学生騎士と恋物語《パンドラボックス》

福乃ミナ

第5話 入学式での失敗《後半》

「では有難く…って違うわ!!」
危ない。あやうくこれ持って帰る所だった。
「多分これだろう」
また胸ポケットから封筒を取り出す。あんた一体いくつ持ってんだよ。後、自分でも多分って言ってるよこの人。本当に大丈夫?
少し半信半疑になりながらも封筒を受け取り、中身を確認する。
「え〜っと。『月影亜紀斗さん入学おめでとうございます』って家の親戚かよ」
「あいつは礼儀正しいからな」
いやこれ正しい以前に俺とこの人初対面だよ。そんな人にこんな事書く?俺だったら書かないよ。
そんな事を思いつつ文章を読み上げる。
「『あなたは入学式とゆう大事な日に堂々と寝ていましたね。私は今まで色んな生徒を見て来ましたけど、あなたみたいな人は初めて見ました』」
なんか嫌な初めてだな。もう読むのも面倒だから以下略。
「『最後に学年別に最強トーナメント戦をしますのでそれまでに準備を済ませておいて下さい』って言うトーナメント戦?」
パンフにはなかった行事だな。
「それは今年から始まる新しい行事だ。どの学年も初めてだからな。だからパンフレットには書く必要が無いからな」
たしかに。俺達が入って来たと同時に始まる行事。それならパンフには書く必要が無いな。
「開催日時は四月の十日、十一日、十二日の三日間だ」
「四月の十日…今日合わせて、後一週間!?」
「そうだ。それまでに専用武器、固有スキル、それから魔獣のしつけ。他にも色々あるぞ」
「入学してやる事沢山あるじゃねえかよ」
新入生可哀想に。俺もそうだけど。
「しかも今日から授業が始まるがな」
「…はい?」
授業?今日から、始まる?
「ちょっと何言ってるかわかんないすっね」
「分かれ」
と一発の拳骨をくらう。
痛い。この人本当に容赦ないね。
「といつもならそう言いたいが、お前だけは例外だ」
「例外?」
「ああ。入試の試験でお前は魔獣のしつけ以外は全て満点。これには私も驚かされたよ」
俺もビックリだ。まさか満点とは八十点くらいしか取れてないと思っていたが、まさか満点とはな。取り敢えず拍手くらいはしとくか。
手を叩くと赤月は亜紀斗を睨む。
「何で睨むんすか?怖いよ」
「普通ならここで褒めてやりたい所だが、魔獣のしつけは0点これはどうゆう事だ?」
「さぁ〜?」
「さぁではない。解答用紙を五回くらい見たぞ」
五回も見たって暇人かよ ︎
と言いたくなるが、そこはぐっとこらえる。
『しつけは苦手だからな。別に何の問題もないでしょ」
「多アリだ馬鹿者」
次はハリセンで叩かれる。どっから出したそのハリセン ︎この人の服、ドOえもんのポケットだよ絶対。
「何が問題何ですか ︎後いちいち殴るな ︎」
「学年別トーナメント、九州大会、そして全国大会。何処の大会でも魔獣とのタッグ戦だ。そこで魔獣を使えないとどうなる?」
「こっちが不利?」
「そうだ。魔獣を扱えないと二対一。明らかに不利な状況になる。しかもうちはどの大会でも入賞を逃している。これ以上は負けられない」
かすかに、そうかすかに赤月の声は少し震えていた。それ程負けが続いているのか。
だがあの副会長でも勝てないほどの相手がいるのか?
そして震えていたのは声だけではなく手も震えていた。
「これ以上は学園の存続にも関わる」
「そんなに負けが続いているんですか?」
「ここ十年くらいな」
十年。そんなに負けが激しいのか。
「だからどの学級も慌てているんだよ」
入学初日に授業があるってそうゆう事だったのか。
それを聞かされるとどうも調子が狂う。いつもそうだ。こうゆう学園の存続とかあいつは今日が最後だから。それを聞くといつも調子が狂ってしまう。
「そんな事俺に言われても…いや、何でも無いです」
やはり言えない。あんなことは。
赤月に背を向けると、失礼しますと言って体育館から出る。

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