天下界の無信仰者(イレギュラー)
ミルフィア対メタトロン
猛然と発射される光線は大気を揺らしメタトロンの胸部に直撃する。
被弾箇所から白煙が上る。しかしメタトロンは不動のまま直立しており傷一つ負っていなかった。
「さすがですね」
だけどミルフィアは悲観していない。むしろ予想通りのように声はしっかりしている。
ミルフィアが再び右手を向ける。
すると今度は手の平に黄色の円陣が浮かび上がった。模様は回り出し中心に光が集まっていく。
ミルフィアは再び発射した。それは最初の五倍はあろうかという光線だった。膨大な火力に竜巻のような風圧が生まれその反動に地面の欠片が飛び散っていく。
ミルフィアの攻撃にメタトロンも危ないと思ったのか、初めて左腕でガードした。ミルフィアの放射を受け続け、腕を横に振り抜き光線をかき消す。
すさまじい攻撃と耐久の激突だった。それもそのはず。相手は最大クラスの神託物にして、その盾に矛を立てるのはミルフィアの真理。
思想統一。彼女が持つ二重属性の力のうちの一つ、弾圧。敵対する相手を倒し封殺することに特化した、彼女だけの力だ。
メタトロンは横に振った腕でミルフィア目掛け拳を打ち付ける。ミルフィアはすぐにその場を跳ぶと建物の三階付近まで跳躍し、さらに壁を蹴って宙を飛んだ。
「ふん!」
その最中ミルフィアが腕を振るう。
直後、メタトロンの全身を囲うようにいくつもの円陣が浮かび上がった。前後左右、数十にもなる黄色の魔法陣がメタトロンを囲い込む。これでは回避も防御も不可能だ。
「ハッ」
ミルフィアは開いた右手を閉じた。それを合図にして円陣が一斉に放射される。
光線の全発射。全身を打ち付ける光線がメタトロンを蹂躙する。
「すごい」
その光景に、俺はしばし見入っていた。圧巻だった。
ミルフィアの真理、思想統一。三柱の時代において俺だけを慕い、俺だけに従うという彼女の想いそのもの。それを力に変えて彼女は戦っている。
ミルフィアが地面に着地した。十メートル以上の上空から落ちてきたことによりズドンという重い音を響かせる。
見上げる先には白い煙が立ち昇っており様子が分からない。
やったのか、まだなのか。
するとメタトロンが小さく体を動かした。それだけで大質量が生む風圧で白煙が一瞬で掻き消える。
そこにいたのは、無傷で立ち続けるメタトロンの姿だった。
「そんな、うそだろ」
あれだけ受けてビクともしないのかよ。
怪物だ。ミルフィアも強いが、こいつも常軌を逸している。
これが慈愛連立最強の神託物、メタトロン。
こんなのどうやって倒すんだ?
「主、今のうちに!」
そんな俺にミルフィアが叫んだ。それでハッとする。
そうだ、迷ってる場合じゃない。ミルフィアが戦ってくれている。俺に出来るのはそれに報いることだ。
「うをおおお!」
走り出した。地面を蹴って宙を飛び、そのままフロート車にいるエノクに拳を打ち付ける。
だが、
「そこまでだ」
俺の拳は突如現れたペトロの剣によって防がれた。
「くそ!」
黄金の拳と剣で火花が散り、ペトロが剣を振り抜く。俺は回転しながら一番低い段に着地した。
「てめえのあいさつにはなんて返せばいいんだよ!?」
ミルフィアの負担を減らすためにも一秒でも早くエノクを倒したいのに。
「そこ退けペトロ!」
「退くわけがないだろう」
ペトロはエノクの前に立つと剣を構えた。
「教皇様。あなたの護衛を務めている以上、ここは私が引き受けます」
「仕方があるまい」
「ちっ」
二対一。メタトロンと戦っているミルフィアもそうだが、こっちも厳しいのは変わらないか。
だがチャンスはある。相手は油断していて二人同時にはかかってこない。その隙になんとか倒すしかない!
