勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

エクスカリバー

「どうしようかな」

 この気持ちの悪い手足の集合体と戦うのは難しくはないのだが、
 管で繋がれている人間たちをどうしようかと迷う。
 あまり元気はないようだが、生きている様で呼吸をしている様子がうかがえる。
 もしこのまま戦ってしまえば間違いなくこの人間たちを巻き込んでしまい、
 確実に死なしてしまうだろう。

『なに、心配することはないさ』

「ん」

 ポチの心を読み取ってみると、確かに心配はない様だ。
 あの化け物と人間が繋がっている管。てっきり生命維持装置的な何かだと勘違いしていたのだが、
 ポチの観察によってあれは単なる人間からあの手足へ魔力送るための装置だという事が分かった。
 つまりだ、あれを断ち切ってしまっても問題はないのだ。

『どうした!怖気づいたか?』

「そんな見た目だから出来れば近寄りたくないなぁ、まぁ、それでもやるんだけどさ」

 ポチさんやい、管の切断だけ任せても良いか?

『ああ、任せろ』

 この勝負は出来れば早めに決着をつけたいと思っている。
 こんな奴の相手をしていては精神がやられてしまう。
 ポチがすべての管を切断した時が戦いの合図としよう。

「骸骨さん、ポチが管を切断したらあいつを取り押さえてくれ」

 近くにいるであろう骸骨さんだけに聞こえるような小声でそう命令し、
 俺は戦う準備をする。向こうの世界では使うことがなかった――使えなかったあの武器をつくりだす。
 あの時とは比べ物にならないほど強くなったんだ。今なら使えるはずだ。
 イメージするなら男の子ならだいたい大好きなエクスカリバーだ。

 勿論鞘付きだ。前回は重さのあまり失敗してしまったが、今の俺なら大丈夫だ。
 武器をイメージし、極限まで重さを削り代わりに流し込む魔力を倍にする。

『そっちからこないのならば、こちらから行くぞ――!』
 
「……っ」

 なかなか大きな武器をつくっている為、動くことが出来ない。
 巨大な手足の塊が動き出しかなりの速度で近づいてい来る。

『我は行くぞ』

 すると、ポチがそういって飛び出し、化け物の上下左右から伸びているすべての管を
 川に流れる水の様にスムーズに切断した。一切無駄な動きがなく美しい。
 見習いたいところだ。
 宙を舞っていたいくつかの人間の体は地面に落ちて行ったが、そこまでの高さではない為、
 ちょっとした怪我程度で済んでいるだろう。

『なに!?貴様ァ――!』

 別に俺がやった訳ではないのだが、化け物は怒鳴り散らし更に速度を上げてきた。
 だが、何も焦る必要はないのだ。俺には強力な仲間たちがいるのだから。

『ぬぅ!?』

 化け物を覆い隠す勢いで数百の骸骨が姿を現し動きを止めて地面に倒れさせた。
 そして、それと同時にエクスカリバーの具現化が終了した。

「っ」

 極限まで軽くしたというのにも関わらず、持っているのがかなりきつい。
 こんなことなら鞘なんて作らなければよかった。
 ゆっくりとだが、鞘を外し、美しい刀身が露になる。

「おぉ……これが、憧れの――エクスカリバー!」

『――!!』

 余りにも美しいため、俺は興奮してしまい魔力を大量に流し込み、
 速攻で剣を振り下ろしてしまった。
 膨大な魔力の塊が一直線に飛び、直線状のすべてを破壊していく。
 化け物は勿論、骸骨さん事――そして、地面――壁までもだ。

 此処で思い出してみよう。たしかあの手紙には壁を壊そうとすると、
 それはすべて自分に返ってくると書かれていた。
 そして、いま、俺は壁を破壊してしまった――もう、わかるな?

――パグチャッ!

 非常に汚い音をたてて俺の体と武器は爆発してしまった様だ。
 だが、すぐに復活する為、なんの問題は無いのだが、裸になってしまった。
 身体だけが爆発したため、執事服やペンダントは無事だ。
 首輪は謎の力で復活している。

 急いで身に着けて周りを見渡す。

「おうおう、随分と汚くなったな」

 大量の手足と血が散らばっている。骨も散らばっているのだが、それらは再生を始めており
 ポンポンと骸骨が復活していた。

「ちょっと~ひどいですよ!」

「うわ、出た」

 一体の骸骨が文句を言っていたと思ったら、何時もの調子の良い骸骨さんだ。
 見た目が全員同じため声をきかないと判断できない。

「次からは一言くださいねぇ~じゃないと本気で怒っちゃいますからね~」

「はい、わかりました」

 骸骨たちは不可視状態になっていった。
 骸骨さんたちが本気で怒る――想像しただけで数百回ぐらい死んでしまいそうだ。

『ソラよ、見つけたぞ』

 どうやらポチが手紙を書いた主を見つけたらしい。
 先ほどから転がっている人間の髪を乱暴に持って何をしているのかと思ったら
 あの手紙の主を探していたのか。


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