勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

ブローメド=ジャスゼッタイ

 何時からだろうか。物心が付いた時からだろうか。それもと生まれた時からだろうか。
 それとも前世からそうだったのかもしれない――形あるものが破壊されていく瞬間が美しいと感じたのは。
 それは心の奥底でずっと眠っていた感情。それが呼び覚まされたのが両親が魔物に食い殺された時だった。
 守る為に戦闘経験など皆無に等しい父が護身用に買っていた武器を手に魔物に立ち向かっていった。
 その光景は眼を瞑れば昨日のように思い出せる。母親が手で視界を隠し、聞こえてきたのは
 悲鳴と魔物の下種な笑い声と何かが飛び散る音。

 そして次に訪れたのが衝撃と母親の悲鳴。衝撃により気を失い――目を覚ました時には
 ボロボロに使われている母親の姿と上半身だけになった父親の姿だった。
 完全に壊れたまま生きて魔物と繋がっている母親、周囲を真っ赤に染めて上半身だけになった父親。
 本来あるべきではない姿に変わってしまった二人を見て心の底からある感情がこみあげ来た瞬間だった。

 今でも思い出せる、あの時の興奮を、高揚を――

「あ……ぁ……ぁあ、美しい」

 零れたのはこの場に相応しくない言葉。まるで愛おしいモノを見るかのような蕩けきった表情。
 そしてもっと美しいものを見たいという欲求が生まれ、立ち上がり転がっていたガラスの破片を手に
 目の前の獲物に必死になって腰を振っている魔物の背後から思いっきり首目掛けて振り下ろす。

「あぁ、なんて美しい……あぁああああああああぁあああああァァアアァアア、
 美しいィ、美し――ィ!!素晴らしいですゥ」

 気が付いてしまったのだ、破壊されたモノではなく破壊される瞬間が最も美しいのだと。
 同時にそれが快楽に繋がり――得られた快楽を忘れられるハズがなく、
 その日を境に彼の世界は芸術へと変化した。
 破壊こそこの世の美、破壊こそ最高の快楽――

「私は『新魔王軍』破壊の魔王 ブローメド=ジャスゼッタイこの世界を破壊に導く存在ですゥ
 皆さんにもこの美しさを分けてあげましょうゥ!!」

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