俺は突撃しペトロも前に出る。再び拳と剣撃が衝突した。
その間にもミルフィアとメタトロンの戦いは続いている。ミルフィアの放射が次々にメタトロンに直撃する中、それを意にも介さずメタトロンは攻撃を仕掛けていた。
 メタトロンの拳が振るわれミルフィアは地面を蹴って回避する。巨大な拳は地面を直撃し、圧倒的な破壊力が大地を爆散させる。
 さらには片足を持ち上げ走り回るミルフィアめがけ踏み潰してきた。その衝撃に建物のガラス窓が一斉に砕け散る。
巨体に裏打ちされた防御力と攻撃力。まさに完璧だ。こんなのどうやって倒せばいいのか。
だがミルフィアだって負けていなかった。ミルフィアの手の平の先に魔法陣が浮かぶが、背後にも無数の魔法陣が現れたのだ。幾条もの光線がメタトロンを襲っていく。
いくつもの直撃にメタトロンがよろめきその隙に『ミルフィアが姿を消す』。
直後現れたのはメタトロンの顔面だった。至近距離から手を向け魔法陣を展開する。この距離ならあるいは!?
だが白煙の中からメタトロンの巨腕が現れた。白煙から現れたため反応が遅れてしまい手の平が命中してしまう。
 まるでピンボールでも弾いたように、ミルフィアは上から下に吹き飛ばされてしまった! 
「ミルフィア!?」
ミルフィアは建物の中へと突っ込んでいった。俺はペトロの剣撃を打ち払い振り向く。
まずい、直撃した。
ペトロとの戦いを中断しミルフィアのもとへ走った。建物はばらばらに崩壊しその真ん中にミルフィアは仰向けに倒れていた。
「大丈夫かミルフィア!?」
声を掛ける。するとミルフィアは瓦礫の中から起き上がった。
立っているものの多少ふらついている。衣服は所々破けていた。まだ動けるみたいだが表情はキツそうだ。片腕で体を抱き締めている姿勢から痛みを耐えているのが分かる。
「ミルフィア、怪我は?」
「大丈夫です、まだ動けます」
そうは言うが、ミルフィアの声は引きつっていた。
当然だ、一撃とはいえあんなのを受けてまだ無事なだけでもすごい。普通なら即死しててもおかしくないんだ。そんな攻撃を受けてミルフィアは立ち続けている。
これ以上無理はさせられない。そう思い声をかけようとした。
「それに」
だが、ミルフィアの目は諦めていなかった。彼女の青い双眸は今でも戦意を湛え、自分の戦場を見つめていた。
「時間はかかりましたが、整いました」
「整う?」
ミルフィアの言っていることが分からず辺りを見渡す。だが特に変わったところは見られない。いったいなにが整ったというのか。
被弾箇所から白煙が上る。しかしメタトロンは不動のまま直立しており傷一つ負っていなかった。
「さすがですね」
だけどミルフィアは悲観していない。むしろ予想通りのように声はしっかりしている。
ミルフィアが再び右手を向ける。
すると今度は手の平に黄色の円陣が浮かび上がった。模様は回り出し中心に光が集まっていく。
ミルフィアは再び発射した。それは最初の五倍はあろうかという光線だった。膨大な火力に竜巻のような風圧が生まれその反動に地面の欠片が飛び散っていく。
ミルフィアの攻撃にメタトロンも危ないと思ったのか、初めて左腕でガードした。ミルフィアの放射を受け続け、腕を横に振り抜き光線をかき消す。
すさまじい攻撃と耐久の激突だった。それもそのはず。相手は最大クラスの神託物にして、その盾に矛を立てるのはミルフィアの真理。
思想統一。彼女が持つ二重属性の力のうちの一つ、弾圧。敵対する相手を倒し封殺することに特化した、彼女だけの力だ。
メタトロンは横に振った腕でミルフィア目掛け拳を打ち付ける。ミルフィアはすぐにその場を跳ぶと建物の三階付近まで跳躍し、さらに壁を蹴って宙を飛んだ。
「ふん!」
その最中ミルフィアが腕を振るう。
直後、メタトロンの全身を囲うようにいくつもの円陣が浮かび上がった。前後左右、数十にもなる黄色の魔法陣がメタトロンを囲い込む。これでは回避も防御も不可能だ。
「ハッ」
ミルフィアは開いた右手を閉じた。それを合図にして円陣が一斉に放射される。
光線の全発射。全身を打ち付ける光線がメタトロンを蹂躙する。
「すごい」
その光景に、俺はしばし見入っていた。圧巻だった。
ミルフィアの真理、思想統一。三柱の時代において俺だけを慕い、俺だけに従うという彼女の想いそのもの。それを力に変えて彼女は戦っている。
ミルフィアが地面に着地した。十メートル以上の上空から落ちてきたことによりズドンという重い音を響かせる。
見上げる先には白い煙が立ち昇っており様子が分からない。
やったのか、まだなのか。
するとメタトロンが小さく体を動かした。それだけで大質量が生む風圧で白煙が一瞬で掻き消える。
そこにいたのは、無傷で立ち続けるメタトロンの姿だった。
「そんな、うそだろ」
あれだけ受けてビクともしないのかよ。
怪物だ。ミルフィアも強いが、こいつも常軌を逸している。
これが慈愛連立最強の神託物、メタトロン。
こんなのどうやって倒すんだ?
