廃汰的引きこもり全盛

紙尾鮪

廃汰的引きこもり全盛

 君は、今、後悔と達成感に包まれている。
 それは何故か。
 君は唯一の肉親である母親を殺したからだ。

 君は先程、過去に一度だけ小規模な大会であるが、一度だけ取ったトロフィーを使い母親を殺した。

 何故殺したか。

 それは君が一番分かってはいるだろうが。
 君の母親は、君の事を分かっている振りをし、自分の体裁を守るため、何としてでも君を社会復帰させようとした。
 それは一年以上にも及び、君は遂に心を病み母親を殺してしまった。

 のだと君は言い聞かせている。
 君は気付いている。
 君の母親は、本当に君の事を大事に思っていた事に。
 君は幼少の頃から逃げ出す癖があった。

 逃げて逃げては、また逃げる。
 そして、逃げ場のない家にへと引きこもり、母親の脛をかじり生きていた。
 そして、君は前途も考えず、目の前に存在する厄介を片付けた。
 逃げる事しか出来なかった君がした唯一の行動とも言える、実に勇敢な行動だった。

 君は、厄介者を片付けた事によって、若干の晴れやかな感情に包まれつつ、じわじわと君の心を蝕む後悔と罪の意識により、目を回しそうになっている。

 小心である君は、すぐに負の感情に飲まれた。
 そして、君は稚拙ではあるが今後の生活を考える。

 しかしながら、今やほとんどオートメーション化された炊事すらも出来ない君はどう生き長らえるだろうか?

 出来合いの物を食べ続けるのも良いだろう、しかし、それにしても金銭に関する問題が出てくる。
 更には、君の母親の死体はどうするのだろうか?

 何れ異臭がすると近所の人が通報するだろう。
 その時、君が苦手な、人との交流をしなければならないし、娯楽も何もない場所にへと入れられ、嫌いな運動も余儀なくされるだろう。
 君はそんな生活は耐えられるだろうか?



 驚いた。
 君がまさか外へと出るとは。
 随分と行動的になった様だ。
 しかし、外へ出る理由となったのが、母親の死を隠すために近所の人を殺しに回るためとは。

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