学生騎士と恋物語《パンドラボックス》

福乃ミナ

第20話 動揺


『よ、避けた〜!?月野流奥義を避けれる人間なんてこの世に存在したのかぁ〜!?』
月野流奥義はここ十年、避けるどころか見ることすら出来ない神速の一閃。それを避けるという行為は少なからず、蛍に精神的なダメージを与える事が出来る。
「そんな…あり得ない!?」
奥義を避けられた事に動揺しているのか蛍の手は震えていた。
『おい亜紀斗。あいつの様子少し変じゃ無いか?』
さっきまでずっと黙っていたクロ助が急に喋る。
様子か?確かにそう言われればそうだな。
動揺してるにしても明らかに様子がおかしい。手の次は足まで震え出している。
『あれは動揺…いや、あれはもう戦意をほぼ失ってる。それにあの状態じゃあまともに刀を振ることすら出来ん』
「そう…なのか?」
蛍を見る限り、まるで親に怒られたかのようにビクビクしている。よほど精神的にきたのだろう。
「そんなはず無い!!そんなはず無い!!そんなはず無い!!!お父さんの奥義が見破られるはず無い!!だってあの奥義は…!!」
「おい月野…」
「ハッ!!来るな!!」
様子がおかしい事に心配をし、亜紀斗が蛍に近づくと蛍は太刀を亜紀斗に向かって振り回す。
「おい!月野!!」
「来るな!来るな!来るな!!!」
亜紀斗が大声で蛍の名を呼ぶが、蛍には全く聞こえていない。
『こいつ、何も聞こえてないぽいぞ!』
「そうみたいだな!クソッ。おい月野止まれ!」
そう言って亜紀斗は蛍の太刀を素手で掴む。当然のごとく手からは血が流れて来る。
「ゔっ!」
太刀を掴むも蛍はまだ暴れる。
「離せ!離せぇ!!」
拗ねを蹴ったり腹を蹴ったりしながら亜紀斗の手を必死に振り外そうとする。
『亜紀斗!太刀の動きを押さえたってあいつ自身が止まらなきゃ意味ないぞ!』
んな事分かってるよ!止める為に太刀を握ったんだよ!
そう言うと亜紀斗は太刀を自分の方へ引き寄せ、蛍自身を亜紀斗の近くまで寄せる。
「これでもくらって頭冷やせよこんチクショウが!!」
亜紀斗は思い切り蛍の頭に頭突きをする。
その衝撃で太刀から手を離し、蛍は地面に落ちる。そしてピクリとも動かなくなった。
「審判、早く結果を伝えてくれ」
それを聴くと審判は焦りながらも大声で叫ぶ。
「勝者、月影亜紀斗!」
ワァー!!!!
観客の歓声が上がり、会場から亜紀斗コールが聞こえて来る。
『決着〜!!!激戦を制したのはまさかまさかの月影選手だぁ!これはとんでもないジョーカーが潜んでいたぞぉ〜!!!』
「さすが放送の人だね」
「そうだな。しかし…」
「ん?」
「それは少しやり過ぎだ」
そう言ってリリーに一発のデコピンを打つ。
「いた〜いぞカゲッ子!君は加減とゆうものを知らんのか!?」
「加減を知らないのはお前だろ」
そう言われリリーはボロボロになった会場を確認すると、手を頭に当てあははと苦笑いをする。
「笑って誤魔化すな」
「…はい」
何だろう、この勝ったのに素直に喜べないこの気持ち。むしろ闘技場をこんなにめちゃくちゃにして申し訳ない感じがする。
そう思い蛍を拾い上げ、闘技場を退場する。







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コメント

  • ノベルバユーザー128919

    めっちゃおもしろいです!
    わくわくしてます!

    1
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