開くのか? ルシファー協定を反故にしてまで。今まで沈黙しておきながらなぜ今なのか?
理由が分からない。たとえ天羽の使命だとしてもここまでの大規模な被害を出してまですることか?
だから聞く、なぜなのかと。
その問いにガブリエルは一言で答えた。
それは、予想のはるか外のものだった。
「魔王戦争」
「!?」
その言葉にペテロの目がわずかに見開かれた。
魔王戦争。それは近代に起きた最大の戦争だ。天下界ではどのような爪痕も災害も神徒の活躍によって瞬く間に直してしまうので戦場跡地というのは数少ないが、しかしこの戦争で出した犠牲は大きい。
なによりも神徒全盛期、四十人以上いた神が激減したことがこの戦争の異質さを物語っている。
まるで信仰に対する反逆。この戦争によって当たり前にあった信仰に対する信用は揺らいでしまった。
信仰心をどれだけ強めても、勝てない敵がいると。
「あれは、我々にも予想外の戦争、いや、存在だった。そもそも浮いているだろう、この天下界において魔王などと。神が大勢いた時代。その中で魔王というのは異質であり、そして、強大だった。お前も知ってはいるだろう」
魔王戦争が起こったのは約六十年前。終結は二十五年ほど前だ。魔王戦争後期ならばペテロも知っている。まだ若年であったため参加はしていなかったが。
だが、その戦争に参加した人を直に知っている。
「エノク様が参加された戦争だ」
教皇エノク。当時は聖エノクとして聖騎士の座についていた彼は多くの騎士を引き連れ魔王戦争に参加した。その場面は絵画にもなりゴルゴダ美術館に飾られている。
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