勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

なんだかんだでポチさんがやってしまうのさ

 扉を開けてまず目に飛び込んできたのは部屋の中央にある異質な物体である。
 その物体は人間の手足で構成されており、まるで心臓の様に鼓動を打っている。
 その異様な物体からは管の様なモノが伸び、その先には四肢を切断され首輪を付けられて
 地面に転がされている人間たちに繋がっている。

 そしてそれを観察するかのように部屋をの左右に二人の――人間が存在していた。
 本当は魔物なのかもしれないが、見た目は人間と大差ない。
 白衣を身に纏った科学者の様な中年の男二人だ。
 この場で平然としているのだから只の人間ではない事は明らかだ。
 それか頭のいかれれた糞野郎しかない。

 今回はポチも戦うと言うことなので魔法を発動し、ポチと魔力を繋げて
 意思疎通を可能にしておく。
 
『さて、どいつが手紙を書いた糞野郎だ?』

 ん~どれだろうね。まぁ、取り敢えずあの二人を片付けた後に
 一人一人確かめて行けば良いんじゃない?
 
『そうだな。じゃあ我は左を』

 じゃあ俺は右決定だな。
 
『勝てそうか?』

 わからないけど、勝たないと目的達成できないからな……
 またリミッター解除できるかどうかも不安だ。

 化け物の生みの親ならばあいつらよりも強いのだろう。
 リミッター解除をすれば恐らく倒せるだろうが、普通の状態では難しい。
 
『ソラの力は十分見せてもらった。もう一人で頑張る必要はないのだぞ?』

 我を頼れ!とは言ってこないのだが心の中では物凄く主張してきている。
 ポチがそういうなら一人で頑張らなくても良いのかな……さっきまで必死に頑張ってた俺、さようなら。
 まぁ、よく考えれば一人で強くなろうとしてたのが莫迦なんだけどね。
 
「ということで、骸骨さんアシストお願いね」

『おい!ソラよ!此処に最も頼りになる我がいるだろ!!』

 先ほどから心の中でうるさいほど主張してきた為、なんだか意地悪したくなったのだ。
 許せポチよ。後でなんか買ってあげる。
 そんなやり取りをしつつ俺とポチは左右に別れて進む。
 
『ふん』

 不機嫌になった様に感じるが、心の中ではルンルンしているのだ。かわいいやつめ。
 先ほどからずっと無言で此方を見つめている敵さんなのだが、
 近寄っても変わらないままだ。一体何を考えているのだろうか……

「どうも」

 とりあえず声を掛けてみることにした。

「何者だ貴様」

「あっ、喋れるんですね」

 てっきり何も返ってこないとばかり思っていたため、反応があり少し驚いた。
 見た目同様の声でなんだか安心した。
 
「どうやって此処まで来たんだ?貴様の中身は何だ?人間――違うな、魔物でもない。
 面白い存在だ。存在するだけで脅威となるか。ふふっ、本当に興味深い。
 今すぐにでも我々のペットにして調べつくしてみたい。さぁ、大人しく――」

 喋りだしたと思ったら一人で盛り上がってしまった。正直に言って気持ち悪い。
 そんなことを思いながら話を聞いていると、どうやらポチの方も同じようなことになっており、
 痺れを切らしたポチが、ついやってしまった様だ。ぐちゃりと。

「そうか、思い出した。貴様等が大魔王様が言っていた――そうか、そうか、
 良いモノを見れた。ふふふふふ、ふふふふふふふ――」

 不気味すぎる笑い声を出しながら身体が徐々に透明になっていき
 消えていくかと思ったのだが、此処で骸骨さんたちの登場だ。
 三人掛かりで身体を押さえつけ身動きを封じ地面に倒し捕らえた。

「ご苦労」

 何も指示していないのだが、本当に骸骨さんが働き者だ。
 もしかしたらポチよりも有能――次の瞬間、目の前で信じられない光景が起きた。
 三人の骸骨さんが木っ端みじんに砕け――取り押さえられていた中年の科学者も
 地面と上から襲ってくる圧につぶされ、真っ赤な絨毯と化した。

「それは無い」

 その絨毯の上に立っているのは、この悲惨な現状を作り出した張本人のポチさんだ。
 骸骨さんの方が有能との発言が気にくわなかったのだろう。
 これから話を聞き出そうとしていたのに……

「……はい、その通りです」

「さぁ、手紙を書いた愚か者を探すぞ」

「はい」

 結局二人ともポチによって瞬殺されてしまった。
 大魔王と発言していたため、本当に悪魔だったのだろう。
 一体何が目的でこんなことをしていたのか非常に気になる。
 
「ポチさんやい」

「知らん、ソラが悪いのだぞ」

 そういわれると何も言い返せなくなってしまう。
 骸骨さんたちにも非常に悪いことをしたと思ったのだが、
 砕け散った破片を見てみると、見る見るうちに再生していき、三人の骸骨さんが復活した。
 ペコリと頭を下げて姿を消していった。

「まぁ、いいや」

 何を企んでいようと、この世界にポチさんがいる限りどうにかなるだろう。
 そんなことを思いながら目的である手紙を書いた主を探そうとしたのだが――

「気を付けろ」

「え?」

 中央に置いてあった不気味な物体が膨らみ始めていたのだ。
 そして、次の瞬間――巨大な手足の塊は意思が宿ったかのように動き始めた。
 何本もの足で一歩進むたびに、繋がれている人間たちが宙を舞う。

『まさか、我々がやられるとはな。舐めていたぞ化け物ども』

 何人もの声が重なった様な音が聞こえる。
 どっちが化け物なのかは一目瞭然だ。

「ソラよ、こいつはソラがやると良い」

「あ、わかった」

 てっきりまた瞬殺するのかと思ったが、どうやら俺に譲ってくれるようだ。
 正直に言って相手にしたくないほど気味が悪いのだが、仕方がない。
 譲られた以上はやってるさ。

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