勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

確認の合間に

「レディアたちもいる」

「本当だ。気絶してる」

 小動物みたいにちょこちょこと動き回りレディアの元へ行き、
 頬を突っつきながらそんなことを発していた。
 もっと別に気にすべき点があるだろうに、不思議な双子さんたちだ。

「君たちにお願いがあるんだけど、良いかな?」

「ん~どうしよう」

「どうする?」

 双子は互いの顔を見合いながら首を傾げていた。
 本当に似ていて見分けがつかないので人形さんの様に感じる。
 
「いいよ!」

「聞いてあげる」

 向かい合いながら一言も発していなかったが、何やら話がまとまったようで
 無事お願いを聞いてくれることになったようだ。
 
「この大人たちの事任せても良いかな。レディアが起きるまでの間で良いからさ」

 流石にこんな子供にこの大量の大人たちを運んでくれとまでは頼まない。
 レディアたちが目を覚ますまで面倒を見ておいてほしいと頼むだけだ。
 彼女たちが目を覚ましたらそこからは全て大人である彼女たちに任せてしまおう。
 人任せにするなとか言われそうだが、そんなことは気にしない無視だ。
 此処まで頑張ったのだから、あとは任せても良いだろう。うん。

「え~つまんない」

「つまんない~」

「え~じゃあ今度甘い物買ってあげるからお願い~」

 やはり子供は飴ちゃんなどの甘い物が大好きらしい。
 買ってあげると口にした瞬間、二人とも満面の笑みを浮かべて見つめあい――

「「いいよ」」

 と口にしてくれた。甘い物おそるべし。
 
「ん、ありがとう。それじゃまた」

 やっふい!やっと解放されたぞ!
 心の中でそう叫びながらルンルンと迷宮から出ていく。
 意外とあの迷宮の中は窮屈で仕方がなかったのだ。
 スキルが使えない、鳥肌が立つような嫌な雰囲気。
 それらから解放されて俺は幸せだ。

「さてさて依頼の報告にいくぞ~」

「うむ」

 冒険者ギルドに向かい早速カウンターに向かったのだが、
 闇精霊人《ダークエルフ》の受付嬢さんに物凄い顔をされてしまった。
 
「な、なんで貴方たちがいるんですか!?迷宮に行ったはずじゃ!?
 え、じゃあレディア達は――っ!」

 怒鳴り声を上げ叫び、最後は悔しそうに自分の唇を強く噛みしめていた。

「あいつらなら気絶していたぞ」

「は?」

 レディア達は俺たちの後を追って迷宮に来ていたのだろうか。
 あの双子やお兄さんも同行しているとなると、普段から仲が良いメンバーなのか、
 彼女が依頼を出して集まったメンバーなのかだ。
 この受付嬢さんが知っているとなると、恐らく後者なのだろう。

「他にも情けない人間どもを迷宮の入り口に転がしておいたからあの双子が面倒を見ているだろう」

「は?じゃあ、貴方たちはあそこから無事に帰還したという訳ですか?」

「そうだよ~だから依頼完了の報告にきた~」

 信じられないといった表情をしているが仕方がないだろう。
 見た目はポチも俺も普通なのだから。これがもし、ムキムキの戦士だったり
 しっかりとした鎧に身を包んでいれば信憑性は増すのだろう。
 
「ほ、本当ですか?」

「うん。確かめてくると良いよ」

「わかりました。これから確認に行かせるので、また後で来てください」

「わかった」

 ん~失敗してしまった。こんなことになるなら行方不明者の一人や二人連れてくれば良かった。
 まぁ、別に良いだけどさ。報酬の全てが気になっただけであって
 そこまで急ぐものではないのだから。
 
「さて、ポチさんやい」

「分かっている。これだ」

 暇な時間を何しようかと聞こうとしたのだが、
 すでにポチはやることを見つけており掲示板から一枚の依頼の紙を手に取っていた。

「なになに」

 依頼にはオーンという魔物を討伐してくれと書かれていた。
 この魔物はエリルスの記憶に無いので恐らく新しめの魔物だろう。
 場所は水の都からそこまで遠くない場所の様だ。
 報酬は金貨一枚。魔物一体を討伐するだけで金貨がもらえるのは中々良い報酬だ。

「良いね。受けようか」

 闇精霊人《ダークエルフ》の受付嬢さんに依頼の紙を渡し、
 できればこの依頼が完了するまでに確認を終えてくれていると助かると言ってから
 冒険者ギルドを後にした。
 ゆっくり歩くこと一時間程度で目的地の川沿いにやってきた。

「あれか」

 既にオーンとやらの気配を感じ取っているポチは川の中を指さした。
 俺からは何も見えないがどうやら水中にすんでいる魔物らしい。
 何気に水中に済む魔物と戦うのは初めてかもしれない。

「くるぞ」

 バッシャーと盛大に水しぶきを上げながら姿を現したのは水龍の様な魔物だった。
 身体も顔も龍そのものだが、大きくて立派な角が二本生えている。

「おぉ、強そう」

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