「主、今のうちに!」
そんな俺にミルフィアが叫んだ。それでハッとする。
そうだ、迷ってる場合じゃない。ミルフィアが戦ってくれている。俺に出来るのはそれに報いることだ。
「うをおおお!」
走り出した。地面を蹴って宙を飛び、そのままフロート車にいるエノクに拳を打ち付ける。
だが、
「そこまでだ」
俺の拳は突如現れたペトロの剣によって防がれた。
「くそ!」
黄金の拳と剣で火花が散り、ペトロが剣を振り抜く。俺は回転しながら一番低い段に着地した。
「てめえのあいさつにはなんて返せばいいんだよ!?」
ミルフィアの負担を減らすためにも一秒でも早くエノクを倒したいのに。
「そこ退けペトロ!」
「退くわけがないだろう」
ペトロはエノクの前に立つと剣を構えた。
「教皇様。あなたの護衛を務めている以上、ここは私が引き受けます」
「仕方があるまい」
「ちっ」
二対一。メタトロンと戦っているミルフィアもそうだが、こっちも厳しいのは変わらないか。
だがチャンスはある。相手は油断していて二人同時にはかかってこない。その隙になんとか倒すしかない!
俺は突撃しペトロも前に出る。再び拳と剣撃が衝突した。
その間にもミルフィアとメタトロンの戦いは続いている。ミルフィアの放射が次々にメタトロンに直撃する中、それを意にも介さずメタトロンは攻撃を仕掛けていた。
 メタトロンの拳が振るわれミルフィアは地面を蹴って回避する。巨大な拳は地面を直撃し、圧倒的な破壊力が大地を爆散させる。
 さらには片足を持ち上げ走り回るミルフィアめがけ踏み潰してきた。その衝撃に建物のガラス窓が一斉に砕け散る。
巨体に裏打ちされた防御力と攻撃力。まさに完璧だ。こんなのどうやって倒せばいいのか。
だがミルフィアだって負けていなかった。ミルフィアの手の平の先に魔法陣が浮かぶが、背後にも無数の魔法陣が現れたのだ。幾条もの光線がメタトロンを襲っていく。
いくつもの直撃にメタトロンがよろめきその隙に『ミルフィアが姿を消す』。
直後現れたのはメタトロンの顔面だった。至近距離から手を向け魔法陣を展開する。この距離ならあるいは!?
だが白煙の中からメタトロンの巨腕が現れた。白煙から現れたため反応が遅れてしまい手の平が命中してしまう。
 まるでピンボールでも弾いたように、ミルフィアは上から下に吹き飛ばされてしまった! 
「ミルフィア!?」
ミルフィアは建物の中へと突っ込んでいった。俺はペトロの剣撃を打ち払い振り向く。
まずい、直撃した。
ペトロとの戦いを中断しミルフィアのもとへ走った。建物はばらばらに崩壊しその真ん中にミルフィアは仰向けに倒れていた。
「大丈夫かミルフィア!?」
声を掛ける。するとミルフィアは瓦礫の中から起き上がった。
立っているものの多少ふらついている。衣服は所々破けていた。まだ動けるみたいだが表情はキツそうだ。片腕で体を抱き締めている姿勢から痛みを耐えているのが分かる。
「ミルフィア、怪我は?」
「大丈夫です、まだ動けます」
そうは言うが、ミルフィアの声は引きつっていた。
当然だ、一撃とはいえあんなのを受けてまだ無事なだけでもすごい。普通なら即死しててもおかしくないんだ。そんな攻撃を受けてミルフィアは立ち続けている。
これ以上無理はさせられない。そう思い声をかけようとした。
「それに」
だが、ミルフィアの目は諦めていなかった。彼女の青い双眸は今でも戦意を湛え、自分の戦場を見つめていた。
「時間はかかりましたが、整いました」
「整う?」
ミルフィアの言っていることが分からず辺りを見渡す。だが特に変わったところは見られない。いったいなにが整ったというのか。
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