天下界の無信仰者(イレギュラー)

奏せいや

回想

 かつて、そう、かつて。

 まだこの世界に神がいなかった時代。

 奇跡も、神理も、信仰も、なにもなかった時代。

 その者たちは現れた、この地上へと。

 天の御使い。純白の翼を広げ、神の誕生を告げる者たち。

 そして、この地上から争いを無くすため、布教に努めた者たち。

 その使命は約二千年の時を経た今もなお達成できていない。

 天羽(てんは)の使命。神の教えを遂行する名誉。

 一度も。ただの一度も。栄光は掴むことなく、未練は二千年も続いている。

『なぜだ、なぜだルシフェル? なぜ我々を裏切った? なぜ神に逆らう!?』

 それはいったいどこで、なにを間違えたのか。

『気づいたんだ』

 人を守りたい。

 傷ついて欲しくない。

 争いを無くしたい。

『人の意思とは、自由だからこそ尊いと』

 崇高なるはずだったのに。

 誰もが望む願いだったはずなのに。

 なのになぜ、それを拒むのか。

『ミカエル。私はもう戦えない』

 願いとはなにか?

 思いとはなにか?
 
 救済とは、なんだったのか――

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