学生騎士と恋物語《パンドラボックス》

福乃ミナ

第14話 学年別トーナメント戦開幕

トーナメント戦の朝は早い。
午前八時には開会式が始まり、組み合わせが発表される。生徒達は皆グランドに集合し、先生達の指示があるまで待機する。
皆がグランドに集合している中、亜紀斗は一人赤月と一緒に別室で待機である。
「何で俺だけ別室なんすか?」
「それは私が聞きたい」
本来なら赤月はトーナメント戦の司会進行を任されていたが急遽変更が入ったのだ。教師って結構大変なんだな。
別室で待つこと二十分。一人の教師が入って来て、赤月と何やら相談をしている。表情を見る限りどうやら只事では無いらしい。
「何だと!!それは本当か!?」
赤月は急に大声を上げ、入って来た教師の胸ぐらを掴む
「それは上に報告したのか!?」
「いえ、それが…」
それから先は小声で言われよく聞こえない。
「くそッ!!」
掴んでいた手を離し、入って来た教師を外へ追い出すと赤月は亜紀斗の元に近づき耳元で喋る。
「今から言うことは全て忘れろ」
「はい、分かりました」
急にそんな事を言われ、少し混乱するも赤月の話に耳を傾ける。
「お前の対戦相手が行方不明になった」
「朝かですか?」
「いや、昨日の晩だ。外へ出掛けたきり帰ってこないそうだ」
「その子の特徴は?」
「身長は百六十センチくらいで髪の色は黒。ほっぺに引っかき傷があるぐらいだ。もしかして昨日会ったのか?」
「会ってはいないです。ただの確認のために聞いただけです」
完全に納得はしてないものの、赤月はそうか、と頷く。
でも少し、いやだいぶ変だ。生徒一人行方不明になったら大問題のはず、こんな行事をしてる暇なんて無いだろ。
「一応、念のために聞きますが、先生達の言っていた上の人はなんて言ってましたか?」
その単語を聞くと赤月は一瞬、話すかどうか迷うそぶりを見せ、亜紀斗に言う。
「この問題を外部に漏らすな、だそうだ」
なるほど。この学園の運営に関わる問題はなるべく外部に漏らしたく無いらしいな。
「だから俺って訳ですか?」
「ああその通りだ。今、会長と副会長も必死になって捜しているが、正直見つかる気配が無い。それにあの二人はそろそろ役員の仕事がある」
「それで試合が一番最後にある俺を使う気ですね」
「ああ。こんな事生徒に頼むのもおかしい話だが、こんな最悪な非常事態に頼れるのはお前だけしかいない。恥を忍んで頼む」
赤月は自ら自分のせいでも無いのに頭を下げる。
「分かりましたから頭をあげてください」
「本当に良いのか?」
「はい。それでは時間が惜しいので」
そう言って亜紀斗は亜紀斗は別室から走って出ると、キュウに話しかける。
「おいキュウ。今の話し全部聞いてたか?」
(ああ。全部聞いたよ。今捜しておる)
「すまないな。こんな事に付き合わせて」
(気にするな主。いつもこんな感じだったろう?)
「そうだったな」
(にしても、情報が少し足らんな)
確かに。名前は分かっているにしても、肝心の何処で消えたのかが分からない。
悩みながら学園の外を出ると、目の前に小さな人形を持った少女が亜紀斗の目の前に現れる。今の季節は春、それなのに赤いカラーの無地のワンピース。それに麦わら帽子。あまりにも不思議な格好をしているので思わず足が止まる。
(主、何を止まっておる。時間が限られておるのじゃぞ!!)
「すまない。けど前に人がいて…」
                                         

(人?何処にもおらんぞ。人なんて)




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