天下界の無信仰者(イレギュラー)

奏せいや

宇宙に降臨する神話

 するとメタトロンは姿を消した。そして現れた先はここよりも遥か彼方の場所だった。

 いったい何光年先の宇宙だろうか。遠すぎて見ることもできない暗黒へとメタトロンは現れる。そんなところまでワープしてもなにもできないはず。行き過ぎだ。

 だが違う。メタトロンにはここまで離れなければならない理由があった。

 メタトロンは、巨大化していった。ただでさえ巨体だというのにその体がさらにでかくなっていく。その大きさに見る者がいれば衝撃を通り越して放心しただろう。

 その規模はまさに宇宙クラスだった。

 頭が太陽系を抜けた。体が銀河を超えた。巨大化に伴い周囲の星々を爆散させて、それでもなおその神秘は巨大化する。

 その神化が、ようやく止まった。

 全長、六十億光年。まさに神話の存在だ。巨大なんてものじゃない。宇宙の一部と言っても過言じゃない。暗黒の中で立つ純白の体は世界に降り立った神聖な光体。

 光輪(こうりん)がどの星よりも宇宙を照らしている。

 めちゃくちゃだ。巨神。そうとしか言いようがない。銀河すら飛び越えて、この大きさを表現する言葉すら浮かばない。

 そのメタトロンが腕を伸ばした。それにより宇宙に漂う星々が手の平にぶつかり消滅していった。人が動けば微細な風の流れが生まれるように、今のメタトロンが動けば星が壊れる。

 木星の十倍はある惑星が粉砕し、太陽の百倍はある恒星が塵と消えた。

 その巨大すぎる手に俺は飲み込まれていった。その指が閉じられメタトロンに捕まる。

 このままじゃまずい! 握りつぶされる。すぐさま空間転移で脱出しようとするが――

「くそ!」

 出来ない! メタトロンは次元を超越している。その手に包まれるということは空間、時間、平行世界への繋がりをシャットアウトされているようなものだ。逃げられない!

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