勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

迷宮の情報

「此処にはいろんな所からいろんな奴がやってきている。
 もっと知りたいたければそういうやつに話しかけるんだな」

「はーい」

 元クラスメイトであり現勇者である彼らが行方不明だと言う、
 正直に言ってしまえばそこまで気にしていなかったどうでもよい情報を得ることができた。
 相変わらず神と結託して何かよからぬことでもしようとしているようだ。
 まぁ、勇者たちからすればそれが正しいことだと思っての行動なのだろうが、
 いや、そもそも一般からしてもそれは正しい行いなのだろう。
 何方かというと俺のほうが悪か。

 ふと、思い出したように自分の立場を考える。
 世間一般からしてみれば魔王と協力関係?である俺のほうが悪だ。
 よくよく考えてみれば俺って相当悪い奴なんじゃね?

「ねぇ、なんか大きな変化があったこととかない?」

 そんなくだらないことを考えながら端のほうのテーブルで酒を飲んでいる二人組に声をかけた。
 あぁん?と睨まれはしたが、此方が子供ということもあり、それ以上のことはなく、
 頭をポリポリと欠きながら口を開いた。

「そうだなー、あっ、そうだ、こいつ結婚するんだってよぉ!」

「お、おい!やめてくれ!!」

 ガシガシと肩を組んで結婚のことを大声で自慢する男、
 一方、肩を組まれている方は見た目の割にしゃいの様で顔を赤くしていた。
 酔っぱらっているのか、照れているのかわからないが――どうでも良い情報である。
 苦笑いをしながらそそそーっとその場から去ることにした。

 それからも様々な人々に話を聞くと中々面白い情報がいくつか集まった。
 あるお爺さんから聞いた情報は、【国が出来たんじゃぁ……魔物の】
 魔物の国ができたようだ。一体だれがどのようにしてなのかはわからないが、
 知性ある魔物が誕生したということで間違いないだろう。
 おそらく遠くない未来に何か起きるだろう。

 もう一つの情報は、酔っぱらいの女からで
 【迷宮が出来てね、だ~れも最下層に着いたことがないんだってさ~】
 最初はどうでも良い情報だと思い聞き流していたのだが、
 その後も数人の口から迷宮という言葉が飛び出し、
 ある青年の言葉で興味がひかれることになった。
 それは、小さな女の子と竜人族と思われる人物が迷宮に入ったきり出てこなくなったと思えば
 数日後、無傷で地上に現れ――それも数年に一回かならず現れるという都市伝説の様な事がある。
 
 小さな女の子、竜人族、この二つの言葉だけで確信を持てたわけではなかったが、
 どうしてもヤミとライラのことが浮かんでしまい、本能的にその情報ばかりあつめるようになっていた。
 だが、そんなすぐに情報は集まらず、その場にいる全員に聞いても
 場所や迷宮の名前など一切情報を得ることができなかった。
 
 今夜にでももう一度来てみよう。
 そろそろ戻らないとポチに噛み殺されかねないのでさっさと宿屋に向かう。
 まだ寝ていることを願って扉を開けたのだが――

「……おはよう」

『ああ、そうだな、おはよう』

 獣姿のポチが敵意をむき出しにするように牙を見せて待ち構えていた。
 明らかに怒ってらっしゃる。ここは敢えて何も言わずにポチに近付き、
 モフモフ~っとする。

『こら、何を胡麻化そうとしているんだ?』

「あーバレた?まぁ、何もしてないぞ。ただ情報収集に冒険者ギルドに行ってただけだ。
 ということでこれからは依頼を受けダラダラしつつ迷宮の情報を集めるぞ」

『ほう、我を置いて行くとはなかなかに良い度胸をしているな。
 まぁ、飛び出すギリギリに帰ってきたから許そう。
 それで、迷宮、そこには何があると言うのだ?』

 飛び出して探しに行こうとしていた様だ。獣姿の理由もそれだろう。
 怒りを収めてくれ、その場に伏せてくれて全身でモフモフを感じられるようになった。
 
「迷宮に何があるかは分からない、それも含めての情報収集だ。
 まぁ、そんなに急ぐことはないからゆっくりと確実な情報を集めていこうじゃあないか」

『ふんっ、まぁ何があっても良いさ。ソラが目を付けると言うからには
 強い魔物がいるのだろう?それだけで満足だ』

 強い魔物がいるかどうかは分からない――が、もし俺の仲間が関わっているのならば
 その迷宮があいつの仕業だと言うのならば、そこは確実に鬼畜な迷宮と化していることだろう。

「あまり期待はしないほうが良いが期待はしておくが良いぞ」

『どっちなんだ――まぁ、期待はしておくぞ』

 それから小一時間程モフモフを楽しんだ後、部屋を後にした。

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