勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

帰りましょう

三日ほど他サイトで公開していた数話を投稿しますが、それで此方の更新は最後とします。



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「貴様がオウーヌで良いんだな」

「あ、ああ……お前たちは一体……」

 ポチが確認を取ると、この人がオウーヌさんらしい。
 良く四肢が無くても生きていけるな。これはあの化け物の仕業なのかもしれないな。
 よくわからなかったが此処にいる人間たちから魔力を集めていたらしく、
 抵抗できない身体にして半永久的に魔力を吸い出そうとしていたのだろう。
 本当にくそみたいなことを考える。

 まぁ、もう終わったことだし、兎に角此処にいる全員の息はあるようだ。安心だ。
 
「貴様があの糞みたいな手紙を書いたんだな」

「手紙……ああ、確かに俺が――っ!」

 オウーヌさんの髪の毛を引っ張り持ち上げてそのまま手を離した。
 当然、抵抗する手段がない彼の顔が地面にたたきつけられる。

「誰が可哀そうな奴だ。誰が大莫迦者だ!貴様、誰に向かって話を――」

 抵抗できない相手を一歩的にいたぶるポチの姿を見て少し心が痛んだが――

「っははは……」

 何故だが鼻血を出しつつもオウーヌは笑っていた。
 頭を打ちすぎて何処かおかしくなってしまったのだろうか。

「何を笑っている」

「すまない、まさかこんな日が来るなんてな……」

「……何だ貴様」

 痛みからだろうか、それとも喜びからだろうかオウーヌの目から涙が零れていた。
 流石にこれにはポチもひいてしまいオウーヌから手を放していた。

「信じられねぇ、俺たちは助かったんだ……」

「ソラよ、こいつ壊れてしまったぞ。どうしたら良いのだ」

 別に壊れてしまった訳ではないだろ。
 本当に死を覚悟してあの手紙を書き残し突撃していったんだ。
 それがよくわからない俺たちによって命を救われたんだ。きっと嬉しいんだろうさ

「そんなものなのか」

「そんなもんだろ。取り敢えず、そいつが回復するまでいたぶるのはやめてやれ。
 流石にその恰好で一方的にボコボコにするのは気分が悪い」

「む、そうか……そうだな。雑魚をいたぶっても楽しくないな」

「ああ、そうだそうだ」

 理解してくれたようでなによりだ。
 さて、これからどうしようか。この人間たちを連れて帰るにもスキルが使えないんじゃどうしようもない。
 此処はやはりポチさんに頼るしかない様だ。

「ということで頼めますでしょうか」

「まぁ、良いがこいつらを一か所に集めてくれ」

「わーい、流石ポチさんだ!」

 ポチに言われた通り人間たちを優しく持って一か所に集めてあげる。
 途中、何度も泣きながらお礼を言われたりして悪い気分ではなかった。
 
「本当にお前たちは何者なんだ?」

 最後にオウーヌさんの事を運ぼうとしたらそう聞かれた。
 此処でいつもなら人間だと胸を張って言い切れるところなのだが、
 この人達は俺が爆発して復活したところも見ているのだ。
 人間と言っても絶対に通じるわけがない。

「……いや、やっぱ良い。お前たちが何者であろうと、
 俺たちの命の恩人ってことは変わりないからな。ありがとう。
 今度改めて礼をさせてくれ」

 困っていると自ら訂正してくれた。オウーヌさん結構話が分かる人かも。
 
『ソラよ、何か来るぞ』

「ん」

 最後の一人であるオウーヌさんを運び終わった後、ポチが何かの気配を感じ取り
 警戒するように伝えてきた。一応短剣を具現化させ扉の方を向き待っていると――
 
「あれ」

 道中に沸いていた気持ち悪い魔物が気絶しているであろう二人を連れてきて
 何かをする訳でもなく乱暴にこの部屋に放り投げ何事なかったかのように壁の中に消えていった。

「……レディア?」

「怖そうな顔つきのお兄さんだ」

 どうやら運ばれてきたのはオウーヌさんの娘レディアと、
 街中で色々なことを親切に教えてくれたお兄さんだった。
 何故此処にいるのかは不明だが、ついでだしこいつらも運んでしまおう
 ポチ、手伝って。

 装備を身に着けている二人を持ち運ぶには少々力不足なので
 此処はポチに手伝ってもらうことにした。
 
「レディアなのか?」

「そう。多分だけどオウーヌさんの事を探してほしいって依頼を出していたぞ」

「レディア……っ!」

 今すぐにでも泣き出しそうな彼を見てポチに早く転移するようにお願いする。
 嬉しい再開なのだろうが、そういうのは互いが目を覚めてからにしなさい。
 
「やるぞ」

「うん、お願い」

 巨大な魔方陣が俺たちを包み込み一瞬にして入り口に移動した。
 流石はポチだ。さらっととんでもないことをしてみせる。
 
「うわ、例の人たちだ」

「本当だ。帰ってきた」

 入り口には見分けがつかないほど似ている双子がロープを手にして此方を見て驚いていた。
 レディアの連れだろうか、何でもよいが、此処から先はこの子たちに任せてしまおう。
 俺たちは依頼が完了したことを伝えるだけだ。面倒なことはやらないぞ。

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コメント

  • ドラコン

    とほほ...終わっちゃうのか

    0
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